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魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~  作者: 天都ダム∈(・ω・)∋
第三話 魔法少女を諦めない

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☆『八回目』『二日目』『朝』☆ その4

 脊髄に液体窒素でも流し込まれたんじゃないかってぐらい、全身が凍りつくのを感じた。


ニアニャ(これ)の交わした覚えのない約束は、だいたい、私がニアニャ(これ)を動かしている時に行ったものだけど、私が交わした覚えのない約束というのは、やはりおかしいのだよね』


 ……辿りつかれた。

 誰にも信じてもらえないだろうと、口にしなかったそれを。

 よりによって、悪魔(くーちゃん)に。


『君の動きは常におかしかった。本来ならば選ぶはずの相手をペアに選ばない、クジを引くのもこなれた様子で、驚きというものがなかった、私は、ずっと君を見ていたんだ』


 ああ、そうか、そうだった。くーちゃんは、事あるごとに、私の行く先々に居た。


『そもそも、私の企みは、そう簡単に暴けるものではなかったはずだしね。だからそう考えると、非常に納得がいくんだ。とてもとてもわかりやすい。さて』


 悪魔(くーちゃん)の手が、ゆっくりと私に伸びた。


『確認したいのだが、君は何回目なのだろうね。この真実にたどり着くまで、どれほどの時間を遡ったのかな』

「……答えたら、見逃してくれたり?」


 軽口を叩く余裕が、まだ自分に残っていた事に、我ながら驚いた、けれど。


『いいや?』


 ぶちゅ、と嫌な音がして、左腕が潰された。


「――――がっ」


 斬られたり、殴られたりしたことはあったけど、潰されたことはなかったから――ありえないほどの痛みで思考がぐちゃぐちゃになる。


 神経全部をねじ切られて、直接叩きつけられる、痛み、痛み、痛み、痛み。


 そのままぶつりと引きちぎられて、くるくると飛んでいく左腕を、視線で追いかけることすらできない。

 失敗した、間違えた、こいつが出てきた瞬間、私は問答無用で頭を弾くべきだった――私は、()()()()()()())。


『この結末は、ひどくひどく、悲しいけれど、君という脅威はとても大きいから、見過ごしてあげられない。残念だけれど、ここで終わりにしよう』


 悪魔(くーちゃん)の腕が、今度は私の右腕に添えられた。


『私の約束が有効ということは、《秘輝石(スフィア)》だけは時間の蓄積を引き継いでいるのだろうから、これを破壊すればよいと、私は考えているんだよ』


 試してみたわけじゃないけれど、それは多分、正解に違いないと、自分でも思う。

 私に残された時間は、後一秒か、二秒か。

 命乞いをするべきか、憎まれ口でも叩いてみるか。

 そんな事を考えている、自分が何だかおかしくなった。

 右腕に加わる圧力が強くなるのを感じ、ピシ、と内側から響く音がして―――


「っ」


 突如、右腕が燃えるように熱くなった。


「がっ、あっ」


 私の意思とは無関係に、《魔力光(エーテルライト)》を立ち登らせ、密度をみるみる増してゆく。


『あぶない、あぶない、早めに潰さないと』


 悪魔(くーちゃん)はそれを、固有魔法(オリジン)発動の兆候だと判断したのか、改めて《秘輝石(スフィア)》に指をかけた、まさにその瞬間。




「ああああああああああああああああああああ!」





 ――――悪魔(くーちゃん)の全身に、巨大な質量の塊が無数に襲いかかった。

 それらは、屋敷の瓦礫であったり、樹木であったり、岩石であったり、水の塊までもが含まれていて。


『おや』

「調子こいてんじゃ、ねー…………ニアニャを返せ! お嬢を返せ! 全部全部、あたしに返せ!」


 クローネから立ち上る《魔力光(エーテルライト)》が、黒い糸となって、様々な物に伸びると、それらはまるで生きているように浮き上がって、質量兵器となって悪魔(くーちゃん)に向かって振るわれる。


『生きていたのだね、クローネ。それはとても喜ばしいけれど、君は一体、何を悲しんでいるんだい。自由になれたというのに』

「んなもん、どーだっていいんだよ!」


 ぶつけて、ぶつけて、ぶつけて、ぶつけて。


「あたしはお嬢と遊べてりゃそれで良かった! ニアニャと馬鹿やってりゃ楽しかった! クラスの連中からかって、ハルミせんせーからお仕置きされんのだって、きらいじゃなかった! あたしの自由は、とっくにあったのに!」


