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悪の組織によるヘッドハンティング




システム:ここはチャットルーム「秘密結社セヤロカー」です。


システム:秘密結社セヤロカーは非公開チャットです。


システム:村人Bがルームマスターです。


システム:アリスがカオルをチャットに招待しました。


システム:カオルが招待を承認しました。


システム:★注意!★ 村人Bは過去ログを全て消去しました。


システム:村人Bが入室を承認しました。


システム:カオルは今後いつでもチャットに入出可能になりました。


システム:カオルが入室しました。


カオル「こんにちは。この度アリス総帥にヘッドハンティングされた、渋谷カオルと申します。今後ともよろしくお願いいたします」











カオル「……あれ? 返事がない……」








カオル「チャットってこんなものなのかしら?」










村人B「怖い、元サツが来た。怖いよぉ」


運営A「大丈夫だ。俺たちは悪いことはなにもしていない。知らんけど」


村人B「知らんけどじゃねぇよ! アリスさん秘密保持契約(NDA)とかちゃんとしているの? そもそも、サツに情報だだもれの悪の秘密結社ってどうなの? ねぇ、どうなの? 崩壊寸前じゃないの?」


カオル「その辺りは信用してください。私は国家試験である霊子工学部門の技術士でもあります。技術士は、技術士法第四十五条で『技術士又は技術士補は、正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなつた後においても、同様とする』と縛りが入っています。そのような信用を傷つけ不名誉となるような行為はいたしません」


村人B「……。だめだ。さすがサツだ。専門用語すぎてナニをいっているか分からねぇ」


運営A☆「村人Bよ。要は『正答の理由』があれば秘密漏らし放題、盗用し放題ということだ!」


村人B「だめじゃねぇか! 技術士ってばぜんぜん信用出来ないじゃないか!」


運営A☆「だいたいなぁ。俺のような電波系のニンゲンだと、電波法59条の方を先に覚えるんだよね。電波法59条では『何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない』って決められているわけじゃん。どう見ても技術士法の方が『別段の定めがある場合を除くほか』よりかはヨワヨワな法律だよねッて思わない? しかもこっちの根拠法は憲法第21条2項だよ。そっちは一体何だね? さぁさぁいってみるがいい」


村人B「だめだ。運営Aも何をいっているかわからねぇ。というか理系がなんで文系ど真ん中の法律論争をしているのだ! だいたい、なんでそんな条文がポンポンと出てくるのだよ! 暗記でもしているのかよ!」


運営A☆「そりゃぁ、電波系の国家試験に出るんだから暗記するに決まっているだろう。合格れば上限無視して電波が発射できるようになる。知っているか? だいたい士業の受験生は条文を聞かれると、どんな酔いでも覚めて詠唱を始めるのだぜ? 詠唱しないのは中小企業診断士くらいじゃね? 電波系と電気通信とのダブルライセンスはホントに辛かった――。毎日毎日飲みながら写経して……」


村人B「酒飲んで酔っぱらっている時点でまともな受験生じゃねぇよ! それに写経ってなんだよ、写経って!」


カオル「でもこの程度、面接で詠唱できないと技術士試験は落ちますよ?」


運営A☆「俺としては『窃用』と『盗用』も気に入らねぇ。先にできた法律である電波系に用語を統一しろといいたい」


村人B「誰かぁぁ! こいつら何とかして―! 試験とか分かるかーぃ!」


運営A☆「安心しろ。本場のロースクール系はもっと酷いから」


村人B「ぎゃー! しぬー!」


カオル「……。なんだかこの会社でやっていける自信がなくなってきたのですが……」


アリス☆「まぁまぁそういわないで欲しいのじゃ。報酬を渡したじゃろ?」


村人B「ほぅ。ちなみにアリスさんはナニを渡したの?」


アリス☆「ドロー! トラップカード! スライムプールを2枚じゃ」


村人B「あぁ、経験点絡みの……」


運営A「マッドな技術者にそんなものを渡したらそりゃ幾らでも引き抜いてこれるわな……」


カオル「そんな所長じゃあるまいし……。まんまと引き抜かれましたけど」


運営A「アリスさんにDMで直接、技術情報を聞いちゃうようなガッツのある理系女だろ? そのどこがマッドでないというのだ。明らかにマッドだろ」


アリス☆「それでスライムプールを置けそうな良さげな土地は確保できたのじゃろうな? その住所を会社住所にするのじゃ」


カオル「警察の知り合いを経由して、エセ霞が関付近の一等地を母屋付きで約250百万円で購入できそうです。下に地下鉄も通っていませんから地下も相当な深さまで利用可能です」


