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魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~  作者: 天都ダム∈(・ω・)∋
第二話 魔法少女はためらわない

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☆『八回目』『一日目』『昼』☆

「ゼヒュッ、ゼヒュッ、ヒュゴッ、ホッ、ハァーッ、ヒュオッ」


 これ、何の音だと思う?

 正解はね、私の呼吸音。


「ここが最下層で間違いないみたいね」


 本当に、本当に気まぐれだったのだ。

 色々検証したいことはあるが、それは夜からの話だった……ちょっと思うところがあって、まだニアニャとはペアを組みたく無かった私は、一度も組んだ事のない委員長と、『まあ一回くらいはやっておくか』くらいのノリで指名してしまったのだ。


 いや、聞いてたよ? 知ってはいたよ? ある程度予想はしてたよ?

 でもさ、まさかさ、本当にさ、比喩無しで一秒たりも止まらないとは思わないじゃん。


 委員長、マグナリア・ガンメイジが完全に停止したのは、第五階層の最深部、八つのくぼみが備わった扉の前のみ。それ以外は、もう、マジで、止まらなかった。


 腕力と持久力を強化した委員長は、遅れる私の首根っこを掴んでひっぱり、倒せる魔物は倒し、スルーできるやつはスルーして、階層の(フロアボス)は出てきた瞬間何もさせず、ボコボコのバキバキに殴り蹴り倒し、最速の総当たりでここまで辿り着いたわけだ。そりゃニアニャも力尽きるよ。むしろメアは良く大丈夫だったな。


「大丈夫? 水飲む?」

「その…………気遣いは…………もうちょっと、早く…………して、ほしかっ……」


 ポーチから小型の水筒を取り出し、差し出してくれたので、もう、ありがたくもらうことにした。飲み干してやる。

 進行の都合上、二体の階層の(フロアボス)を倒したので、手に入れた結晶は二つ。

 私が水を飲んでる間に扉にはめ込んで、確認を終えた委員長は、よし、と頷いて。


「じゃ、戻りましょうか」

「正気か!?」

「他のペアが手に入れた結晶がないと先に進めないわ。続きは明日ね」


 そういや、委員長チーム、いつも帰りは私より早かった気がする……え、復路もこのペースなの……?


「ちょっと、ちょっとだけ休ませて……!」

「もう、仕方ないわね。じゃあ十分だけね」


 短いなオイ……いや、でも委員長が十分と決めたなら十分なんだろう。

 良くも悪くも融通が利かない石頭……。


「…………委員長」

「何?」

「委員長の課題って、私達にクジ引きを引かせるだけ?」

「ノーコメント。説明していいとは書かれてなかったから」


 腕を組み、メガネをくいっと上げて、ふふん、と得意気に笑う。

 そりゃあもうニヤニヤと、何かを企んでいる顔だった。


「まだもうちょっとなにかあるのは分かった」

「何で」

「何でって」

「内緒にしてもらわないと困るわ」

「言わないけどさ」


 委員長は私が知る限り、良くも悪くも、裏表がまったくない。

 即決即断が常だから、何かを秘めておく事とかはすごく苦手、つまり、嘘が下手だ。

 ……皆が嘘をついているのなら。

 委員長は、どんな嘘をついているんだろう。


「そういや、あのクジってハルミ先生から預かってたの?」


 世間話の延長のつもりで、特に大した意図はない質問だった。

 委員長の様子を伺う限り、あのクジが《魔力(エーテル)》に反応するものだとは気づいてなかったっぽいけれど、ヘリに積んであったのかな?


「いえ」


 ところが委員長は、全く取り繕わず、堂々と。



()()()()()()()()()()()()()



「…………………………はい?」

「最初に屋敷の中を捜索したでしょう? 食堂のテーブルの上に置いてあったらしいわ」

「…………何で、それを委員長に?」


 じゃあ、課題用なのは間違いないのか。

 いや、でも、もしも、もしもだけれど。

 中身をニアニャが入れ替える余地があったとして、それで……何が変わる?


