☆『二回目』『一日目』『昼』☆ その1
「……ゃん、リーンちゃん」
メアの声が、遠くから聞こえる。
お迎え? まさか、この世界にそんな善意なんてあるもんか。
てことは、死の間際の、幻聴?
冗談やめてよ、合わせる顔なんてないし、頼むからこのまま終わらせて……
「リーンちゃんってば!」
「…………ぁ?」
「もうすぐ着くよ、起きて」
肩を揺すられる感覚、かすかに身体に伝わってくる振動。
ぼうっとしたまぶたを開くと、私の顔を覗き込むメアが居た。
「………………」
「おはよ、少しは休めた?」
大きな丸眼鏡の向こう。
目尻の下がった、見慣れたタレ目が。
私を、覗き込んでいた。
「………………メア?」
「……? ボクだよ? えっと……リーンちゃ」
「メアっ!?」
「ひゃあ!? え、どうしたの!?」
力いっぱい抱きしめて、それが実在する身体であることを、何度も確認する。
少し体温が高めで、柔らかくて、クッションが大きい…………うん、間違いない。
「本物のメアだ……!」
「人の胸を揉みながら何を確認してるの!?」
ばちこん、と思い切り叩かれた……痛い、痛みがある……夢じゃ、ない……?
「やったあ、痛いよ!?」
「どうしようミツネさんリーンちゃん壊れちゃった!」
メアがミツネさんに助けを求め――あ。
「ミ、ミツネ、さん……」
「んん? どないしてん、ぐーすか寝こけてた思うたら……悪い夢でも見たんかいな」
……夢?
あれが?
「…………」
ここがどこだか、今更ながら理解出来た。
《魔界》へ向かう最中の、ヘリの中だ。
ミツネさんの奥にいるファラフが、私を心配そうに見て、その隣で、ジーンがやれやれのポーズをした。
クローネとニアニャが笑いを堪えるように口をつぐみ、間に挟まれたクァトランが、イライラしながら靴を鳴らす。
マグナリアは一人読書に集中していた。ルーズ姫は、そんな私に気づいたのか、苦笑しつつ手を振ってくれて、ラミアは窓の外を、何処か遠い目で見つめている。
……あれが全部夢だった………………?
いや……私にとってこの景色は二回目だけど、あれを『前回』と呼んでいいなら、明確に違うものがある。
多少なりとも眠って、少しは回復できたはずの《魔力》が、一欠片たりとも残ってない。
「…………嘘でしょ」
語辺リーンの固有魔法、《時間を逆行する魔法》。
死の間際に発動し――――一日の時間を遡って、戻ってきた。
「…………ハルミ先生、まさかさあ」
ハッピーエンドを目指しましょうって、そういうことかよ。




