☆『四回目』『一日目』『昼』☆ その1
「……ゃん、リーンちゃん」
メアの声が遠くから聞こえて、私はパチリと目を開けた。
聞き慣れた振動とプロペラの音、真横を見ると、目を丸くして私を見つめるメアがいた。
「……………………………………」
「おはよ、リーンちゃ…………どうしたのその顔」
目を丸くするメアだったが、うん、私、今どんな顔してるんだろう。鏡がほしい。
確かに、誰かに回数制限が有ると言われたわけではないのだけれど。
「……………………メア」
「何?」
「大好きだよ」
「なんで今急に愛の言葉を囁いたの!?」
嬉しいけどぉ、ともじもじし始めるメアは一旦置いといてだ。
とりあえず分かっていることを整理しよう、着陸には、まだ時間がある。
一つ。今更だけど、私はどうやら肉体の死亡をトリガーとして、大規模な時間逆行が出来るらしい。
ただその為の《魔力》をどこから調達してるのかは不明。
私が意識的に使う《時間を逆行する魔法》は、ほんの数秒時間を逆行するのに、しっかり食べてたっぷり眠って蓄えられる一日分の《魔力》を要する事を考えると、日数をまたぐ逆行なんて、どれぐらいの《魔力》があればいいのか想像もつかない。
それこそ、私の《秘輝石》の限界許容量まで《魔力》を蓄えれば……とは思うものの、『ダムにペットポトルを注ぐようなもの』と言われるぐらい、容量と回復速度が釣り合ってないわけで。
二つ。死ぬタイミングは関係なく、戻って来る場所は一日目の昼、《魔界》到着直前のヘリの中。ここから更に逆行して試験前まで戻ることは、どうやら不可能らしい。
回数制限があるかは不明、確かめようがないので、これはもう『出来る』と思い込むしかない。出来なかったら終わるだけ。
三つ。クァトランの死とファラフの失踪は、クァトランがジーンを潰さなくても発生する。クァトランが死亡する原因は不明。ファラフがいなくなる理由も不明。
というか、一回目のファラフは噴水のところに浮かんでいた、あれは流石に死んでいたはずで、つまりクァトランとファラフは別の要因で死亡していたことになる。
こうしてみると、前回じゃないか……前々回? ああもう、二回目でいいや。
二回目の私は、わからないことをわからないままに、『多分原因であろうもの』を取り除こうとしていた――その方針自体が、間違いだった。
私が触れていたのは、きっと根幹じゃなくて、表層だった。
課題の紙を、もう一度広げる。
あなたの魔法を活かしましょう。
あなたの正義を見せましょう。
あなたの覚悟を試しましょう。
皆が嘘をついています。
ハッピーエンドを目指しましょう。
「ハッピーエンドを目指しましょう、ね……」
……ハルミ先生が、何をどこまで知っているのかわからないけど。
「上等だよ」
使える手札は、明らかになった。
魔法も正義も覚悟も駆使して、やってやろうじゃないか。
☆
「ミツネさぁん……」
「ど、どうしたんメア、なんや、へなへなしちゃって」
「リーンちゃんのスイッチが入っちゃったかも……」
「はぁ……スイッチ?」
「なんていうか……リーンちゃんって、普段はなんかこう、脱力してるっていうか、抜けてるところがあって、そこが可愛いんだけど……」
「今惚気ける必要あった?」
「でも、自分がやるべき事が決まると、もう駄目なの……躊躇も容赦もなくなるし、手段も選ばなくなっちゃうの……」
「はぁ……ええんちゃうの? 試験前にそないなってくれるなら。やる気十分ってことやろ?」
「それぐらいで済んでくれたら、いいんだけど……」




