猫獣人レリム
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お金を持っていないため入場税を払えず、猫獣人のレリムを門の前で待たせている。
冒険者ギルドで薬草を換金して、迎えにいくつもりだ。
「よく、こんなに集めれましたね。
まさか森の奥に行ったりしてませんか?」
「野良獣人の女の子に手伝ってもらったんだ。
ちょっと奥には行ったけど、心配しなくても大丈夫!」
「まさか保護者になるおつもりですか?」
「はい! なります」
決意を込めて返事を返した。
あんなに可愛くて強い女の子をほっとくなんて、俺にはできない。
「俺より強いですし、採取だって上手でした。
お互いのできない所を補助し合えば、冒険者としてやっていけると判断したんです」
「綺麗な言葉に聴こえますが、女の子に稼がせるゲスい男にも思えます!」
戦闘の殆んどを幼い女の子に任せるのだ、ゲスでクズでゴミなのは認めるしかない。
しかし、実質30才で無能ニートの俺に、頑張って金を稼げという方が間違っている。
できる事なら俺がモンスターと戦ってやりたいさ。
それが出来ないって分かっているから、俺にしてやれるのは保護者になって一緒に生きる事ぐらいだ。
「どう思われてもかまはない! 間違った事をしたつもりはない!」
「意志は固いようですね! 一つだけ注意しておきます。
獣人は強く有用で役に立つのは間違いありません。
ただし、一緒にいると戦闘に巻き込まれ、保護者の方も死に目に合うことだってあるんです。
あなたに死ぬ覚悟がありますか? 」
ふっ愚問だ!!!
「覚悟なんてありません!!!
死にたくない、生きたい、楽したい!!!」
死にたくない、誰だって死ぬのはいやさ!
生きたい……できれば楽して生きたい。
それが俺の情熱だ!!!
「凄いこんなクズ見たことないっ」
受付嬢のミレイナさんがドン引きしている。
だが、これが俺の本音だ。
「ヒラメキさんの気持ちは分かりました。
私は何度も、無茶をして死んでしまった冒険者の方を見てきました。
あなたに死なれたら担当の私は悲しいです……」
「心配してくれてありがとう! ミレイナさんは優しい人だ」
優しい気遣いから、厳しい言葉をかけてくれたみたいだ。
精算さんを開始したミレイナさんにゴブリンはどうしたらいいか聞いてみた。
「ゴブリンは使える素材がないのでお金になりません。
売れる所が無いんです。」
せっかくレリムが倒してくれたゴブリンだがお金にはならないようだ。
残念だが諦めるしかない。
もっと強いモンスターを倒さないと駄目みたいだ。
冒険者が甘くないという事を実感する。
「薬草20本で2千エント 毒消し草が10本で5百エント
癒やし草が5本で千円エント 高薬草が2本で千円エント
合計で4,500エントになります」
薬草一本100エント 毒消し一本50エント
癒やし草一本200エント 高薬草一本500エント
こんな感じのお値段か!
やはり高薬草は高値がついたが、これは森の奥に行かないと見つけられないため、次も手に入るか分からない。
「初心者冒険者が薬草採取でこれだけ稼げるのはいい方ですよ!
高薬草は高いので、いっぱい集めて欲しいですが危険な場所に生えていたりするので、あまり無茶して狙わないように」
そうしたい所だが無理だろうな!
