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胃がもたれていく




システム:アリス・ガーゼットが入室しました。




 アリスは某掲示板で知り合った人たちでグループを作りチャットをし始めるのだった。


 もちろん、ダンジョンマスターであるロダンには秘密である。


 自己顕示欲の強いアリスであるため、普段は掲示板のようなオープンな環境に書き込むことの方が多いのであるが、こうしてプライベートな空間で話すこともアリスは好きなのであった。


 アリスが風呂から返ってきた後にログインしたとき、チャットの会話はしばらく見ない間にずいぶんと進んでいるようだった――


村人B「ところで村人Aはどこにいった。村人Aは!」


運営A☆「あわれな村人Bよ。キミが俺に合わせてBにしたからBなのであって、村人Aなどいないのだよ」


村人B「ほほぅ。中の人などいないということか」


運営A☆「勘のいい男は嫌いだよ。だいたいキャラ名なんていつでも変えられるんだから好きに変えれば良いじゃないか。そんなに村人Aが良いなら、自作自演で村人Bと村人Aを交互に変えたって構わないぞ」


村人B「キャラが被るから嫌なんだよ。Aにしたら」



 村人Bはアリスの次に掲示板に書き込みをおこなったニンゲンで、その姿形は一切の謎に包まれている。このチャットの経緯は簡単で、運営Aがアクティブな話し相手として村人Bをアリスともども巻き込んだのだ。初めまともな応答をしなかった罪悪感もあったらしい。


運営A☆「いいじゃん! どうせキミはMOBでしょ?」


村人B「自分からMOBっていうMOBがどこにいるんだ。ここは異世界だろう! MOBでも話の展開により主人公となれる世界なんだ。僕は最強になるんだぁぁぁ! 俺TUEEEEー-」


運営A☆「はいはい。良かったね。良かったね」


村人B「むきー! 経験点さえあれば! 経験点さえあれば世の中無敵でハーレム作って俺TUEEEできるのにぃぃぃ。くやしぃぃぃぃー--」


 どうやら村人Bも自己主張の強いタイプのニンゲンらしい。

 あんな掲示板に書き込む位なのだから当然か。

 アリスは良い餌であると心の中で笑みを浮かべる。


アリス☆「あは☆ ならお金と住所教えるのじゃ。経験点とかがっぽがっぽあげちゃうのじゃ!」


村人B「本気で言っている? なにそれ怖い」


運営A☆「ならば俺からは強欲な高額のツボを売ろうではないか。キャッシュカードの番号と暗証番号を教えたまえ」


村人B「どこにこんなネットで個人情報を書き込むアホがいるのだ! だれが見ているかも分からないというのに」


運営A☆「いや、ここグループ用チャットで他の人は見えないようにしているけど?」


村人B「見えないようにしているといっても。どうせ暗号化とかしてないのでしょう? 盗聴でもされたら最悪じゃん」


運営A☆「いや、ちゃんと通信術式はHTTPsにして暗号化しているから大丈夫だぜ。そのあたりに抜かりはない」


村人B「HTTPs! SSL/TLS方式か。暗号化としては十分だな。十分かな? 下手に意味が通るのが困っちゃう」


アリス☆「ワシはガチャ産のモンスターなので、なにを言っているかさっぱり意味が分からないのじゃ。異世界人どもの喋る用語は同じ日本語なのにときどき分からないのが困るのじゃ」


村人B「あのー。ところでアリスさんはいつまでその『設定』を続けるのです? ダンジョンガチャ産の魔人の美少女で世界最強の錬金術師、かつのじゃロリ姫とか盛り過ぎでは?」


