通販スキル
採取をしつつ目的のゴブリンを探すため、森の奥へと進んで行く。
猫獣人のレリムに薬草を見つけてもらい、俺が採取する。
レリムは素手でも強いが、念のために昨日ゴブリンから入手した棍棒を、アイテムボックスから取り出して渡す。
「ニャニャ! 棍棒は得意ニャ 武器さえあればドラゴンにも勝てるニャ!!!」
レリムには金槌スキルがあり、棍棒のような打撃系の武器を得意としている。
まさに鬼に金棒、猫に魚だ、、、ちょっと違うか。
結局だが、猫獣人にとって大事なのは魚だ。
他の獣人達は違うと思うが、猫獣人以外に野良獣人っているのだろうか、、、?
「いるニャ! 犬獣人、鳥獣人、それから狼獣人もいるニャよ!」
犬獣人と狼獣人はいそうだが、鳥獣人もいるのか!
狼獣人はちょっと怖い気もするが、鳥獣人は会ってみたい!
「狼獣人は珍しいニャ。 別名、、、銀狼獣人とも呼ばれているレアな種族だニャ!」
そんなに珍しい種族なら狼獣人とも会ってみたいものだ。
まだ見ぬ野良獣人に想いを馳せながら薬草採取に勤しむ。
「俺にも薬草がどれか分かってきた。
これが薬草、こっちは癒やし草と毒消し草、、、う〜ん、これは?」
「それは高薬草ニャ! 」
「おぉ! 高薬草、、、500エントの高い素材だ!」
守銭奴の俺は値段だけはハッキリと覚えている。
高薬草をたくさん集めて売れば大金になるな!
「高薬草はハイポーションの材料ニャ」
ハイポーションは確かポーションの上の回復薬だったかな。
詳しい事を聞いてないので分からないが、そんな感じだったと思う。
「ウチも詳しい事は分からないニャ!
ポーションの事が知りたいならミレイナに聞いたらいいニャ!」
受付嬢のミレイナさんなら詳しいだろう。
帰ったら聞いてみよう!
「ぐぅぅぅううう、、、ニャ?」
レリムのお腹の音がなる。
採取に集中していて気付かなかったが、もうお昼頃だろうか、一旦休んで昼食にしてもいいな。
俺の通販スキルを使って料理を作るのもありだ。
何処かに見晴らしの良い所はないだろうか、、、
「この近くに川ってないか?」
「あるニャ! 案内するニャ」
レリムには聴覚強化があり、微かな音も聞き逃さない。
川の流れる音を聞き取り、ここまで案内してくれた。
「着いたにゃ!!!」
「ありがとう、やっぱりレリムは頼りになるな!」
「何でも任せるニャ! ウチはお利口さんニャ」
戦闘狂をお利口と言えるのかどうか?
本人はドヤ顔でウンウン頷いている。
俺は何となくだが、レリムは大きな存在になると思った。
強くて寂しがりやで、魚一途な猫獣人は、いつの日かボス猫みたいに仲間を作りまとめ役の様な存在に、、、なるかもしれない、、、笑
この時、俺は冗談のような妄想をしていたが、、、
後にレリムと俺は、とんでもない事になる、、、
そう、、、1人の人間と1人の猫獣人は大物になるのだった、、、
川辺の丸い石に腰を下ろし、心の中でスキル通販と念じる。
受付嬢のミレイナさんでも、使い方の分からないスキルだと言っていたが、俺には何となく分かる気がした。
スキル通販は、アイテムボックス同様、心の中で念じる事で使用可能となる。
頭の中に選択肢が思い浮かぶ、、、
食料品、ドリンク、日用品、家電用品、雑貨用品、服飾、
寝具、、、・・・
昼食のため食料品を選ぶ。
肉、魚、野菜、、、、・・・
もちろん魚しかない!
項目から魚と念じると、色んな日本の魚と価格のイメージが思い浮かぶ。
手持ちのお金が1,500エントと少ないため、高い魚は選べない。
安くても、ある程度美味しくて大きい魚、、、
マダイ、¥300エント! これ1択だ!!!
さらに調理する為の1番安い包丁を選ぶが、、、
包丁、¥3,000エント! うん?、、、
買えない! 無理だ!
