邪神に捕らわれた仏像はさらなる厄災を振りまく
「うぉぉぉ、ぶつぞぉぉぉぉー!」
突然動き出した大迷惑観音像に、地元住民は困惑する。
「あんな巨大な仏像相手にいったいどう対処すれば良いのじゃ」
「あぁ、恐ろしやー」
「大丈夫だ、九条が、俺たちの九条が守ってくれる―」
仏像は近隣の家々を破壊していく。
人々に畏れを与え、さらなる力を得るために。
だが地域住民は魔力など持たない存在だ。
どんなに家を破壊しようとも大迷惑観音像のレベルアップに繋がることはない。
それにも関わらず、童貞をこじらせたおっさんのように大迷惑観音像は家を壊しづ付けた。本当に迷惑だ。
ちなみに大仏って童貞だよな? だって像だし。
人々が絶望の闇に染まりかけたそのとき、大仏の前にある人々が現れた。
その青い制服の男たちとは?
ピーポーピーポー
その青い制服の男たちは、けたたましいサイレン音とともにパトカーと呼ばれる白地に黒のラインが入った車輛で一気に大迷惑観音像の付近を封鎖する。そのパトカーの頭にはパトランプと呼ばれる赤く光るものがぐるぐると回転していた。
その人々の職業とは警察官! その手にする武器は小型で真っ黒なニューセーブだ。商標権に配慮したやさしい回転式拳銃である。
パン・パン・パン!
乾いた音が広がり、大迷惑観音像に突き刺さる。
しかし、老朽化したとはいえ石像である。効くのだろうか?
――どうやら効いたようだ。さすがは銃である。
数発の鉛玉を受けた灰色の大迷惑観音像は轟音をたてて倒れた。
鉛色の銃痕からは恨みの黒い魔力が淡く沸き立つ。
「ぶ、ぶつぞー」
大迷惑観音像は吠えた。
だが――、その怒りは住民の方が大きそうだ。
「うるせぇ! この大迷惑観音が! ただの岩になりやがれ!」
そこに住民たちが近寄り、石をハンマーで殴りつける。
中には道路工事でドッドッドッドッドッと大きな音をたててコンクリートを破砕しているドリル、「コンクリートブレーカ」を手にして家を破壊された鬱憤を晴らそうという住民もいた。
その頭には黄色のヘルメット、ミドリの十字が輝く。
その結果――、多くの地域住民は経験点を得ることになる。
システム:大迷惑観音を倒した。
システム:イベントボーナス/経験点10点を手に入れた。
システム:あなたはレベル1になりました。
システム:あなたはレベル2になりました。
システム:あなたはレベル3になりました。
その大迷惑観音像の影響は、やがて世界にさらなる迷惑を及ぼしていくのだ――
ちなみに経験点を得るためと称し、世界各地に巨大観音像はさらに乱立した――