「ところでリーン」


 私が衝撃を受けている間に、すっと話題を差し込んでくる委員長。


「…………何でしょう委員長」

「UNOとジェンガならどっちが好きかしら」

「なんで今食後の余興の話が出てきたの?」

「クローネはやっぱり苦手よね、ジェンガ」

「まあ精密動作は不得意な気がするけど……」

「ある程度平等で、ルールがわかりやすく、全員が参加できる……やはりUNOが適切ね」

「もしかしてだけどめちゃくちゃ楽しみにしてる?」

「何言ってるの。これは進級試験なのよ? 気をしっかり引き締めなさい」

「うわ納得行かねえ!」


 真っ先に取り出してきたくせに! 知ってるんだぞ!

 ……今回はミツネさんとファラフがペアを組んでて、クァトランを止める人がいない。

 多分崩落が起きて、空気が最悪になるだろうから、ゲームをやる流れにもならないと思うけど……。


「……ねえ、委員長」

「何?」

「私の課題、すっげー大変なんだけどさ」

「そう。助けは必要?」

「正直、一人じゃいっぱいいっぱいかな」


 別に泣き言を言いたいわけじゃない。何かの答えを求めているわけでもない。


「でも、助けを求め辛いっていうか、自分が頑張らないと、駄目な感じ」


 ただ、なんとなく。

 二人以外誰も居ない、この迷宮(ダンジョン)の最深部で、どうでもいい話がしたくなっただけだ。


「そう」


 委員長の反応は、淡白だった。

 いつもどおり淡々と、表情は変わらず、慌てず、動じず、揺るがない。


「じゃあ、頑張りなさい」

「……うん、頑張るよ」


 問題点は見えたけど、課題が山積みで、解決策は全く見いだせなくても。

 それでも、私が、やらないといけない。

 呼吸は、整った。大丈夫、立って歩ける。


「委員長、水筒ありが――――」


 空になってしまった水筒を渡そうとした、ちょうどそのタイミングで。

 頭をがっと掴まれて、ぐいっと正面を向けられた。

 委員長のメガネと、青い瞳が眼前にずいっと迫る。


「リーン」


 そんな状態でも、全く表情は揺るがず。


「あなたは私の知る限り、一番弱い魔法少女だわ」

「ここで急にディスられることある?」


 なんかいい感じのことを言ってくれるんじゃないのかよ。


「褒めてるの。私は皆を見てるから、わかるわ」


 世辞も妥協も配慮も遠慮も――一切の嘘のない瞳が、私を正面から貫いている。


「一番弱いはずのあなたのことを、誰も侮ってない」

「…………」

「どうせあなたは諦めないし、投げ出したりしないでしょ。だから別に励まさないわ」


 ぱ、と頭を離されて、委員長は水筒をポーチにしまった。

 強い力で固定されたせいか、若干首が痛むけど……。


「……今のは、励ましじゃないんだ」

「単なる事実確認よ。やるならもっとちゃんと励ますわ」

「……どうやって?」

「やる気が出るまで口におやつの酢昆布をねじ込んであげる」

「謹んで遠慮します」


 参ったな。

 思ったより、しっかりと励まされてしまった。

 マグナリア・ガンメイジ。

 最強の魔法少女を、最悪の二人を、貴族の子女を差し置いて。

 クラスの代表として在るのは――皆が委員長であることを認めてるのは、彼女のこういう所なんだろう。


「委員長は、頼りになるね」

「当たり前じゃない」


 ふふん、と気持ち得意げに鼻を鳴らしてから、シームレスな動きで、すっ……と。


「あれ?」


 服の襟を掴まれた。


「十分経ったわ」

「………………あ、そう? ほんとに? 私もうちょっと褒められてもいいよ?」

「無駄話をしている時間はないわ」

「今、私の疲れた心にじーんときたやり取り、無駄話って言った?」

「じゃ、行きましょうか」


 身体が浮遊感に包まれた。


「待っ」


 勿論、待ってくれはしない。魔法少女は止まらない。委員長も止まらないのだ。

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