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魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~  作者: 天都ダム∈(・ω・)∋
第二話 魔法少女はためらわない

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☆『四回目』『一日目』『昼』☆ その3

 魔法少女が使う《魔弾》は、よく野球のピッチングに例えられる。

 剛速球を投げられる娘もいれば、変化球が得意な娘もいる。もちろん両方得意なクァトランみたいなのもいる。


 通常は直線軌道で飛ぶ《魔弾》に『追尾』『曲射』『拡散』『収束』『変質』などといった作用を与えることで、いわゆる『変化球』が投げられるようになる、という理屈だ。


 しかしこれは口で言うほど簡単なことじゃない、『カーブの投げ方』は知っていても、百回投げて百回同じ軌道を描けるか、となるとまた別問題で、安定して使うには相応の練習が必要なのだ。


 与えられる作用の種類にだって得意不得意があるので、投手が球を投げ込んで身体に変化球を覚えさせるように、魔法少女は自分の適性を探りながら《魔弾》を沢山撃ち込んで、コントロール方法を身につける。


 そんなわけだから、必殺技(フェイバリット)と呼べるような《魔弾》を身につけた魔法少女は、現役であってもそう多くはない……のだけれど。


「《堕獄天(ゲヘナ)》!」


 ファラフの指先にミントグリーンの《魔力光(エーテルライト)》が集まり、大きな《魔弾》が生成された。


 ぐるぐると回転するそれは、渦を水が吸い込まれていくように、徐々に圧縮・収束を始める。

 バレーボールサイズからビー玉ぐらいまで凝縮したそれが放たれる先は、私とメアがそれなりに苦戦した階層の主(フロアボス)、マザーウッドだった。


『ジュガ………………ガガガガガガガガガ!?』


 圧縮された《魔弾》命中した瞬間、元の数十倍のサイズに一気に膨れ上がった《魔弾》がマザーウッドを飲み込み、しかもその状態でも渦巻く回転は停止していない。


 結果として《魔力(エーテル)》の奔流に身体を削られ、ずたずたになったマザーウッドは、体積の実に半分を失い、そのまま崩れ去った。


 残った残骸は塵になっていき、階層の(フロアボス)を倒した証拠である琥珀色の結晶が、カランと落ちた。


 いや、えっぐ。


 クァトランが使った時は、最初の大きな《魔弾》を生成する過程で直接魔物をぶち殺してたけど、見る限り回転し続ける《魔弾》を圧縮→発射→命中→拡大することで衝撃と削りの二重ダメージを与えるのがこの技の正しい挙動だったんだ……。


 《魔力光(エーテルライト)》を圧縮するというのは、反発するゴムを引っ張り続けるようなもので、制御を失えば暴発するし、狙った所に飛ばすのも難しい……余談だけど、《魔力光(エーテルライト)》の色は薄ければ薄いほど圧縮しやすく、濃ければ濃いほど反発が強くなるという性質がある。


「ふぇ……凄い魔法ですね、さすがクァトランさん」


 大物を一撃で仕留めた後とは思えない、のんびりとした様子で、ファラフは普段から持ち歩いている大きな本をバタンと閉じて、はふうと息を吐き出した。


「去年の『大魔爛祭(マギアラ・フェスタ)』で見た時に、()()しておいてよかったです」

 えへへ、と笑うファラフ・ライラの固有魔法(オリジン)、《魔法を再現する魔法(ファラフ・マジック)》は、一度見たり、あるいは体験した魔法であれば、本に記録して、いつでも『再現』することが出来る。


 だから、ファラフにとって魔法の運用とはどれだけ複雑かつ高難易度な挙動をするものであっても、一度記録さえしてしまえば、後はそれを『再現』するだけで良い物なのだ。


 流石に固有魔法(オリジン)は無理だけれど、汎用性、応用性、そしてなにより手札の多さと拡張性の高さが、ファラフの最大の特徴といえる。


「お見事でした……」


 そんな魔弾使いの後ろに隠れて、戦いもしなけりゃ、役にも立たない私。

 ファラフに『ちょっとクァトランの魔法を再現してみてくれない?』と無茶振りしたら困惑しつつもやってみてくれたわけだけど。


「やっぱり、これじゃクァトランは殺せないか……」

「……? 今なにか言いました?」

「いやいや何も何も」


 クァトランをどうやって殺すのか、という問題を棚上げにしてきたので、とりあえず考えられる可能性として『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』と思ったのだけど、ファラフの魔法は『性質』を再現するものだから、同じ挙動はするけれど、同じ威力にはならない、ということが分かった。


