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ラストダンジョン



 このエセ大日本帝国ではモンスターは駆逐され、ダンジョンも完全に消滅してしまった。


 それはエセ大日本帝国だけではない。ゴーストラリア魔王国を除く全ての国がそうであった。


 ――かに思われていたのだが、ところがどっこい、唯一生き残っている最後のダンジョンはあった。


 それは、魔人ロダン・ガーゼットが有するダンジョンである。通称ガーゼットダンジョン。

 ロダンはルーミートと呼ばれる二足歩行ができるモンスターから進化した魔人であり、虹スキル《ダンジョンマスター》と《アイテムホルダー》を有していた。青みがかった灰色のもふもふした毛並みは、まるで可愛らしい小型のカンガルーのようである。


 ロダンはかつて主としていた魔王ラララに命じられ、2048あるダンジョンの一つを任されたのだ。今でも魔王ラララに会ったら頭があがらないが。

 しかし、その魔王ラララはすでに主ではない。小さなダンジョン資産を保有するダンジョンマスターは、独立した一国一城の国主であるのだ。知らんけど。


 多くのダンジョンが踏破され破壊されたあと、ロダンのダンジョンだけが残っていた理由は――あまりにもダンジョンが小さくてスキルで発見されることがなかったということもあったが、もっとも大きな理由は単純なものであった。



 彼は引きこもっていたのだ。ダンジョンに。



 そう、彼は何もしなかったのである。

 魔王ラララから拝領したダンジョンを放置してである。



 ダンジョンの入り口をどこにも出現させてすらいない。

 これでは人など来ない。ならば破壊のされようもない。


 これが功を奏したのだ。奏したのか?


 モンスターとは、ダンジョンマスターとは世界を恐怖に陥れるべく厄災を振りまく存在である。だが、そんなの関係ないといわんばかりに、ロダンは魔王ラララの言いつけも忘れ、引きこもったのだ。



 そんな風にロダンが狂った理由――それは、彼のもつ固有スキルが関係した。



 《アイテムホルダー》スキル

 いわゆる一つのガチャである。



 ロダンがダンジョンを拡張するために始めてダンジョンマスターとしての行動したある行為――それは当然にしてガチャだろう。自領を防衛するためにはモンスターは欠かせない。


 そんなロダンが《アイテムホルダー》スキルを使い。

 初めてのガチャを使っとき――


 彼の色欲を破壊する奇跡が起きた。運をそこで全て使い果たしたのだ。


 な、なんと!


 1連目のガチャで0.3%でしか排出しないSSR級の☆3キャラである、ちょー可愛らしい魔人の女の子をgetしたのであった。


 その魔人の女の子の名前をロダンはアリスと名付けた。


 興奮さめやらぬロダンは彼女と対等だと示すためにガーゼット家を起こす始末である。要は推しを嫁にしたのだ。


 それはまるで、天にも登るような気持であった。


「アリス! アリス! アリス! アリスぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ……ああ……あっあっー! あぁああああああ!!! アリスアリスアリスぅううぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ! クンカクンカ! スーハースーハー! スーハースーハー! いい匂いだなぁ…くんくん

んはぁっ! アリス・ガーネットたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお! クンカクンカ! あぁあ!! 間違えた!モフモフしたいお! モフモフ!モフモフ!神神モフモフ!カリカリモフモフ……きゅんきゅんきゅい!! アリスたんかわいかったよぅ!! あぁぁああ……あああ……あっあぁああああ!! ふぁぁあああんんっ!! 良かったねアリスたん! あぁあああああ!かわいい! アリスたん! かわいい!あっああぁああ! こんなアリスたんが俺の目の前にいるよ嬉し……いやぁああああああ!!! にゃああああああああん!! ぎゃああああああああ!! ぐあああああああああああ!!! こんなかわいい娘がガチャ産だなんて信じられない――」






 ――ごほん。





 とりあえずアリス・ガーネットたんの髪色は桃色ブロンドに決定した。本当は名前もルイ〇の方が良かった気がするが、そこまで合わせるのはさすがに躊躇われたのだ。そしてキャラ付けはのじゃロリ系美少女にした。語尾を変えないと、会話のときに誰が誰だか分からなくなって支障が出るのである。


 そう、これがここに桃色ブロンド髪の、のじゃロリ系美少女の爆誕した瞬間であった。ロダン用に病院も一緒に立てるべきだろうか?


 その後の彼の行動は単純だった。


 《アイテムホルダー》スキルを使ってモンスターを作り続け、彼はそれをアリスに討伐させることでアリスの育成に使った。むろんダンジョンを解放することはしない。アリスのためであればダンジョン育成が二の次になった瞬間であった。


 そんなロダンは恐ろしいことにトレーナーとして、とても優秀であった。

 その能力は、全戦無勝で有名になった競走馬を有馬記念で優勝させるほどの実力といえば分かってもらえるだろうか?


 こうして、アリス・ガーゼットはそれを当然のように受け止め錬金術師としてすくすくと性徴していく。――ここでアリスが《錬金術》を選択したのは、食料と生活を豊かにするためであった。ダンジョンを閉鎖して引きこもるには自給自足をする必要があったためだ。


「食料自給最優先!


ダンジョンより安定を!

人類滅亡より安眠を!

いっぱい食って、いっぱい寝て

遊んでヤろう


それで生物はみな幸せです!」


 こんな異世界でレビューするアニメ真っ青な感じで、ダンジョンを犠牲にして育成を一緒に楽しんだ魔人ロダンとアリスは、しかしとある問題を抱えていた。



 その問題とは――


 あぁ、なんということでしょう。



















 生活のまんねりである。



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