各国は組織をつくり、魔王を糾弾した
※この小説はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
「モンスターが枯渇して、いないだと?」
エセ国際保健機構※注1,の会長は危機感におおわれていた。
もちろん会長だけではない。多くの人がそのような不安を感じていたのだ。
※注1: この「エセ」という表記は、実際の組織または団体名とは関係のない異世界上の組織または団体であることを示すために付けられた接頭語である。そのため、もしも付いていなかったら誤字です。
だが、据え膳を食わない男性がいるだろうか?
甘いものにまったく目のない女性がいるだろうか?
そして、天然ものの経験値を前にしてモンスターを倒さない日本人がいるだろか?
もちろん多くの人は自制心を保つことができるだろう。
だが、世の中から泥ママがいなくならないように、モンスターという名の経験値が道を歩いていて、それを倒さない人がいなくならないのは事実である。
たとえ1000人が倒さなくとも1人が実行すればモンスターは倒れる。鉄砲で撃てばよいのだ。実行しないというのが無理というものだ。
なにしろ経験値があればどんなスキルでも取れる。
そしてスキルがあれば文字通りなんでもできるのだ。
こんなすてきなことができるのであれば、だれだってモンスターを倒すだろう。
そこで考え出されたのがモンスターの養殖だ。モンスターを屠殺する処刑牧場でも作れれば完璧だ。
だが、モンスターの養殖は困難を極めた。
モンスターのテイムは、スキル上は可能だ。しかし、養殖の難易度はそのはるか上なのだ。たとえば近大マグロは水産研究所が1970年から研究を開始し、2002年6月に完全成功している。実に30年以上も掛かっている。普通養殖にはこのぐらいの時間が必要だ。
同様にウナギの完全養殖も北海道大が1973年に世界で初めて人工ふ化に成功してから、養鰻が完成するまでには実に2010年までの永き時間が掛かっているのである。
そんな現代で実現できる養殖とは違い、先人の知恵のない、えたいのしれないモンスターの養殖などほとんど不可能に近い所業に見えた。――非人道的なことでもしない限りは。
この異世界には、
・中央にある大陸/エセ大日本帝国
・海を超えた大陸/灰殿魔王国
・南西にある大陸/カクガンジー王国
・西側にある大陸/イタリアンパスタ国
・北側にある大陸/コミーデミュタント連邦
・南東にある大陸/ゴーストラリア魔王国
という6つの国があったが、養殖も難航したため、そのいずれの国もモンスターの枯渇に悩まされることになったのだ。
たった一国を除いては。
そんな状況が5年、10年と続き、若い世代はモンスターを倒したことのないレベル0の者が大半を占めるようになる。
――と、各国は唯一、モンスターが多数生き残っているゴーストラリア魔王国にモンスターの開国を迫るようになる。
その各国が集まったエセ国際保健機構を通じて――