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スーシーロ



 スーシーロの領主エドワード・ロドリゲス様が保有する軍事力が白鯨兵団で、その兵士達の中で最も偉い存在が、隊長のドベルクらしい。

 眉間にシワを寄せて思案顔になる彼は、精悍で恐ろしい顔立ちを、さらに恐ろしくさせて俺を、鋭い眼つきで睨んでいる。


「俺嫌われてますか?」


「いや、そういうわけでは、ないのだが……」


 どうやらドベルクは、俺達の冒険者カードを疑問に思っていて、いくら獣人が強いと言っても、幼い少女がドラゴンハンターになっていることが、どうにも気にかかるらしい。


「……しかしな、実際にあのレリムという獣人の少女が、ドラゴンを倒す所を、この目で見た。 信じざるおえない……」


 そうだよな……俺も信じられない。


 だけどレリムは天才なんだ。

 戦闘狂の獣人の中でも、さらに戦闘に長けた獣人。

 

「それに、おかしいのは……これ程の逸材が、なぜ初級冒険者なのだ!? ギルドは何をしている? もっと上でいいだろう。」


 それに関しては、何も言えない……だって俺のせいでもある。


 実力で言えば間違いなくレリムは特級冒険者だが、ギルドには規定があり、飛び級などさせられない。

 ルーガの町にあるギルドでは早急に俺達を、中級まで上げようと画策しているが、それを阻止しているのが俺だ!


 ニートで堕落した生活を送りたい俺からすれば、昇級は控えたい。

 本当なら初心者冒険者のままでいたかった。

 冒険者の仕事で忙しい毎日を過ごすのは嫌だ……これ以上は絶対に上がらないように、しなければ……


「俺に任せておけ!!! 冒険者ギルドには顔が利くから、俺の方からキツく言っておく……」


 ば、ば、ば、バっっっカやろぅぅぅ!!!?


 こいつ!? とんでもない事を口にしやがった!!!


 それな事されたら、俺の野望……「異世界のんびり満喫にーとライフ」が終わってしまう。

 くそぅ〜絶対に働かないぞ!!!


 俺は俺の意志を真っ当する……ニートとして生き、ニートとして死ぬ。

 これが俺の【働かずの誓い】……破れぬ誓いだ!!!

 

「いやいや、そんな面倒なことをドベルクさんに任せるわけにはいかない……」


「大丈夫だ! どのみちドラゴンが出現したとギルドに報告しないといけない。 必然的に、討伐したヒラメキ殿の事も説明する」


 くっっっそがっ!


 どうあっても避けられぬ運命か……



 白鯨兵団、隊長のドベルクによる取り調べが終わり、ドラゴンを【アイテムボックス】の中に収納したら、皆から驚かれたが、こういう反応するのは分かっていたので気にしない。


 その後、レリムとアイリスが何処にいるのか気になり辺りを見渡すと、助けた兵士達と何やら話し込んでいる。

 

 耳を傾けると……


「へへへ、ありがとな嬢ちゃん。 幼いのによくドラゴンを倒せたな!」


「本当だぜ。 お前がいなかったら俺達は死んでた……助けてくれたお礼をしないとな。 何か欲しい物あるか?」


「にゃにゃ!? 欲しい物ニャ? 魚にゃ! 魚をよこせニャ!!!」

 

 デジャヴだろうか……俺と初めて会った時も、レリムは同じ事を言ってたな。


「魚をくれにゃいと……イタズラするにゃ!」


「ははは……笑っちまう。 すまねえな……魚は持ってない」


「そんニャ〜酷いにゃ!」


「「ははは〜」」


 猫耳をペタンと伏せて、この世に絶望したかのように落ち込むレリム。

 兵士達はそんな彼女が面白くて笑っている。



 アイリスの方はと……


 

「ドラゴンの毒で死にかけた俺を、救ってくれた君に惚れた。 君みたいな美しい女性、初めて見た。 絶対に大切にするから結婚してくれ!」


 兵士の1人に告白されている最中だった。

 将来は絶世の美女を約束された彼女の容姿に、惚れてしまったのだろう。


「わぉん〜困りました。 ……ごめんなさい、好きな人がいるから結婚できないォン」


 へぇ~アイリスには好きな人がいるのか……


 どんな人だろう?……もの凄く気になるな……


「ま、待ってくれぇ……俺は強いぞ! 必ず君を守ってみせるから、どうか一緒になって欲しい」


「私の好きな人は弱いけど、心優しい人だォン♡ 強い人は怖いから苦手だォン……」


「ガーーーン!? 弱い人の方が好きなのかよぉぉぉ!」


 残念だったな……まぁ〜どのみち、アイリスが許しても、保護者にあたる俺が許すつもりがない。

 諦めろ兵士……もうお前の残りのライフはゼロだ!


