002. 森の中 ルーノダ村
狼を倒し、ステータスが上がった俺は、周りの状況を嫌というほど見渡す。
木々が倒れ、何と言えない有様となっていた。
魔術を放った時、感じたリングの光。これが反応した時、力はかなり制限されていたことがわかる。
何者かがこれを腕にはめ込み、そして俺を人間へと転生させた人物が同一人物で間違い無いと。
だが、これは憶測だ。ただの偶像に過ぎない。
取り敢えず、人に会おう。まず知識を得るには同じ種族の人間についてだ。
ステータス画面で種族が人間となっているという事。つまりは、神としてのデータがないという事だ。
それは分かる。痛感するほど。サジェスという単語はそのまま引き継がれている。
自分だっていうのがすぐに分かるのは、有り難い。
足を動かせ、狼の角を服に…。
今更ながらに気がついた。見た事ない服を着ている。服を着ているという感覚は分かる。
神界でも服は着ていた。だが、見た事ない服だ。殆どが布地だ。
だが、着やすい。動きやすいし、何より体に合っている。
足を進めていこう。先は先へと進ませると、何やら見た事ない場所へと辿り着く。
(何だ、ここは)
畑が存在し、ポツポツと存在する家。ここが村……と言うのか?
子供が元気よく遊び、それを見守る親。母親の腕の中で眠っている、小さな嬰児。
木を斧で割っている男。畑仕事をしている女子供。小さな村であると言うことは分かる。
最初に目を覚ましていた場所から近く、村が存在すると言うことは、ここで生まれたのか?
いや、そもそも生まれてきた時の意識がない。母親の顔すら知らず、父親だって誰だか分からない。
「おーい! ジャス! こっち来いよ!」
一人の男が誰かに向かって手を振っている。ジャスというのは誰の事か。
俺の近くに誰か子供がいるのか? そういう思いで当たりをキョロキョロしていると、その男は真っ直ぐと俺の方へとやってきて、俺の肩を叩く。
「何してんだ? ジャス」
(ジャスって、俺のことか?)
だが、ステータス画面には“サジェス”と書かれていた。ステータス画面が間違っていたのか?
いや、確実に“人間”と書かれていた。じゃあどういう意味なのか。
もう一度ステータス画面を開いてみることにした。
だが、何度見ても“サジェス”と書かれている。
この男が何かを間違えている?そう考えるのが妥当か。
「どうした? ジャス」
「全くあなた。いくら、知恵の神様、サジェス様と同じ名前をつけたとは言えど、きちんと名前で呼んでもらわないと。せっかく二人で考えたのよ?」
家が立っている方向から、赤子を抱いている女性が歩いてくる。
その人はどう見たって人妻だ。俺の母親となる存在か? と言うことは、俺の肩を叩いた人物は俺の父親となる存在。そして、俺の名前は知恵の神、サジェスからの名を頂いたと言っていた。と言うことは、名前はそのままでいいと言うわけだった。
(何だ、ただの考えすぎか)
憶測が外れ、俺はサジェスの名前そのものだと気づく。心底から不安になっていたが、ひとまずこの体が暮らしていた村へと辿り着く事ができた。
あとは、ここから何をすべきか。この体は何歳か。そしてこの村は何と言う名前か。父親と母親の名前だって知る必要があるだろう。
だが、まずは。身体能力を上げなければ。この体は妙に重い。軽やかにしなければ、色々と面倒事が起きそうだ。
魔物や魔獣に複数で襲われたりでもしたら、避けるのに一苦労。
(まさか、筋トレをする事になるとは思ってなかったが上等だ)
ついでに知恵も蓄えよう。人間界に必要となる知恵を。
魔術に関してはいいが、魔術を使えば魔力が減る。それを軽減する事だって必要になってくるかもしれない。
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【ルーノダ村】
サジェス・オールソン。
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