☆『一回目』『一日目』『昼』☆ その3
二階にある三つの部屋の内、一番大きな部屋にクァトラン、その右隣をセット運用のクローネとニアニャ、左隣を別段相性が悪いわけじゃないラミアとマグナリア。
一階の一部屋をそれなりに仲の良いミツネさんとルーズ姫、で、最後の一部屋に、日常的につるんでる私、メア、ファラフ。
全員の要望を聞きつつ、仲の良さなどを加味すると、これが一番最適解だろう、ルーズ姫とラミアは『同じ階も嫌!』とか言いだしたし……。
「その、いいんですか……僕、一人でベッド使わせてもらって……」
『ホッホッホ……』
ファラフとジーンが申し訳無さそうに揃って頭を下げた。
「いいよいいよ、寮でも抱きまくらにされてるし……」
「と、時々だよ! いつもじゃないよ!?」
ベッド数が足りない問題は、もう私がメアと一緒に寝ることで解決することにした、シングルベッドに二人だから大分狭いけど、二泊ぐらいならなんとでもなる。ファラフにメアの睡眠チョークを食らわせるわけにはいかない。
部屋が決まったら荷物を置いて、ついに試験本番だ、ベッドに腰掛けてしおりを広げて、再度、概要を確認する。
「レベルⅡ……《迷宮》期の《魔界》攻略」
魔界はその侵蝕率に応じて、三段階に分類できる。
レベルⅠが侵蝕率20%未満の《刻印》期。
この時点では、境界を超えると悪寒が走りはするものの、見た目の上では大きな変化はない。
広さはまちまちで、狭ければそこらの学校の校庭くらい、広ければ、それこそ四国全土を覆うほど。
霊脈……空間に満ちる《空間魔力》が濃いラインに沿って境界線が引かれ、内部の何処かに『迷宮の種』と呼ばれるアイテムによって《刻印》が施される。
本来は、境界線が引かれた時点で対処するのが好ましいんだけど、小さければ小さいほど検出が難しく、現実的には次の段階に進んでからなんとかする、というのが現状だ。
レベルⅡが《迷宮》期、つまり私達がこれから挑む《魔界》。
境界の内部、《刻印》された隔離空間……地下空間や高層建築物など、「ある一定の大きさの空間の内部」が《迷宮》化する。
《迷宮》は魔物の生産施設であり、魔界侵蝕の拠点でもある。内部は異界化しているため見た目と中身の面積が一致せず、小さな一軒家型の《迷宮》の地下が二十階層まであった、なんて話もあるぐらいだ。
《迷宮》内で生まれた魔物は、やがて外に飛び出して、境界の内部を汚染することで、世界を侵蝕し、《魔界》を広げていく。
これが更に進行すると、レベルⅢ。《混沌》期となり、土壌、植物、建物、生物、空気、あらゆる存在が《魔王》のルールに基づいて再構築され、完全に魔王の手に落ちた『奪われた領土』となってしまう。
このレベルまで汚染されてしまったのが《日本八大魔界》で、最初にレベルⅢになった北海道の《アバシリ監獄》は、当時博物館だった旧網走監獄が巨大な《迷宮》となってしまった《魔界》だ。続々と這い出る魔物の群れに占領されて、網走市は人間が住めない土地になった。
「……メア」
「ん?」
「申し訳ないけどそんなに《魔力》回復してないから凄い頼りにしてるね……!」
元々最大値まで《魔力》を溜め込んだことはないけど、それにしたって枯渇感が凄い。
丸めて絞りだしたらなんとか一回分になる歯磨き粉のチューブぐらいの感じ。
「うん、任せて、ボクのカツサンドの為に使ってくれた《魔力》だもん……!」
「カツサンド…………?」
ああ、ファラフはあの時ラミアに助けられてたから見てなかったのか…………あれ、私の《魔力》が枯渇したのってファラフのせいなんじゃ……。




