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第4-7話 襲撃者~幸せパワーVS不幸パワー~

 クロムたちは襲撃者と対峙する。


「誰だオメー。せっかくのパレードなのに邪魔すんじゃねぇよ。あんま調子乗ってっと官能小説の受けヒロインにすっぞ! ミラが」


「えー、この人を受けヒロインにするの? やだー」


「……おのれ! ふざけたことをぬかしやがって!」


 襲撃者はローブを脱ぐ。

 激怒した様子でスキルを使った。


「【分断結界】!」


 襲撃者を起点に結界が生成される。

 クロム、ルカ、アスタロトの三人は無理やり結界の外に押し出された。

 結界の中にミラとノアールが閉じ込められる。

 襲撃者はまずこの二人から倒すことにしたようだ。


「こいつはうちとミラ姉で充分だ」


「了解。頼んだ」


 実のところ、クロム一人でも【分断結界】を壊すことはできる。

 それほど力の差が開いていたため、襲撃者の相手はミラとノアールに任せることにした。


 クロムは司会進行の人から拡声器の魔道具を借り、市民たちに避難するよう伝える。

 襲撃者の仲間がいるかもしれないので、ルカとアスタロトと共に警戒役に回る。


「俺は真神郷徒(しんじんきょうと)のランスロット、人呼んで腐食のランスロット。お前らを倒す男の名だ。覚えておけ」


「え? 無職のダンスロボット?」


「踊って現実逃避してるの?」


「愚弄するな! 腐食のランスロットだ!」


「まあまあまあ、そんな怒らないでよ。短気は損気だよ^^」


「俺を馬鹿にするのも大概にしろよ。跡形もなく溶かしてやる」


 ミラとノアールはお得意の精神攻撃でランスロットを苛立たせる。

 ランスロットはポケットから謎のカプセルを取り出すと、ばりばりと噛み砕いて飲み込んだ。


「見せてやる、俺たちが作り出した魔薬(まやく)の力を! この力さえあれば……お前らを殺すには充分だ」


 ランスロットの体がメキメキと肥大していく。

 最終的に三メートルほどの巨体と化した。


「ぬうんッ!」


 ランスロットの掌に、紫色の禍々しい光が集う。


「喰らえ! 【呪塊腐食弾】!」


 巨大化した呪弾が放たれる。


 ミラとノアールが先ほどまで乗っていた馬車に着弾したと思ったら、あっという間に馬車が腐り溶けてしまった。

 さらにそれだけにはとどまらず、道路に敷き詰められていた石畳の一部まで溶けてしまう。


「どうだ俺の【呪塊腐食弾】の威力は!? 恐ろしいか? 恐ろしいよなァ!?」


 体の奥底からあふれ出る万能感にランスロットは酔いしれる。

 魔薬の効果はそれほどまでに劇的だった。


「あの威力なら私たちにも通じるね。まあ当たるわけないんだけど」


「もとはせいぜいAランク程度の強さだったのに、謎の薬飲むだけでSランク上位までパワーアップか。うちらには大したことなくても他の奴らからしたらとんでもねぇ脅威だろうな」


 ミラとノアールは冷静に状況を分析する。

 真神郷徒の持つ魔薬についての情報を大まかに把握することができた。


「この力さえあれば……! 俺を見下して馬鹿にしてきた連中を見返すことができる! 俺のほうがすごいのだと証明できる!」


「できないよ。ここで負けるし」


「うちらの引き立て役になってくれてありがとな!」


「ぐl……!」


 ここぞとばかりに煽られて、ランスロットは腕を振るわせる。

 その体から紫色の蒸気が発生した。


「この屈辱が俺を強くする……!」


「ドMさん!?」


「断じて違う! 俺の呪いの源は屈辱と劣等感だ。幸せな人間と常に苦しんでいる人間、どちらが強いかは明白だろう?」


「明白だな。お前(よえ)ぇし」


「なおも俺を愚弄するか! 骨の髄まで残さず腐らせてやる!」


 再び【呪塊腐食弾】が放たれる。


「いろいろウォール!」


 ミラが現実魔法で複数の魔法障壁を展開する。

 呪弾が壁を突き破って進んでいるうちに、側面から回り込んだノアールがハンマーでランスロットを殴り飛ばした。


「ぶごぉ!?」


「説明しよう! この武器はクソデカハンマー君といって、ただデカいだけのハンマーだ! BGMを流したりSEを鳴らしたりできる機能が搭載されているぞ!」


「手加減するにはもってこいだね」


「それ用で作ったからな」


「クソォ……! 手加減だと? ふざけるなっ……!」


 よろよろと起き上がったランスロットは、ミラを見て驚いた。


「なぜ生きている!? お前は確かに先ほどの攻撃を防げず死んだはず……」


「ああ、あれ分身だから。私が分身できるのは伝わってると思ったのになぁ~」


 ミラは少し考え込んでから、ひらめいた様子でポンっと手を叩いた。


「さては君あれでしょ? 自分なら勝てると思って下調べも何もせずにやって来たんでしょ?」


「計画性なさそうな顔してるもんな」


「ぐ……っ! おのれぇ……!」


 ランスロットは最後の切り札とばかりに【呪塊腐食弾】を巨大化させていく。


「これで終わらせてやる!」


「なら、最後にいいことを教えてあげよう。幸せになるコツはね、幸せのハードルを下げることだよ」


「今日は天気がよくて幸せだな~。ルカがいるだけで幸せだな~。呼吸してるだけで幸せだな~!」


「黙れ!」


 ランスロットが【呪塊腐食弾】を放つ。

 極大の呪弾が二人に迫った。


「私たちは幸せのハードルが低すぎて地面に埋まってるから、いつも元気で楽しくいられる」


「一分一秒が幸せなら、お前の言う不幸パワーに負けようがねぇんだよ」


 ミラは現実魔法による魔弾を。

 ノアールはブラスターを撃つ。


 両者の攻撃がぶつかり合い、爆ぜて消えた。


「うちら」「私ら」


「「幸せでぇ~すっ!!!」」


「ぐぼがぁぁぁぁぁ!?」


 ミラとノアールによるダブルアッパーが炸裂し、ランスロットは派手に吹き飛んだ。






◇◇◇◇



 Sランク昇格式の最中に真神郷徒が襲撃してくるというハプニングが起こったものの、ふたを開けてみれば人的被害ゼロの完全勝利に終わった。


 ミラが戦いの際中に「自分なら勝てると思って下調べも何もせずにやって来たんでしょ?」と言っていたが、本当にそうだったのか他に襲撃者は現れなかった。


 そして、肝心の襲撃者は戦いが終わった後に死んでしまった。

 ミラとノアールの攻撃は意識を奪っただけで致命傷になっていないにもかかわらず、体がボロボロに崩れて息絶えた。

 これが魔薬の副作用なのか、ただ単に一度に摂取しすぎた反動なのかはわからない。


 とにかく、襲撃者を捕縛して情報を吐かせることはできなかった。


 Sランク昇格式のほうについては、もしものことを考えて予定より早めに終了することになった。

 残念ではあるものの、しょうがないだろう。


 こうして俺たちがSランク冒険者になった翌日、王国を揺るがすニュースが飛び込んできた。




 『魔王が誕生し、街が一つ消えた』という情報が。




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