アナリティクス
システム:村人Bが入室しました。
システム:運営Aが入室しました。
システム:アリス・ガーゼットが入室しました。
村人B「――というわけで、およそ1週間でスノーさんは聖サウスフィールド女学院へと帰っていきましたよ。およよ」
――というわけかどうかは不明だが、ともかくスノー・サウスフィールドは異世界転生学園での1週間の生活のあと、元の聖サウスフィールド女学院に戻っていってしまった。形上は、聖サウスフィールド女学院からの強烈な圧力にスノー・サウスフィールドが屈した形となっている。
異世界転生学園の方では、どうやらスノーの転入・転出については「よくある体験入学」という話で落ち着いたようである。
運営A☆「はいはい。村人Bのハーレム化計画第一弾はFAILDと。めでたし、めでたし。ウィンドウシステムの画面いっぱいに赤文字でWASTEDとか書かれるが良い」
村人B「よかねぇよ! そりゃあもともと、経験値目当ての痴女とか思っていたけどさ、超絶美少女じゃん。逃した魚は大きいなと……」
システム:スノーが入室しました。
スノー☆「へぇ。わたくし、魚に例えられるのは初めてですが、なるほど。湊くんはそういう風に思っていたんだね――」
村人B「ちょ」
運営A☆「はい。リアルの名前を出すのは禁止! チャットでは村人Bでお願いします」
スノー☆「あ、ごめんなさい」
村人B「そうだそうだ!」
スノー☆「最も事実として、経験点目当てだったのは否定できないから、そう思われても仕方はないのだけれど――」
村人B「と、ともかく! チャットの交換もしたし、こうして話もできるし! いつでも逢えるから良いといえば良いんだけどねッ。別に学園で毎日とかなくてもさ!」
運営A☆「出たよ。いい人止まりで終わりそうなニンゲンがいいそうなセリフNo.1が」
村人B「うるせぇ! そうだ! 毎日逢ったりしたら緊張感というものがなくなるじゃない! 逢うときにはドキドキ感がないとダメだよね。たぶんダメなんだ。ダメだといいなッ。僕はドキドキを楽しみたいのだ!」
スノー☆「ははは……(乾いた笑い)」
運営A☆「それで、その――、経験点の方はどうだ?」
アリス☆「ワシの方の準備は方は大丈夫じゃ。レベル10くらいまでなら確実じゃ、あとはスライムか、298万円かというところじゃな。好きな方を選ぶのじゃ。むろんお勧めは298万円なのじゃ」
スノー☆「なんですの? そのスライムか、298万円かというのは?」
アリス☆「スライムコースは一匹一匹地道にモンスターをぷちぷちするヤツだな。ワシが楽しいのじゃ! 298万円はそれだけのお金が掛かるが、ボタン一つで30分後にはレベルがあがるやつじゃ。二酸化炭素をぷしゅーっとするやつじゃ!」
スノー☆「298万円程度ならお母さまにいえば出して貰えるでしょうけれど、困りますわね。理由を聞かれたら」
村人B「スライムはいいぞ。スライムは! 《もちもちの美肌》《水魔性耐性》《苦痛耐性》など、さまざまなスキルがレベルあげしなくても勝手に付いてくるという特典付きだ」
スノー☆「なんとなーく、298万円の方でなんとかした方が良いかと思うに至って来ましたわ」
運営A☆「こら! 村人Bよ。そんなこというからスライムの選択肢がなくなるんだぞ。俺の楽しみを返せ」
村人B「それが嫌だからいってんだよ!」
スノー☆「でも298万円か……。どうしましょう?」
アリス☆「もうちょっとジュエルがあればダンジョン罠とかも作れるのじゃがのぅ」
運営A☆「それなら、OSSのゲームとかいまウィンドウシステムに移植しているから、そのゲーム配信をすればなんとかなるのでは? 例のセヤロカーちゃんねるが視聴されれば幾らかはジュエルが得られるのだろう? そもそも論だが結果としてあれの反響はどうよ?」
アリス☆「ライブの時の人数は散々じゃったが、その後の視聴者数は結構あるのじゃ」
運営A☆「ま、初回配信だからねぇ。しかも個人勢の。ウィンドウシステムに注目が集まっているとはいえ、ライブに人が入らないのはある程度しゃーない」
アリス☆「アナリティクスで見ると、結構年齢層は高いのじゃ。女性が6割くらいなのじゃ」
スノー☆「謎ですね? 年齢層はもっと低くて男性が好みそうな内容なはずなのですが。アリスさんもロダンくんも、かわいいですし……」
このとき、警察/政府関係者が最も多く動画を見ていることを彼らは知らない。
運営A☆「ロダンくんが人気なんだよね。知らんけど」
アリス☆「ちなみに、だいたい一人1時間の視聴で0.1ジュエルくらいかなぁ。増え方としては」
運営A☆「辛い。それは辛いねぇ。100万再生とかあれば別だけど」
アリス☆「そんなにあればウハウハじゃが、逆にそんなにジュエルがあってもお金には変えられないのじゃろう?」
運営A☆「やっぱりマネタイズが問題だよなぁ」
アリス☆「?? マネタイズ?」
運営A☆「説明しよう! マネタイズとは『技術や知識などを収益化すること』だな。ここでいう意味は、ジュエルの現金化だ」
村人B「現金化……。現金化……。ショップ……。せや! このウィンドウシステム上にKONOZAMAを作るのはどうだ!」
KONOZAMAとは商標権に配慮したインターネット通販サイトのことである。決して逆から読んではいけない。
アリス☆「ウィンドウシステムを使って通販をするのね! それならできるのではないでしょうか?」
運営A☆「KONOZAMAを舐めるなよ。あれはインターネットの裏で確たる物流――ロジスティクスがなければ成り立たない商売だ。ウィンドウシステムを使いジュエルでモノを買ったとして、どうやってその物流をするのさ」
アリス☆「アイテムならばワシの錬金術で作れるのじゃ。ポーションからシンナー、果ては弗化水素までなんでもござれなのじゃ」
運営A☆「だから問題は物流だって!」
村人B「物流ねぇ……、僕とスノーさんが売人になって知り合いの子に売るとか?」
スノー☆「それって、わたくしたちが真っ先に捕まるやつではなくて?」
運営A☆「生娘のシャ〇付け戦略……」
村人B「なにそれ」
なお、素人がシンナーを販売すること、素人がポーション類の健康製品を販売することは前者が毒物劇取締法、後者が薬機法による処罰の対象である。エセ大日本帝国でも同様だ。