 それら全ての攻撃には、クローネの《魔力(エーテル)》が付与されていて、質量と重量を考えれば、ぬいぐるみなんかとは比較にならない殺傷力のはずなのに。


『ふむ。わからないなあ。僕ら悪魔は、ずっと君たち魔法少女に拘束され、孔の奥に閉じ込めらられて、不自由を強いられていたからね』


 悪魔(くーちゃん)はのけぞり、よろめくけれど、ダメージは……見て取れない。


『自由であること以外を、私は望まないよ』

「――――だったら、死ぬほど不自由にしてやるよ」


 ぐらり、と地面が傾いた。

 比喩でもなんでもない、本当に身体が斜めにずれて行く。

 痛む身体を更に追い詰める、凄まじい振動と横揺れ、縦揺れ。


 ――魔界を形成する島が、真っ二つに()()()()()()のだと、引き裂かれる地面を見て、やっと理解できた。


 下半身が地割れに落ちて、長い腕で大地にしがみつき、全身を呑まれないようにしながら、それでものんびりとした語調で、悪魔(くーちゃん)は言葉を紡ぎ続ける。


『凄まじい力だね。《あらゆるものを(クローネ・)操る魔法(マジック)》だったか。その力を危惧され、虐げられていた君は、自らの力を偽るようになったのだったね。とても恐ろしい力だ。ニアニャ(これ)では、逆立ちしても君にはかなわないだろうね』


 それが、クローネの【()】?

 だとしたら、それは、そんな簡単に掘り返して、語っていいようなものじゃ――。


「死ね」


 割る事ができるということは、閉じる事もできるということだ。

 悪魔(くーちゃん)を咥えこんだ地割れが、今度はメリメリと音を立てて元の場所に戻ろうとしている。クローネの《魔力光(エーテルライト)》が島そのものに干渉し――――。


『時間切れだ、残念ながら』


 ブシュッ、と、目から、鼻から、口から、血を吹き出して。

 ふらりと、クローネの身体が崩れ落ちた。

 力を喪った傷だらけの右手の甲に埋め込まれた黒い《秘輝石(スフィア)》に、ビキビキと亀裂が入っていく。


『流石にこの質量、島一つを動かそうとするのは、やりすぎたね。君は魔法少女であって悪魔ではないから、個人の力には限度があるからね』


 ボコボコと地面を割りながら、悪魔(くーちゃん)の全身が地上に戻ってきた。


『さて』


 悪魔(くーちゃん)が、私を見た。


 ――――ああ、くそ、クローネが作ってくれた時間で、さっきからずっと、やろうとはしてるんだ。

両手が全く動かない。《魔弾》どころじゃない、痛みで《魔力光(エーテルライト)》を解き放つことすら難しい。

死にたい、と死にたくない、が同時にある、この矛盾。


 私の葛藤をあざ笑うように、悪魔(くーちゃん)の手が再び、私の右手に向かって伸びる。





「――――リーンちゃん!」





 私が。

 私が絶望した時、いつだってそこにはメアが居た。

 駆けつけて、手を握って、大丈夫だよって言ってくれた。

 ――――今だって。


「こないで、メア――――」


 フラフラで、ボロボロで、傷だらけの身体で、私の制止を聞かずに駆けてくるメアの手には、《魔力(エーテル)》で形成した魔弾塊、《流星を(モーニング)みる人(スター)》が握られていた。


『おやおや』


 悪魔(くーちゃん)にとって、それは蟻を踏み潰すよりも簡単な作業だった。

 止めてくれ、頼むから。私を殺すなら、それでもいいから。

 だから、メアだけは、お願いだから。


「―――――ごめんなさいっ!」


 大玉が纏うココアブラウンの《魔力光(エーテルライト)》が尾を引いて、悪魔(くーちゃん)に向かって放たれて――。



『――――おや?』



 同時に、悪魔(くーちゃん)の指が、メアの身体を弾き飛ばした。衝撃で、四肢がバラバラに飛び散って、海にばらまかれてボチャボチャと音を立てて落ちていく。


 だけど、私はその光景を、最後まで見ていられなかった。


 メアの《流星をみる人(モーニングスター)》は、悪魔(くーちゃん)の身体を横切って――()()()()()()()()()()


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