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もしもどんぐりがころころしたら



 た、大変なことが起きてしまった――




 もしも、どんぐりがごろごろして御池(おいけ)にハマったらどうなるだろうか?


 どんぐりの生後は約1歳だ。20歳前の傷病ということになるだろうが、どんぐりがころころするのは仕事であり、日雇労働被保険者になっているとすると、障害厚生年金の給付の対象になるだろう。


 だが、エセ大日本帝国は日本人と現地土着の住民が混在する国家である。


 約1億人いる実際の日本とは人数が違い、障害厚生年金の現金での給付をするには資金体制があまりにも脆弱過ぎた。


 現地住民からの反発は強く、いまだ国民皆保険にもなっていないのだ。


 だが、ここは異世界である。

 現金での支払いが厳しければ現物給付で完治させれば良い。

 そう、異世界の厚生年金保健は隙を与えぬ現物給付なのである。


 異世界ならばそれが可能なのである。

 なぜなら異世界には《神聖魔法》スキルによって術式「治癒」が使えるのだから。


 例えどんぐりがころころしてサウスフィールド王家所有の御池(おいけ)にハマり、障害の程度が1等級に当たる事態になったとしても、貴族の麗しき令嬢(?)たちで形成された都嬢(どじょう)部隊がいれば全ての傷病問題が解決する。まさに術式「治癒」さまさまだ。



 都嬢(どじょう)が出てきたらコンニチハ。

 ぼちゃんと一緒に「遊べ(ちゆすれ)」ば良いのだ。



 ウィンドウシステムで1つのスキルを得るために必要なスキルポイントはおよそ3つである。

 そして《神聖魔法》スキルを取得するのに必要なスキルポイントは3だ。つまり3レベルあれば《神聖魔法》スキルを得ることができるのだ。

 世の中には《剣術》やら《格闘術》などという肉体労働系のものを取る酔狂な筋能の志士もいるだろうが、働きたくない人たちにとっては希少なスキルポイントをそんなものに使うのはバカの極みであると考えががちである。


 《神聖魔法》スキルは素晴らしい。

 掛値なし、まさに神の奇跡である。


 例えどんぐりが、どのようにコロコロしてどんなに酷い傷病になろうとも、MPを消費すれば一発で治ってしまうのだ。死なない限りは。そして異世界人は天涯孤独の者しかいない。だから死んでも遺族年金給付は不要だ。


 大きな杉の木の下であなたとわたしが花粉症でも現物給付、休日のソフトボール大会でも会社主催なら現物給付、その給付対象は業務遂行性・業務起因性の如何に変わらずその内容よりも彼女たち部隊の忙しさで決まるという実にアバウトな支給方法だった。概ね好評。


 唯一認められないとするなら、台風や戦争などで大量のケガ人が多数発生することが見込まれる場合、都嬢(どじょう)部隊は忙しくなるのが確実なので業務起因性が認められないくらいである。ちなみに現実でも台風や戦争の場合業務起因性は認められない。なぜなら会社の業務と関係ないからだ。


 そう、地元の麗しき貴族の令嬢たちが主体で構成された都嬢(どじょう)部隊とは、傷病を減らすために治癒術式を掛けるため結成された部隊なのだ。それなら傷病[補償]給付金とかも不要になるので政府は大助かりである。そして令嬢たちもそのことで貴族として敬われるのだ。

 このエセ大日本帝国内における厚生年金に掛かる支出は都嬢(どじょう)部隊の人件費くらいで実にリーズナブルなのであった。こうして国民皆保険が実現されると、エセ大日本帝国内の基盤はますます強固なものになるのであった。


 それ以外にも、貴族たちには現代科学の米と呼ばれる「石油」を精錬する国家錬金術師の集団「土門機関(どもんきかん)」などが存在し、一定の評価を一般国民から受けている。


 現実の日本とは異なる、いわゆる石油魔導工学と呼ばれる分野である。






 だがしかし。しかしである。






 そんな有用なスキルがあるにも関わらずアホな日本人は一定数いた。

 アホなことをすることに掛けては全世界的な定評がある日本人である。



 そんなアホがネタに走ったら、一体どうなってしまうのか――





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