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魔王はダンジョンを作って世界を脅かした

 世界中に現れた切りの良い数字である2048個のダンジョンが出現したとき、世界各国の人々は当初はこぞってダンジョンに潜り込んで冒険の狩りにでていた。


 ダンジョンに行くとモンスターが狩れる。


 モンスターは倒せはまるで某JRPGのように経験点が貰え、レベルを高めることができる。経験点万歳!


 だが冒険? いちいちダンジョンに潜って戦いを挑むのか?

 そんなのめんどくさい。


 各国政府関係者は冒険者ではない。

 そんなめんどくさい肉体労働をちまちまやるとかアホの極み、アホくさいにもほどがあるだろう。そう考えていた。


 そう、ダンジョンなんて壊せばいい。

 そうすればダンジョンの上で立っているだけで経験点がえられるだろう。どうせダンジョンなんてまたにょきにょき()えてくるのだから。


 お(あつら)え向きに、日本人は重機を開発した。

 その名はランボー。商標権に配慮した真っ赤な重機である。

 なんと圧巻なのは備え付けの湿度計を利用した現地の天気予報をする機能を有していることであろう。人々はそれをランボー天気予報と呼んだ。

 さらなる特徴としてはさらにその先端にある突起物だ。



 そう、油圧式のショベルである!



 ショベルは文明の利器として名高いが、真っ赤な重機であればおよそ3倍もの威力を発揮する。


 だがそれすらもめんどくさいと思うのは日本人の凝り性という(さが)なのだろうか。


 著名な言語開発者の一人であるラリーウォールが提唱する三大美徳とは怠慢・短気・傲慢である。それに従わない理由はない。


 そうなると文明に頼る日本人は、ついに二酸化炭素の注入によるダンジョン攻略法を編み出すに至るのだった。


 二酸化炭素とは、温暖化係数が脅威の1という地球温暖化に配慮したすてきな冷媒の一つである。

 そして《錬金術》スキルがあれば二酸化炭素なんて簡単に生み出せるのだ。


 当初は四塩化炭素や「(コンバト)」という英語名称のエセ大日本除草菊を使用していたのだが、その安価性は二酸化炭素には遠く及ばない。

 毒性の非常に強い二酸化炭素は、消火剤として温暖化係数の高いフロンと同様に第三類消防設備として使われ、使い方を間違わなければ安価で安全なものであった。


 だが、モンスターには二酸化炭素が効かないものがある。

 その名をアンデットといい、彼らは生きていないため呼吸をしないという特徴があった。


 だが、そんなことであきらめる日本人はいない。

 あらゆる薬剤をダンジョンに放り込み、ついにアンデットにも効く薬剤を日本人たちは発見する。


 その名を臭化メチルという。英語であればブロムメチルか。


 毒物劇物取扱法試験では用途としてその名があがる、いわずと知れた土壌燻蒸薬剤である。


 その臭化メチルの浸透殺菌効果によって、ダンジョンマスターと呼ばれるダンジョンに住む管理人も簡単に殺すことができるということが分かった日本人たちは、どんどんとダンジョンに臭化メチルを放ち次々にレベルアップを極めて行った。


 それを世界に向けて情報発信したのだ。

 むろん世界は歓迎した。そして各国も臭化メチルを採用し、その有効性に歓喜した。







 え? 異世界にそんな毒物系の薬剤を広めるな、ですか?


 異世界に、モントリオール議定書なんてないんだよ?







 そして知られているダンジョンのうち1047個はすぐに破壊されてしまったのである。気づいたときにはすでに遅かった。


 それに完全に呆れた魔王ラララはほぼ鎖国政策を引き、再び彼らに助け舟を出すことはなかった。







 そして、それからおよそ100年が経過するのである――





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