猫獣人のレリムは戦闘狂で、ガンガン森の奥に入ってしまう。
「そうだったレリムを門で待たせてるんだ。
すみません俺は先を急ぐので、これで失礼します」
最後に今日泊まる宿の情報を聞き出して、別れを告げる。
「はい。獣人の子を冒険者として登録するなら、明日連れて来て下さい!」
「分かりました! では!」
門で待たせているレリムの元へと急いだ……
「ニャ〜ニャ〜遅いニャ!」
「ごめんな!俺が悪かった」
「寂しかったニャ……もう1人は嫌ニャ……」
本当に寂しかったみたいで、俺の脚に抱き着いてくる。
落ち着かせるためにレリムの頭を撫でてやると、眼を閉じて気持ち良さそうにじっとしている。
「にゃ〜気持ちいぃニャ」
「よし、それじゃ行こうか!」
門番にレリムの分の入場税を払い、町の中へと入る。
久しぶりで珍しいのかキョロキョロと町を見渡す。
他の人とぶつかりそうで怖いので、手を繋いで引っ張っていく……
「ニャ〜人間がいっぱいニャ!」
「お魚食べたい……ニャ。いっぱい食べたいニャ」
早く魚が食べたいみたいでソワソワしている
仲間になってくれたら、魚食べさせる約束をしていた。
破ったら何て言われるか分からない……
宿にいけばご飯を食べれるはずだから、もう少しだけ待ってもらう。
ギルドの受付嬢ミレイナさんに、教えてもらった宿に着いて下宿代を払う。
ここが1番安い宿で朝夕の食事付きで3千エントかかった。
残りの残金は1,500エントだ。
支払いを終えて早速だが、レリムが待ち切れないみたいなので、夕飯にありつかせてもらう。
お魚大好きな猫獣人のレリムには特大魚定食を注文する。
ちなみに俺は普通のお魚定食にした。
「きたニャ! きたニャ! おっきいニャ♥」
「えっ? でっか……」
レリムの焼き魚はでっぷりと太っている。
まん丸で髭が生えた魚、ナマズとアンコウが合体したかのようなグロテスクな見た目。
「ナムアリットにゃ!!! 久しぶりに食べるニャ」
この魚の名前はナムアリットと言うらしい。
宿の大将に聞いたところ、グロテスクな身ために反して、かなり美味しく、この辺では大人気の魚だと。
この辺に海はないらしく、川で捕れた魚みたいだ。
「ぷるぷるコリコリにゃ♥
美味しいニャ……あむあむ幸せニャ〜」
ご満悦の表情を見せるレリム。
久々に食べる魚、無我夢中といった様子。
美味しそうに食べるレリムを見てると、俺もお腹が減ってきた。
俺が注文した魚は、同じく川で捕れた魚で、食べてみると肉質は鳥のようで、ジューシーで美味い。
レリムの方が気になったので、チラッと見ると、皿の上は綺麗に骨だけになった魚が載っていた……
「ニャニャ!? 無いニャ……ウチの魚が消えたニャ……」
消えた? いや……食べ終えたが正しい!
俺が自分の魚に気を取られた一瞬の内に、レリムはでっぷり太った魚を食べ終えたのだ。
「凄い食い意地だな……」
「ち……ちがうニャ……気づいたら消えてたニャ!!!」
ジロッと睨みを利かしレリムを見る……
「信じてほしぃニャ……嘘じゃないニャ!!!」
疑わしいが信じみる事にした。
レリムが嘘を言ってるか、どうかはすぐに分かる。
俺の魚をレリムにプレゼントすれば一瞬だ……
「仕方無いな、、、ほら食べろ!」
「じゅるじゅる♥、、、いいのかニャ!?
食べたいニャ、、、アムル食べたいニャ!!!」
俺が食べてた魚はアムルと言うらしい。
アムルをガン見して涎を垂らしている。
「ニャニャ……我慢できないニャ……ごっくん♥」
喉を鳴らし、両手で皿から魚を取り口へと運ぶ……
「がぶっ! がぶっ! 美味いニャ!!!」
俺の事はお構い無しで一心不乱にかぶりつく。
ものの数秒でアムルは骨だけになり、皿の上に戻された。
至福に浸り、口をもぐもぐさせるレリム。
膨らんでいた頬が徐々に戻り、切ない表情へと変わる。
「消えたニャ……口の中で溶けたニャ!!!」
「お魚さんが居なくなって、レリムは不幸になったニャ……」
確信犯だ……いや、現行犯だった。
容疑者レリムは嘘をついていた事になるが、罪を罰したりはしない。
尊敬する両親を亡くし、今まで寂しい想いをしてきたのだ、少しぐらいは甘やかしてもバチは当たらないと思う。
「容疑者レリム君、許すから食べたと認めたまえ!」
「違うニャ! 口の中で消えたのニャ」
一向に罪を認めようとしない。
反省する気はないようだろ……
「今罪を白状したら、明日また食べさせてあげるから」
「食べましたニャ! ウチが悪いニャ!
明日も食べたいから、よろくしニャ♥」
素直になったレリムは、お調子者だった。