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夜の密会、、、獣人王






豪華な食事を終えて、寝る支度をする。

皆で入っても大丈夫なようにファミリータイプのテントを選んで購入した。

テントを皆で張り、中を確かめる。

広々とした空間、5人ぐらいなら一緒に入っても大丈夫そうだ。


「すごいですォン! 簡単に小さな家が出来てしまいました!」


初めて見るテントに驚くアイリス。

目を輝かせて、はしゃいでいる。


そこまで家が珍しいのだろうか?


「洞窟で寝泊まりしてたので、久しぶりに家で眠れますォン。」


そうだった、、、野良獣人は町に入れず外で暮らしているから、家で寝るなんて事はありえない。

レリムは丈夫で意外に賢く、外でも平気で寝てそうだ。


「ニャニャ! 外で寝るのは馴れてるニャ!」


冒険者だった両親と、旅していた時に、よく外で寝てたみたいだ。

アイリスは弱かったせいで冒険に出る機会がなく、ずっと家にいたようだ。

親から追い出されて、初めての外での暮らしは絶望的だったらしい。

ここまで生きれたのが奇跡で、モンスターに出会っていたら、すでに死んでいると語るアイリス。


スキルもなく親からも見放されたアイリスが、不遇にしか見えない。


「私は皆さんに拾ってもらえて幸せですォン」


「ウチもにゃ! 1人は寂しいのニャ。

皆でいたら楽しくて幸せニャ!」


レリムの言う通りだ、誰しも1人では生きられない。

今の俺には明るく元気で、とても温かい家族がいる。

獣人の保護者になれて俺の方こそ幸せだ!



テントの中にお布団を敷き、皆で1枚の大きい毛布を被る。

普通キャンプの時は寝袋を使うのかもしれないが、敵に襲われた時に素早く反応するためには布団の方が適している。


3人で一緒に毛布にくるまり、温もりを共有する。

くっついて寝ているが不快な事は一切なく、程よい疲れのお陰ですぐに眠りについた。






ヒラメキは早々に寝てしまう。

お祝いでテンションが高く、寝れない2人は秘密の会話を始める。


「お兄様は不思議な人ですォン」


「気づいたニャ?」


「はい! 頭だけは誰にも撫でられなくないのに、簡単に撫でさせてしまったォン」


本来、誇り高い獣人は他の者に頭を触らせない。

しかも人間には絶対に触れられたくないのに、ヒラメキには簡単に触れられしまい、不快で屈辱的なはずなのに、気持ちいいと思わされてしまった。

普通ではありえない事なのだ。


「頭撫でられたからには、責任取ってもらうしかないニャ!」


「わぉん!? 責任!? それはまさか、、、」


「そうニャ! 結婚してもらうニャ!!!」


「ウチと、アイリスは未来の獣人王様の嫁になるニャよ!」


「獣人王様!? それは、ないのでは、、、お兄様は人間ですォン」


獣人王それは獣人全ての頂点に立つ存在。

300年前に存在したという初代獣人王であるガルバロス・ウルフリック以外には、まだ獣人の王が出た事はない。


「人間がどうとかは関係ないニャ! 獣約聖書にかいてある事が真実だと習ったはずニャ!」


「た、たしかに、そうですォン。

獣人なら親から絶対に習うことです」


人間に旧約聖書があるように、獣人にも獣約聖書が存在する。

獣人は幼いうちに、親から獣約聖書について教えられるのだ。


「聖書に書いてあるニャ、、、初代獣人王様は最初に猫獣人を従え、次に狼獣人を従えた。 3番目には鳥獣人を、そして3人の獣人を覚醒まで導くと、、、」


「では次に従えるのは、、、鳥獣人ということに、なりますォン」


鳥獣人は獣人の中で、1番人間が嫌いな種族。

人間のような弱く脆弱で群れなければ何もできない種族が嫌いで、たとえ幼い野良の鳥獣人でも、人間の下にだけは付きたくないと考えている。

そんな種族が人間であるヒラメキに従うか疑問である。


そもそもの話、、、

人間に保護者になってもらうという事は、獣人としてのプライドを捨てる事になる。

猫獣人のレリムと、銀狼獣人のアイリスは誇りを捨て、その人間に一生ついていく覚悟でいるのだ。


「はわぁ〜〜〜、、、みっ、未来の獣人王様のお嫁さん、、、わぉんんん♥」


「そうなるニャ!

ウチ達は、頭を撫でられたから嫁になったニャ♥

既成事実ってやつニャ!」


「既成事実! さすがお姉様です。

レリムお姉様が1番嫁、、、私は2番、、、ということは愛人ですォン!」


愛人という響きに喜び目がとろけるアイリス。

狂気じみた愛を感じる。


「ハァ、、、ハァ、、、愛人♥、、、お兄様に使い捨てにされないように頑張らないといけないォン!」


「ニャニャ?、、、愛人ではないと思うニャ、、、

まぁいいニャ、とりあえず覚醒できるように頑張るニャ」


覚醒、、、それは獣人王の側に仕えた者だけが、なれる獣人本来の姿。

その力は強力で、ドラゴンや勇者でも太刀打ちできない。

もし本当に人間のヒラメキが獣人王であるなら、レリムと、アイリス、そしてまだ見ぬ鳥獣人を覚醒まで導くことになる。


「ご主人様は優しい人ニャ! 捨てたりしないから大丈夫ニャ!」


ドラゴンとの戦闘で親を亡くし、寂しい想いをしてきたレリム。

彼女は1人でいる事が辛く悲しいものだと、よく理解している。

保護者になってくれたヒラメキに少なからず想いを寄せ、日々を一緒に過ごす中で信頼に変わっていった。

今は寂しいとは思っておらず、幸せに満ち溢れている。


「ただ、かなり弱いニャ! だから守ってあげないと駄目ニャ!」


「わぉん! 私が強くなってお兄様を守ってあげます」


決意を胸にするアイリス。

彼女は、身を呈して冒険者から庇ってくれたヒラメキに恋してしまったのだ。

自分より弱そうなヒラメキが、冒険者の男達の前に立ち守ってくれた事で、彼女自身もお兄様みたいなヒーローの様な存在になりたいと心から願っている。


「決めましたォン! 明日から強くなるために練習します」


「そして必ず、お兄様を、、、獣人王に、、、、するォン」


人間の中でも最弱に位置するヒラメキ。

弱すぎて戦えないだけではなく、仕事する意欲もない駄目な男だ。

そんな彼の目標は、戦わずして楽して稼ぐことだ。


できることなら戦闘は避け、厄介な依頼は受けず、ヒッソリと楽して自由快適に生きたいと考えている。

これがニートの基本のスタンスであり、彼のユートピア(理想郷)計画というなの妄想……【異世界のんびり満喫にーとライフ】を日々頭の中で企てている。


だが! そんなヒラメキの思いとは裏腹に、獣人達は彼を上の地位へと押し上げていくのだった。






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