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異世界は発展しました(・ワ・)――魔物がほぼ滅びました――



 そうして、この小説が始まると大量の日本人がここ異世界に訪れるようになった。


 大量に日本人が異世界で集まって始めたこと。

 それは――、『健康で文化的な最低限度の生活』を送るための活動である。




 国民の最大義務。

 それは、納税、勤労、教育だ。




 だが納税するには勤労が必要である。

 この世界における勤労とは、そう、モンスター退治である。



 なぜならここは異世界なのだから。



 そう、ここは異世界なのだから、当然モンスターは跋扈している。


 そして異世界らしくステータスが存在し、魔物を倒すとレベルアップができる。

 「ステータス」と叫ぶとウィンドウが出てくることを考えれば、だれがどうみても王道ハイファンタジーだ。


 そう、レベルアップである。JRPG好きのニンゲンからすると、とてもココロが踊らないだろうか。


 まさに異世界万歳である。


 そうしてココロが踊った日本人は、とち狂ったようにモンスターを駆逐し始めたのだった。


 だが、いちいち彼らは剣を持って戦ったりするだろうか?

 確かに剣や魔法はココロ躍るものがある。

 しかし、そこらにいるガキとは違い、彼らの多くは大人であった。


 現実問題として、モンスターを剣で狩るような行為は肉体労働だ。

 そして、日本人といえばそれなりの教育を受けている。

 そう、あらゆる資格を持った日本人たちなのだ。


・電気工事士は電気を工事し、

・火薬類製造保安責任者は火薬を扱い、

・無線技術士は電波を発射し、

・毒物劇物取扱責任者は毒物を操る。




 そうなればやることは一つだろう。




 それは日本の科学力の結集である!

 いわゆる技術チートだ。




 複数の日本人が離合集散して複数のグループを作り出し、そして崩壊させると何が起きるか?


 そう造作もないのである。

①ハーバー・ボッシュ法を用いて無色透明の気体であるアンモニアを合成。

②ニトロ化して火薬の開発。

③旋盤を製作してバールのようなものからメタリックな鉄パイプまでなんでも加工。

④あまつさえ(ふっ)化水素でシリコンウエハーをエッチング。

――することなど造作もないのだ!


 そう、あのお隣の韓国では作業員ら5人が死亡し、住民ら四千人あまりが健康被害を受けたあの薬剤、(ふっ)化水素をも何の縛りもなく作れてしまうのである。


・敵は強大なモンスターである。駆逐してやる!

・肉体労働は嫌いだ。太刀? ハンマー? めんどくさい。

・過去の知識からいろいろなものが作れる。そう、いろいろな!


 その思想はまさにラリーウォールのプログラマー三大美徳(短気、怠惰、傲慢)の3点セットそのものであった。

 あらゆるモンスターを駆逐するために、船を作り、飛行機を作り、爆弾を作り、AKB-47やバルサミコフなどといった商標権に配慮した自動小銃を作り出すことなど、日本人にとっては造作もないことだったのだ――


・あの犬ですら歩けば棒に当たるがごとく。

・あのハトですら鉛入りの豆鉄砲で打ち落とされたときには愉悦の表情をするがごとく。


 まるで e-スポーツのようにモンスターをハンターする日本人たち。


 いくら武田軍が人類最強を誇ろうと、長篠の戦いで鉄砲で撃たれれば死ぬのだ。

 いくらモンスターが強大な(ちから)を持とうと、モンスターによって屈強な近接職の戦士たちが次々に倒れようと、銃を持ったニンゲンであればモンスターもはや敵ではない。鉄砲で撃てば死ぬのである。




 当時の首相はこう語る。




「たとえ伝説のトリであるハトであろうとも!


 だれであれ、鉄砲で撃たれれば死ぬ。

 それが豆ではなく鉛弾であればなおされだ。


 これ絶対の真理なりぃぃぃぃ~(ぴかぴかぴーん!)」




 異世界にとって思い込みとは重要である。

 思い込みの強さは時に科学力を超える存在となるのだ。



 え? でもそれって違法じゃないかって?

 確かに日本では代表的な法律である銃刀法違反に引っかかるだろう。


 そんなツッコミがくることは十分に承知している。


 でもね。




 異世界に、法律なんてないんだよ?





 最強の商標権にやさしい自動突撃銃バルサミコフが開発され、人々に拡散されて以後、人々の口からこんな言葉が漏れない日々はなかった。



「日本の科学力はぁぁぁぁ、せかいいちぃぃぃぃ~~」



「くぉりゃあああ。〇ねやぁぁ。くされ畜生どもぉぉがぁぁ!」



「鳴かぬなら、殺してしまえ、ホトトギスぅぅぅ」



 そんな暴言を吐きながら、異世界に来た人々は鉄砲だけには飽き足らず、対戦車砲、榴弾砲、レールガン、そして弾道ミサイルなど、アリとあらゆるものを生産していく。




 さらには、それを《錬金》《鍛冶》といった異世界のスキルが後押ししたのだ。

 そこに作れるものがあるなら――、彼らは作るのだ。

 その心理はそこに山があれば登る人と同じである。




 そうしてばりばりとモンスターを撃ち殺し、人々はレベル上げにいそしんだ。

 レベルが上がれば、生産系のクラスを持った人材はさらに高度なものを造り上げていく。ヒトビトはそれに歓喜した。














 そして気づけば。
















 大陸の平地にモンスターはいなくなっていた――





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