「くそっぅぅ〜〜〜!!!」


「ボソボソ……お兄様ぁ大好きぃ♡」


 両手で赤く染まった顔を隠して、銀色の尻尾をふりふりするアイリスが何か小さい声で呟いているが、フラれた兵士の絶叫で、何と言ってるか聴き取れない。



◆◆◆



 領主様の娘エミルの意向で、俺達3人は馬車に乗せて貰える事になった。

 レリムとアイリスが、メイドさんの隣に座り、エミルの横に俺がいる。

 馬車自体は広くて揺れも少なく快適だが、なぜかエミルは俺に身体を寄せて、肩と肩が触れ合うくらい接近してくる。


「ねぇねぇ~僕とお話しよう」


「……はいぃぃ」


 相手が貴族で俺のような小物ニートは萎縮して言葉が上擦る。


「そんなに緊張しないでよ。 楽しくお喋りしたいだけだからさ……」


 そう言われても困る!


 こんな美人で可愛いらしい貴族のお嬢様に隣にいられたら緊張してしまう。

 ニートの女性に対する耐性は非常に低いのだ……


「……ヒラメキは気づいてる?」


 俺の耳元に口を近づけてヒソヒソと小声で話すエミル。

 皆に聴き取れないようにしている。


「えっと……何が?」


「僕が……君に恋しちゃったことぉ♡」


「・・・?・・・!?」


 好き??? え、ええ、えええ……俺の事が好きなのか!?


「やっぱり気づいてなかったんだ。 もうメロメロだよ♡ どう責任取ってくれるのかな?」


「そんな事言われても……」


「じゃあさ、好きな女の子タイプ教えてよぉ?」


 うん〜〜〜……好きなタイプか?


 いきなり言われて回答に悩む。

 どんなだろうな、考えた事もないな。


 可愛ければそれでいい、特にタイプはいない。

 なんか適当に答えとくか……


 なんとなくレリムを見て、彼女の印象を頭にイメージして答える。


「元気が良くて、明るい女性かな……」


「え!? 元気がいい人が好きなの?」


 驚いたように大きい声を上げるエミル。


「う、うん」


「そ、そうなんだね……しょぼん。。。」


 頷いて返事すると、彼女は何故か項垂れて、俺から少しだけ離れる。

 対面に座るメイドさんがキツい眼差しで俺を見ている。


 俺なんか不味い事言ったかな?


 理由は分からないが、それから暫くの間、無言のまま気不味い時間が続いた。



◆◆◆



 ドラゴンと戦闘した場所から1日かけて進むと海が見えてきた。

 ここまでの道中、魔物との戦闘も何度かあったが、白鯨兵団の人達が請け負ってくれたので俺達の出番はなかった。


 広大な海を眺めながら、しばらく進むと、ようやくスーシーロの町に辿り着いた。


 うーん……ここまで来て気付いたんだが、こんなに頑張って歩いて来なくて、馬車に乗ってくれば楽だったはず。

 楽しいと思って俺は、徒歩を選択したのだが失敗だった。


 キツイから帰りは絶対に馬車にしよう。


 門の前で銀狼獣人であるアイリスの入場税を支払う。

 俺とレリムは冒険者カードを見せることで、入場税を払う必要はない。


 問題無く中に入る事ができた。

 

 町の中には港があり、多くの船が停泊している。

 ほとんどの人が赤黒い肌をしていて、女は服を着ているが、男は上半身裸の人がほとんどだ。


 ルーガの町とは違い、普通の人間だけでなく獣人も多いようだ。

 町の通りを行く人々を見ていると、普通に獣人と人間が話している。

 獣人は人間に嫌われたていると思っていたが、俺の勘違いだったのかもしれない。

 

 大分機嫌を直してくれエミルに質問する。


「獣人って荒くれ者が多いでしょう。 スーシーロの住人は漁師が殆どで、気が強い人ばかりだから、住人とは気が合うみたいなんだ」


 ああ、納得……そういう理由なんだ。


 獣人は戦闘種族でサ○ヤ人みたいなのが多数を占めるから、同じ気質の漁師とは馬が合うのか。

 スーシーロ……さすが漁師街。


「もうすぐ僕の屋敷に着くよ!」



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