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おおきなのっぽの古観音――おじいさんの仏像――

 かつて造られた、その大きなのっぽの古い観音像(かんのんぞう)は、エセ大日本帝国の中に存在した。


 その大きなのっぽの古い観音像(かんのんぞう)は、おじいさんが生まれた朝を祝い、おじいさんの父親にあたる人物が、その高まった《建築》スキルにかこつけて建造したものであった。

 大きさははおよそ73メートルだ。――この異世界でも度量衡はメートル法である。標準語はもちろん日本語で、日本語は王家に婿養子となった勇者が異世界に広めたものであると伝えられている。


 その特徴は、なんといっても、《建築》スキルによりおじいさんの魔力に反応しておじいさんと一緒にチクタクと小さく動くことだろうか。


 当初こそ観光客も呼び込んで観光地のためのランドマークの役目を果たしていたその仏像だが、しかし、そのおじいさんの父が死んでしまえばただの像である。


 100年と休まずにおじいさんと一緒に動き続けた古い観音像であったが、年月に勝つことはだれにもできない。その廃墟化が進むとわざわざ異世界に来てまで大仏を見ようという酔狂な者は少なく、台風などの通過によって観音像の一部が剥落し、地域住民に被害を与えるなど、その風雹被害(ふうひょうひがい)はだんだんと問題となってきた。


 さらにはおじいさんが他界した後、その権利関係が問題となった。資産家であったおじいさんの多くの権利は息子たちに譲渡され、しかし仏像はおじいさんの奥さんであるおばあさんに譲渡された。

 さらにおばあさんも寿命で永眠されると、息子たちは盛大な遺産相続争いの後に彼女の権利関係を放棄し、帝国に拠出することにしたのである。


 そこで困ったのは――当然のように帝国であった。


 仏像の撤去費用には10億円以上もかかるとされ、帝国貴族たちも押し付けられてはたまらないと費用の拠出に難色を示している。


 いまはもう動かない古い観音像は、ついには大迷惑観音像などと不名誉な呼ばれ方をされ、忌嫌われるしまつである。


 しかし、しかしである。そこは異世界なのだ。


 数多くのヘイトを受けた大迷惑観音像の我慢の限界はついに怒りが頂点に達してしまうのだ。


「怒り頂点なりぃぃ!」


 仏像が、しゃべった――


 その石像の瞳が赤く輝く。


「うぉぉぉ、ぶつぞぉぉぉぉー!」


 かつてチクタクと動いていた大迷惑観音像は動き出し、さらなる迷惑を誘発しようとしていた――


 ちなみに作者は、仏像と観音像の違いを今だによく分かっていない。

 きっと奈良に生息するヤツが仏像でそれ以外が観音像なのだろう。だんだんだだーん。

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