予算をオーバーしてしまう。
包丁って高いんだよな、3,000エントでも安い方なんだが。
どうしていいか分からず悩む俺。
「、、、お魚まだかニャ、、、ぐぅ」
可愛いお腹の音を鳴らすレリム。
「早くしてくれ」と催促しているみたいだ。
手早く食べれて、安くて美味しい魚料理、、、あれしか思いつかない!
フィッシュバーガー、¥200 ✕ 2
コーラジュース、¥100
マタタビジュース、¥100
食料品にはこういったジャンクフードも有るみたいだ。
ドリンクの項目にはマタタビジュースがあったが、かなり珍しい飲み物で、確か日本の何処かの県で実際に販売されているジュースだ。
滋養強壮に良いとされる健康食品。
これなら行ける!
一応魚だからレリムも許してくれるだろう。
合計400エント。 残り残金1,100エント
購入すると念じてると、自動的に俺のアイテムボックスの中にあるお金が減っていた。
購入したら勝手にお会計してくれるシステムみたいだ。
「お待たせ、、、これがレリムの分だ」
フィッシュバーガー1個とマタタビジュースを渡す。
食べ盛りのレリムからすれば、少ないかもしれないが、貧乏なため我慢してもらうしかない、、、お弁当持ってくれば安上がりで、もっとたくさん食べさせて上げれたんだけどな。
「少なくて、、、ごめんな」
「そんな事ないニャ! ご主人様のお陰で冒険者になれて、食べていけるのニャ!」
気遣ってくれる優しいレリム。
何て良い子なんだ! 少し涙ぐんでしまう。
この子の為にもっとお金を稼いで、腹いっぱい食べさせてやりたい。
「ニャ〜ア美味しいニャ♥ サクサクしてて、このソースがたまらないニャ」
うん! 確かにサクサクしていて美味しい。
バンズに挟まれたフィッシュフライとタルタルソースが相性抜群で癖になる。
「ニャ!?!?!? このジュース何ニャ!?
美味すぎて、おかしくなるニャオォォォーーーー!!!!」
突如立ち上がり、両手をグウにしガッツポーズを決め、遠吠えを上げる。
マタタビジュースを飲んでおかしくなったレリム。
俺はイケない物を飲ませてしまったのか?
慌てて通販スキルを発動し、原因を調べる。
ドリンクの項目を開き、マタタビジュースの説明を読んだ、、、
《マタタビジュース》
獣人に飲ませると滋養強壮が高まり、戦闘意欲が湧く!
さらにパワー、スピード、ディフェンス、スタミナを強化する。
人間は滋養強壮だけ高まる。
しまった、、、1番渡してはイケない相手に、マタタビジュースを渡してしまった。
まさか通販で購入した飲料に、ステータスを上げる効果が有るなんて普通は思わないだろう、、、
「ニャォォォオオオ!!! 戦いたいニャー」
溢れ出す闘志。
常に戦いたい欲求に囚われているレリムが、剥き出しの闘志を燃やして、モンスターというなの強敵を待ちわびている。
「あれ?、、、そういえば何で森の奥なのにモンスターが出て来ないんだ、、、???」
昨日よりも森の奥にいるのに、なぜかモンスターと出会う事が無かった。
おかしい!!! 昨日はゴブリン2体と戦ったのに、、、
「奴等がいるから、ゴブリンは出て来ないニャ!」
俺の疑問に答えてくれるレリム。
奴等とは、、、いったい誰の事を言ってるんだ。
「「「ゴブ!? ゴブゴブ!?」」」
レリムの視線の先にある森から、慌てるように現れたゴブリン数匹。
ゴブリン共は俺達に興味がないのか、走って横を通り過ぎて行った。
そして現れる真打ち!
「「「ブフォ」」」
ゴブリンとは違う、緑色の体色をした豚顔の大男が5体。
醜い豚顔と荒い鼻息が特徴的で、俺には興味がないのかレリムを見て興奮している。
「オークニャ! ゴブリンと同じ雑魚ニャ」
いや! 違うだろ!
オークから逃げている時点で違うのは明白だ。
ゴブリンは頑張れば、ひ弱な俺でも勝てそうだが、見た目が野蛮で体格がでかいオークは、明らかに強そうな雰囲気を纏っている。
そんなオークを見て雑魚呼ばわりするレリム。
ドラゴンを倒した実力からすれば雑魚なのかもしれない。
「ニャオォォォ〜」
可愛いく威嚇するレリム。
全然怖くない、オークは怯むどころか下品な鼻息をさらに荒らげて、レリムへと襲いかかる。