《プロローグ》
時間。
広辞苑によると、〝空間と共に人間の認識の基礎を成すもの〟とある。
1日は24時間と決められているが、本当は25時間だという説もあったりする。
人が生きていく中で絶対に揺らぐことのない不変な事象。無限のようでいて有限なもの。
この世に生を受けた時より、死に至るまでがその限度。
甚大に見えて、意外と短いかもしれない。与えられるその持ち分は人それぞれによって異なる。
とかく、〝終わり〟は唐突にやってくるものだ。
それは神様のきまぐれによるものかもしれないし、そもそも最初から決まっていたことなのかもしれないし、こればかりは分かり様がない。
だから、悔いのないように1日1日を生きなければいけないと思う。
朝起きて「おはよう」と言い、夜眠る前に「おやすみ」と言う。
その何気ない日常こそが実は1番幸せなことかもしれない。
〝幸せ〟の定義も人それぞれ差異があるけれど。
往々にして人は忘れがちになる。自分にも〝終わり〟がやって来ることを。
何故なら、時間は目に見えない流れであるからだ。
何をしている訳でもないのに、時間は有無を言わさず刻々と過ぎてしまって、〝現在〟がすぐに〝過去〟となり、〝未来〟がやってくる。それはふと考えてみると、恐ろしいことだと思う。
だから、人は〝時計〟を生み出した。時の流れを目に見えるものにするために。
時計には様々な形がある。腕時計、置き時計、柱時計、懐中時計、掛け時計、親子時計、鳩時計、花時計……そして、砂時計。
どうか覚えておいて欲しい。
〝始まり〟があれば〝終わり〟があるということを。
時間はあるように見えて、本当にないものだから。
……。
各々に訪れる結末が、どうか幸せな〝終わり〟でありますように。