☆『一回目』『一日目』『昼』☆ その6
今更だけれど、魔法少女は皆身体に《秘輝石》と呼ばれる石を身体のどこかに埋め込んでいる。私は右手の甲、メアは胸元。
《秘輝石》は魔法少女の根幹だ、《魔力》を生み出し、溜め込み、場合によっては身体を巡らせ、あるいは外に放出したりする。
その色彩も、また魔法少女によって異なる。私の透明な《秘輝石》が生み出す《魔力》はその通り無色透明で、メアのそれは濃い茶色――そして小さな石の色の違いが、魔法少女の最大の差異であり、個性だ。
大雑把な傾向だけで言うと、薄い色より濃い色の方が強い、とされている。
黒に白を混ぜたら黒に飲み込まれてしまうように、濃い《魔力》は薄い《魔力》を中和して侵蝕してしまう、だから単純に同じ量・同じ密度の《魔力》をぶつけ合うと、色の濃い方が押し勝つ。
この関係は、そのまま色相環で表すことが出来る。例えば赤い《魔力》は反対色の緑の《魔力》に対して反発を起こし、逆に近しい橙色の《魔力》には同化し易いため効果が落ちる……という感じ、個人の属性と言い換えてもいい。
で、改めて我らがメアの飛ばす《魔力光》、彩度が低く、色合いが非常に濃い、ココアブラウンの《魔弾》を見てみよう。
「えいっ!」
「やあっ!」
「とうっ!」
可愛い掛け声と共に手のひらから放たれるのは、直径30cmを超える《魔力》の大玉だ。それもただ膨らませただけではなくて、高密度に圧縮されている。
これをぶつけられた魔物がどうなるかと言うと。
『ジュッ!』
『オギュっ!』
『バギエッ!』
ご覧の通り、爆発四散である。急所を外してしまった最初のウッドマンを除くと、現状、邂逅した魔物は全員一撃で吹き飛ばされている、凄まじい破壊力。
一応言っておくとこれは魔法少女の標準火力ではない、メアが火力砲台として優れているってだけだ。
例えば、私がわずかに回復したなけなしの《魔力》を圧縮して《魔弾》を作り、魔物に飛ばしたとしよう。
「えい」
バシュッ、ボムッ、よし、顔面にヒット!
『ジュッ……ジュ?』
「うーんノーダメ……」
仮に一般人にぶっ放したら数m吹き飛ばして悶絶させるぐらいの威力はあるけれど、魔物相手じゃこんなもんだ。角が軽く欠けたくらいで、ウッドマンは『今なにかしましたぁ?』みたいな感じでボリボリと被弾部位を掻いている。
そう、私の《魔力》は無色透明、言い換えれば世界で一番薄い色だ。
濃淡で優劣が決まる《魔力》の性質において、これは致命的な弱点と言える。
簡単にいうと私はどんな色の《魔力》で攻撃されても大ダメージを受けるし、どんな色の《魔力》で防御されても簡単に弾かれてしまう。
高等部以降ではあの《迷宮》の主は《魔力》が黄色だから、青系の魔法少女でチームを組んで倒しにいこう、みたいな組分けを、クラスや学園の垣根を超えて行っていくわけだが、私はもう最初からその輪の外に居るってワケ。
そしてこの程度の反撃しかできないなら殴り放題なんじゃね? と気づいた彼は、そのまま私に対して突撃を選択、横から飛んできたメアの《魔弾》にふっとばされて生涯を終えた……木の根の塊を生きてるって言っていいのかわかんないけど。
「リーンちゃん、怪我はない? あと、《魔弾》通じた?」
「正直、無駄弾だなって気はする」
この感じなら、やっぱり戦闘はメアに任せたほうが良さそうだ。
「メアこそ、さっきからバンバン撃ってるけど、補給は大丈夫?」
「ん、この辺は《魔力》は茶色だから、結構取り込めてるよ」
空間に満ちる自然の《魔力》の色は、環境に左右される。火山地帯なら赤い《魔力》、海沿いや湖なら青い《魔力》で溢れるように、洞窟や岩場では茶色や灰色、この迷宮なら更に木々の緑色辺りの《魔力》が多めだ。
でもって、色が近い《魔力》は、ろ過して《秘輝石》に取り込むことで、自身に還元することが出来る。
色の濃い《秘輝石》は前述の理由で《空間魔力》を回収する能力も高い、それに加えてそもそもの色が《秘輝石》に近いとくれば、魔弾一発分の消費はすぐ取り戻せてしまう。空気全部が栄養源みたいなものだ。
つまりメアはこの《迷宮》において、高火力、高回転のスーパーアタッカーなのだ。
というか、他の入り口……洞窟のほうは土に囲まれてるわけだから、濃い茶色の《魔力》で満ちているはずで……そうすると、ここはまだ本領発揮出来てないとすら言えるかも知れない。
「あ、メア、また来た」
「はい、どーんっ!」
……しばらくは楽が出来そうだ。