アリス☆「ふふん。キャラが立っとるじゃろう? 照れるのじゃ」


村人B「いや、別に褒めてないからね」


 ちなみに世界には世界最強陰湿AIとか、コアラに似ている悪魔とか、そう言ったいろいろな『設定』をするニンゲンは山ほどいた。いわゆるロールプレイである。


アリス☆「うむ。そういう設定ではあるが実は全部本当のことなのじゃ。名前も本名なのじゃ」


運営A「ちょっと待て。本名さらすのはやめたまえ」


アリス☆「え? でも調べれば分かるでしょう? その位は」


運営A「いやいや、分からんて」


アリス☆「それにサークル名と本名は同じにした方が良いって、某動画で言っていたのじゃ」


村人B「それなにか違わね? 別のネタと混同してね?」


運営A☆「うむ。だいたい名前なんて、まして本名なんてネットでちょっと書き込んだ位じゃ分からんやろ」


アリス☆「分かるのじゃ。簡単なのじゃ。掲示板で知り合った娘が言っていたのじゃ」


運営A☆「え? だれだよそんなこと言ったヤツは、それは運営的に由々しき問題だねっ☆」


アリス☆「別のチャットに今いるからその――呼んでこようか? なのじゃ」


運営A☆「けっ。来な! けちょんけちょんに論破してやるぜ。我が最強スキル《スタジオ》に抜かりはない! 全てのパッチ当てたし。欠かさず毎日アップデートしているし、それこそゼロディ攻撃とかされない限りは――」






システム:アリスがラララ・ベルフェをチャットに招待しました。


システム:ラララ・ベルフェが招待を承認しました。


システム:運営Aが入室を承認しました。


システム:ラララ・ベルフェは今後いつでもチャットに入室可能になりました。


システム:ラララ・ベルフェが入室しました。







村人B「は?」


アリス☆「本物です」


運営A☆「ん? 本物って?」


村人B「名前見て分からない? 魔王ラララといえば、言わずとしれたゴーストラリア魔王国の首相! そんな名前にする度胸のあるやつなんて今この異世界にいるわけないだろう! 下手すれば暗殺されるぞ。暗殺! ふんぎゃろー」


ラララ「いやしないだろう。拝殿のベルちゃんじゃあるまいし。さすがにその程度で――」


運営A☆「うーん。俺が日本にいたときは、ひろ〇きとか、ア〇シねとか騙るヤツは結構いたけどなぁ。あの人まだ総理だったりするのだろうか?」


ラララ「――ところで、なにやら私を論破したいという酔狂なヤツがこのチャットにいるとかいないとか? ははん?」


運営A☆「いや、掲示板に書き込んだだけで本名がバレるとかないぜ、とチャットや掲示板を作ったヤツが言っているのだ。ほら論破。そりゃ運営だから住所までならIPアドレスでtracertすれば分かるけどさ。リゾルバも簡単だ」


村人B「IPアドレスをトレースルートって、なにそれ怖い」


ラララ「ははは。この異世界を舐めて貰っては困るね。《鑑定》スキルって知っています? 結構簡単に読めますよ?」


 その書き込みの瞬間――、以後10分以上運営Aのチャット上の書き込みがなくなった。










アリス☆「あれ? この話どうなったのじゃ?」


運営A☆「ふぅ。掲示板上の俺の書き込みは全てdeleteしてきてやったぜ。あと暫定だが対策もな。大変だった」


ラララ「それは重畳(ちょうじょう)だな。すでに名前は抑えたけどな〇〇〇くん」


運営A☆「ぎゃー、個人情報書き込むなぁー。いくら魔王といえどBANするぞ。BAN。警告1だからな。警告1」


ラララ「いや書いてないから。〇〇〇って伏せ字じゃん」


村人B「大事なことだから2回言うやつ始めて見た」


運営A☆「うるせぇ」


村人B「あれ? ということはやっぱり本物なの?」


ラララ「アリスが世界最強の錬金術師かどうかは知らないけど、少なくとも私は《怠惰之魔王たる》魔王ラララ・ベルフェ本人だよ間違いないよ。だって本人が書いているのだもの。あとでその証明もしてやろうではないか(怒)」


 そのチャットの書き込みを聞いて。

 運営Aと村人Bはどう思ったのか。














 そう、彼らの胃は思わぬ人物の登場に一気にもたれていくのであった。





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