感動のバットエンド!!! Yes! High! Dark!!
彼女は俺の隣で無防備にも寝ていた。
相変わらずかわいい。それはいつものことだ。
美しい桃色ブロンド髪はさらさらしていて、つい触りたくなる。
べとべとするからやめてといわれるので触りはしないのであるが。
最近の彼女は、ウィンドウシステムで《アプリ》などというアイコンを見つけ、それで日々楽しんでいるらしい。
彼女が暇をつぶせることは良いことだ。
どうやらダンジョン外とアクセスしているらしい。そのため魔王であるラララさまが来た。一体なにをやっているのだと小一時間おしおきをされたのは記憶に新しい。いかん、はげるかもしれない。胃液が胃を満たして喉まで溜まりそうだ。
「ねぇねぇ、ロダンくーん」
そんな彼女を見つめていると、急に見つめ返され、甘えた声で彼女が話しかけてくる。
この仕草は、またナニか厄介なことをいってくるときだ。
思えばあの男――村人Bとかいういけ好かない人物をダンジョンに連れてきたときとか。さらには、あの男と一緒に外食にいくとか。
ロダンは魔人だ。しかし魔人だからといって、嫉妬という感情がないわけではない。
まして彼女は、ロダンが全精力を掛けて育てた嫁である。そう、全ての精力だ。
そのようなアリスが別の男と外食などの事変が発生しようものならば、嫉妬に狂わないという方がどうかしているというものだ。あぁ。NTRとかされたらどうしよう。胃が張り裂けそうだ。ロダンはこの時ほど自分がダンジョンマスターで、ダンジョンの外に出られないことを恨めしく思ったことはない。
ダンジョンの入り口を勝手に繋いのだのはこの際良しとしよう。胃の痛くなる話だが、ラララさまに怒られたのであれば、そのうち繋がないといけなかったのだ。
いや、アリスも本当は出られないのだが、ダンジョンマスター権限で「スタンピード」を宣言すればできるのである。たった一人であってもだ。気に食わない外出であっても、アリスに「おねだり」されてしまえば惚れたモノのサガとしては許可をせざるを得ないだろう。あの甘い声で囁かれれば、だれであれ骨すら溶けて恋に落ちるのだ。
だがアリスが帰ってきたとき、ロダンは至高する。
おみやげのカルビ焼肉弁当は実に絶品だった!
あの量! にくにくしさ! そして蓋を開けた時に立ち込める匂い! すべてが最高レベルだ。
会いたかった! 掘りだそう、自然の力。カルビーー
ロダンはなぜ今まで生きてきてカルビ焼肉弁当という絶品料理に出会わなかったのかと不思議に思うほどである。それは、その後に訪れる、〇ちゃんやきそば弁当 いつもよりかなり辛めと同じくらいの衝撃であった。
なにしろ最近のご時世である。異世界の飲食店ではほとんどの店がテイクアウトを可能とするようになっていたのだ。ありがとうございます。
そして――何より。何よりだ。
アリスがその身に纏うピンク色のドレス風の服だ。
それはアリスのかわいらしさを10倍引き立てているようであった。その夜は100倍興奮せざるを得なかったのは当然のことであろう。
あの髪の色が変わるウィッグというものもまた新鮮で良い。
あの時ほど外出させて良かったと思わないこともない。
あの村人Bとかいうクソ男さえいなければだ。
今後、さらなる食べ物や飲み物、そして服も調達可能とのことだが、どうやってだろうか。
そういうものにはジュエルではなくダンジョン外で流通するお金が必要なはずだ。ロダンの心配の種は憑きない。心配で胃以降の臓器まで胃液で満水になるレベルである。
しかし他ならぬアリスからの提案である。全面降伏で挑むしかないのは既定路線だ。
それでもダンジョンマスターとして、多少の威厳を持って許可するのが、ロダン最後の矜持であった。
「ほら、この前秘密結社を作ったでしょう? 今度ソレのちゃんねるを作ってエセ動画配信サイトで配信をしようと思っているのだけどどうかなぁ? そのためにジュエルが必要なのだけれど、なんでも今なら運営Aさんによると放送するだけで収益化されてジュエルも回収できるのだって! それでね! 損益分岐点となる総合視聴時間が――」
アリスが何をいっているのかさっぱりロダンには分からない。だが得てして女性の会話などそんなものだろう(注:あくまでロダンの意見です)。
――が、とりあえずOKを出すというのが、ダンジョンマスターという上司としての器量なのだろうと、ロダンは思うしかなかった。
ロダンがそのことを猛烈に後悔するのは、その初配信の時になる――