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悪の秘密結社セヤロカーの知能担当?




「ふぅ……」



 自宅の自分に与えられた個室で、青白いウィンドウシステムのチャットを閉じたスノー・サウスフィールドはようやく息を抜いた。


 彼女にとっては緊張の連続であった。

 身体からの汗が止まらないほどに。

 会話を入力する手がぶるぶると震えるほどである。

 チャット自体、あまりするようなことはないのだ。

 不慣れながらも会話のタイミングに合わせてすぐさま応答しないといけないし、それでいて、入力した文字が間違っていないかも確認しないといけない。


 そう、スノーにとって、それはまさに一生を左右するようなことであったのだ。




(まさか――、まだダンジョンが生き残っていた、だなんて……)




 ダンジョン――、この異世界にモンスターという厄災を解き放つ存在だ。

 その代わりモンスターを倒せば経験点という名前の栄光を与えてくれる存在でもある。


 だが、当時のニンゲンたちは愚かにも経験点欲しさにダンジョンを徹底的にいじめ抜いた。最後の搾り汁まで経験点を抜き取るように。結果、ダンジョンは力尽きた。破壊されたのだ。そうして、ほとんどのダンジョンは失われてしまった。


 国や政府はダンジョンを天然記念物指定するなど、あらゆる手を尽くした。だがいくら保護をしようとしてもダンジョンは破壊されてしまう。人に欲望がある限り、異世界に住んでいるだれかが経験点を求めればそうなるのである。異世界転生者が持ちこんだ、チートな武器はそれを容易に可能としたのだ。

 たちの悪いことに、欲望を持ったニンゲンは(レベル)を得た。そうなれば彼らはどんな障害があろうと後はダンジョンの崩壊速度を加速させるだけである。




 だが、たった一つだけ残っていたのだ。そのダンジョンが。




 うまく管理すれば永劫に渡って利益をもたらすだろう。

 しかし、ヒトの欲望というのは尽きない。うまく管理しなければその欲望のまま、短期的にその最後のダンジョンは破壊されてしまうだろう。多くの人に知られるのは得策ではなかった。




(アリスさんのことを知らなかったら、わたくしだって喜んで見つけたダンジョンを壊していたかもしれない――経験点欲しさのために)




 スキルの力は強大だ。中には《剣術》などといったクズスキルもあるだろうが、適切にスキルを選べば富と名声は思うがまま。


 その代表的なものは《神聖魔法》や《錬金術》だが、例えば《鑑定》といった単純なスキルですら、膨大な富をもたらす。


 もしも科学分野で生成した薬剤の名称や効能が簡単に分かったら? 多くの時間や金の掛かる臨床試験等を頼らずにだ。するとどうなるか――、想像にたやすいだろう。


 もっと容易くスポーツについて考えよう。《野球》《サッカー》《ボクシング》スキルはどうだ? 選手であれば垂涎のマトという他はない。

 野球であれば、投手でホームランバッターなど一人二役的なことを簡単に実現化できるのである。一体どんな大リーガーだよと言いたくなる。そんな人材がいたら唯一無二となるに違いない。

 サッカーであれば、ストライカーでかつゴールキーパーなどという夢のようなことも実現可能だ。そう、英雄ディエゴ・マラドーナの神の手ゴールを彷彿とさせるゴールを連発できるようになるのだ。

 ボクシングであれば、アメリカボクシング界、いにしえのオープンブロー、ゴッド・サミング・フィンガーを放ち、世間に(とどろき)を与えることすらできるのかもしれない。



 およそアスリートであればだれでも欲しいスキルだろう。



 そんな夢の実現を、そんな欲望の塊を、どれだけのニンゲンが抑えることができるだろうか? ダンジョンなど見つかれば多くの人が見つけ出し――、破壊を試みようとするに違いない。




(だから、秘密を隠す必要がある)




 アリスさんはダンジョンで経験点をくれるという。

 だが単純に経験点をもらえばそれで終わりというものではない。

 経験点をもらえば、レベルがあがるのだ。

 レベルがあがったならば、どう隠すかということも考えなければならない。

 なぜなら、レベルアップしたことがバレてしまえば追及されるからだ。そうなればダンジョンのことが知れ渡るだろう。終わりだ。

 そうならないよう、おかしくないシチュエーション/ストーリーを作るしかない。


 ――例えば、市街各地にモンスターが突然現れて、偶然そこにいた人が倒すことで経験点を振りまくなんてどうだろう?


 モンスターが現れることで周囲の地域住民は多大な迷惑を被るだろう。だが迷惑の代わり、経験点が得られるならばむしろ喜ばれ、歓迎されるに違いない。

 木を隠すには森である。その中の一人に自分がいるのであれば怪しまれることはないだろう。




(そうだわ! いっそ正義の組織でも作れば良いのだわ)




 その後は――簡単だ。



 そんなモンスターを振りまくのは悪の組織、秘密結社セヤロカーである。

 そう悪の組織だ。そして、悪の組織に対抗するのは当然、正義の組織であってしかるべきだろう。

 スノーはそれを異世界人が作ったアニメで学んだ。

 事件があるたびにそこに首をツッコミ、モンスターを物理で倒してさらなる経験点を得る。周囲のケガ人に対しては取得した《神聖魔法》スキルで術式「治癒」かけて回れば完全無欠の女性ヒーローが誕生する。

 適当にモンスターを出現させる悪の組織に対し、正義の組織ならなにかの手段でその情報をキャッチすることは普通のことである。周囲は疑問を思わないだろう。


 経験点を配りたいヒトはたくさんいる。

 以前の学校にいるトモダチ――例えばキャロル・ルイーズなどだ。


(いっそ、彼女も巻き込もうかしら? かわいらしい衣装とかグッズもたくさん作って、毎週朝10時に放送されるようにマスコミとも調整して――























 帝国に笑みを振りまく正義の秘密結社、二人は帝微笑(ていえむ)とか――?)




がんばるスノー・サウスフィールドさんのためにも、誤字等あれば誤字報告機能で指摘をお願いします。あとブックマーク&★★★★★もほしーかな、なんて……

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