 勿論、今のファラフだってすごかったけれど、クァトランレベルの規格外な破壊力は、どこまでいってもクァトラン自身の出力が必要なのだ。


「お疲れ様、ファラフ。どうする? ちょっと《魔力(エーテル)》供給しようか?」


 流石に何もしてなさすぎて忍びないので、サボってた分補充できた《魔力(エーテル)》を回そうかな、と気を利かせてみたり。


「あ、全然余裕あるので大丈夫です、ジーンもいるし」

『ホッホッホ』

「あ、そう……」


 ジーンが私の側によってきて、ぽんぽん、と肩を叩いてくれた。優しいね。ありがとう。


「……じゃ、降りようか」

「はい」


 マザーウッドを倒したことで出現した孔に飛び込んで、一回目以来久しぶりの木の洞ルートの第二階層に辿り着いた。

 ルートが分かっていたことと、マザーウッドを瞬殺してもらったことで、進行ペースは一回目より大分早い。


「とりあえずグルっと回ってみようか…………ファラフ?」


 ふと振り返ると、ファラフは足を止めて、ジーンをぎゅっと抱きしめている所だった。

 目を伏せていて、なんだか落ち込んでいるようにも見える。


「……どうしたの? ごめん、私役立たず過ぎた?」

「……ふぇっ!? あ、ち、違います違います、そんな事思ってないです、ホントです」

「いや、本音で言ってくれていいんだよ、仕事しろよこの野郎って……」

「思ってないですってば! その……弱い人を守るのも、魔法少女の仕事ですし……」


 ナチュラルに非戦闘員の一般人カテゴリに入れられてしまったのだけれど、ううん、否定できない。

 せめてもうちょっと……半日分でも回復できれば探索の役にも立てるのに。


 普段これだけ《魔力(エーテル)》繰りに悩んでるのに、私はどこから時間を逆行するだけの《魔力(エーテル)》を持ってきてるんだろう……。


 むき出しの岩肌と木材で形成された坑道のような階層(フロア)を、私とファラフは割と手早く探索できていたと思う。


 炭のような素材で出来た炭巨人(コークスゴーレム)とか、犬みたいな生物の骨で出来た魔骨犬(ドッグスケルトン)といった魔物が出てきたが、相手によって適切に《魔弾》を使い分けるファラフの敵ではなく、障害と呼べる障害は特に無かった。


 ……自分を棚に上げといてなんだけど、やっぱりこの《迷宮》、そんなに難易度は高くないんだよな。魔物のレベルはどれだけ高く見積もっても下の中くらいで、我らが優秀なクラスメート達はものともしない。ものともしちゃうのは私だけ。


 だからこそ余計、重要なのは個人に与えられた課題になってくるわけだけれど……。


「ねえファラフ」

「………………」

「ファラフ?」

「ふぁ、はいっ、なんでしょう」


 前線で戦いはするけれど、それ以外の時はいまいち心ここにあらずというか、第二階層に降りてから、なんだかボーっとしていることが増えたような気がする。


「ファラフの課題って、人に言って良いタイプのやつ?」


 一回目の時、ミツネさんは《使い魔(マスコット)》と絆を深める、とかそんな事を言っていた気がするが、一応知らないフリだ。


「ご、ごめんなさい、ルームメイト以外には話しちゃいけなくて……」

「や、こっちこそごめん、大丈夫」


 ま、ファラフに関してはジーンが生き残ってれば問題ないだろうし――――。


「――――危ないっ!」


 思考がそこまで及んだ時、身体が不意に突き飛ばされた。

 華奢で細い身体にのしかかられて、ファラフが体ごと私に体当たりしてきたことを知る。凄い、メアの半分ぐらいの重さしか感じない……!


 とか思ったのもつかの間のことだった。




 ズズズズズズズズズズズズズズズズズ




 視界が上下左右に揺れる、ブレる。

 この体感は、一回目に感じた迷宮崩落の時の比じゃない…………迷宮崩落!?

 そうだった、道理でこの場所に見覚えがあると思った。


 もうそんな時間になっていたのだ――メギメギメギメギ、と空間そのものが悲鳴を上げるような音がした後。




 ズジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア




 という、ジャリ袋を耳元で思い切りシェイクしたような騒音と、そもそもジャリ袋になってしまったかのような振動が全身に襲いかかった。


 続いて重量物が、ガゴガゴガゴ、と連続して落ちる鈍い音――間違いない。

 天井が、崩落した。


「っ、ジーンは…………!」

「ああああああああああああああああああああ!」


 私が起き上がるのと、ファラフの悲鳴が重なった。


「っ…………!」


 間に合わなかった、止められなかった? しまった、と悔いたその瞬間。


『ホーホッホッホッホッホ!』


 慌てふためいたジーンが、ひょいと私の横をすり抜けて、悲鳴を上げるファラフの前に躍り出た。


「――――――」


 なんだよ、無事じゃん、生きてるじゃん! 元気じゃん!


「ファラフ………………!」


 危なかったね、と声をかけようとした私の視界に入ってきたのは。


「あ、あああ……ああああああ……………!」


 ジーンを抱きしめて、膝をついて、ぼろぼろと泣き出す、ファラフの姿だった。


 …………? あれ? ()()()()()()()

「…………ファラ――――」


 私が名前を呼びかけた時。


「――――クァトラン! 下に誰か居るぞ!」


 という、ラミアの声が、開いた孔の上から聞こえてきた。


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