アリス☆「えーっと……。2億5千万円じゃな。スノーのやつなら即金で払えるじゃろ。購入じゃな」


村人B「なにか飛んでもない金額の話が飛び交っとる……」


カオル☆「後はスライムプールに入れる本体のスライムですね。こちらはエセ大日本帝国の錬金術師が総力をあげて製造を試みているのですがうまくいっておらず……」


アリス☆「うむうむ。しばし待つのじゃ。要はスライムを調達すれば良いのじゃな。こちらでもやっておるのじゃ。それでそれさえ揃えば会社としての機能の目途は立つのじゃな?」


カオル「いえ。私の《錬金術》スキルレベルがLev.3で『初心者特典ポーション作成』の使用にはあとLev.2 レベル足りません」


運営A「それでも凄まじいな国家錬金術師。総合レベル5なら相当な腕前だろう」


カオル「ですが……」


村人B「ところで質問。会社として機能するためになんで土地購入したり、スライムプール作ったりする必要があるんだ? 最初、住所があれば良いみたいな話だったと思うのだが」


運営A「会社となるからにはディスクロージャとかIRとか必要だろう? そうなったとき、どうやって経験点を得ているのかある程度見せる必要がある。まさかアリスさんちの『自宅』を見せるわけにはいくまい。そういう考えなのですよね? アリスさん」


アリス☆「そ、そそ、そうなのじゃ。知らんけど」


村人B「知らんのかーぃ」


運営A「しかし毎回ニートのアリスさんが地上に出てきて『初心者特典ポーション作成』を村人Bに仕掛けるわけにはいくまい。――と、なるとアリスさんの代替としてカオルさんの錬金レベル不足はいろいろ困ったことになるというわけだ」


村人B「どちらにせよ、僕はまたプールに落とされるのは前提なのでしょう? その作ったプールに。うへぇ」


カオル「なにかご迷惑をお掛けして申し訳ない」


アリス☆「困ったのじゃ……」


 いつも村人Bが落ちているスライムプールにカオルを落とせば最大レベル20まであげることはできるのだが、スライムプールを開示すればダンジョンのことをカオルに話さざるを得なくなる。


 なぜならダンジョン内にスライムプールがあるのだから――


 カオルにダンジョンのことを告げることを、このときのアリスはまだ躊躇(ためら)っていた。いずれは話すのであろうが――


カオル「あのぉ、提案があるのですが」


アリス☆「なんじゃ?」


カオル「あの配信のときにいた、マスコット? のロダンくんですか。彼に私が抱かれるのが手っ取り早くレベルをあげられる方法だと思うのですがどうでしょうか?」


アリス☆「は? はぁぁぁ???」


カオル「我々の異世界では強いモンスターを倒すことで経験点を得ますが、高位のモンスターであれば抱かれることでも経験点を得ることができるのですよ」


村人B「そんなアホな!」


アリス☆「ワシも初耳なのじゃが」


カオル「たしか、異世界転生者の間では『くっころプレイ』といわれていたと思います。あれほどの立派なモンスターであれば、レベル10は固いと思うのですが、ダメでしょうか?」


 説明しよう!


 「くっころプレイ」とは「くっ、殺せ……!」を略した言葉の「プレイ」である。

 気高い女騎士などが敵勢力に捕まった際に発せられる台詞ランキングでは常に人気の最上位を独占し、潔く死んだ方がマシだという考えから、プライドの高い女騎士・姫騎士・女戦士などが敵に対して「(私を)殺せ!」と言い放つその姿に多くの人が感動の涙を流したという。

 展開がテンプレ化してギャグ、パロディとしてしか捉えられなくなる典型であるといえる。

 類似語に「あれー。お殿さまぁぁぁー(着物の帯をぐるぐるぐーる)」などがある。


村人B「あー。それな」


運営A☆「せやけど」


アリス☆「ロダンくんの異様な配信人気はそういうことじゃったのか……」


運営A☆「せやせや」

























アリス☆「よーし。分かったのじゃ。ワシのロダンくんがドレだけ立派なものをお持ちになっているのか、見せてあげるのじゃ☆」


 あまりの事実にショックを受けたアリスは、カオルに押し込まれる形でダンジョンを開示することに決めたのだった。





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