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第4-6話 Sランク昇格式

 いよいよSランク昇格式が始まる当日。

 俺たちは気合いを入れて身だしなみを整えていた。


「どうかな? 似合ってるかな?」


 ルカがはにかみながら聞いてくる。

 いつもはボブヘアのルカだが、今日は可愛らしいリボンで結ってサイドテールを作っていた。

 ヘアセットをしたのは安心安定のミラらしい。


「ルカは今日も可愛いな」


「な~。ルカてぇてぇ」


「とてもよく似合っていますよ」


「ルカが一番可愛いんだから」


「えへへ、みんなありがと!」


 ミラもまた、サイドに編み込みを作ってみたりといつもより手間をかけてオシャレしていた。


「ミラ様も素敵です!」


「いつも褒めてくれてありがとね! アスっちも美人さんだよ」


「……そ、そうでしょうか。嬉しいです」


 表情はクールなままだが、どこか頑張ってクールさを維持しているように見えた。


「へー。ふーん。ほーん?」


 ノアールが俺の裾をちょんちょんとつついてくる。


「これってそういうことなのか?」


「確信は持てないが可能性はありそう。ってか、前から俺も気になってた」


「なんかミラ姉にだけ当たり違うよな」


「わかる。ミラにだけ様付けしたり、明らかに俺たちの時より態度が優しかったりするよな」


 ノアールと小声で話していると、ミラとの会話を終えたアスタロトが睨んできた。

 この話はこの辺でやめにしとこう。

 ピーマンの刑に処されてしまう。


「あ、そういえば昇格式用の決めポーズを考えたんだった」


「そーいやそうだったね」


「……あれですか」


 ノアールとミラが思い出したように言うと、アスタロトが嫌そうな表情をした。

 どうやら昨夜に考えたらしい。

 何も知らない俺とルカは見せてもらうことにした。


「煽りカスのミラ!」


「毒舌のアスタロト!」


「ガヤのノアール!」


「「「三人そろってメンタルブレイカーズ! 君の心を壊しに()せ参上!」」」


「また新たな厄災が誕生してしまった」


 ……うん、ポーズはカッコいい。

 ポーズだけは。


「セリフは変えたほうがいいと思う」


 ミラは相手の嫌がるところを的確に煽ることができるだろう。

 アスタロトの容赦ない毒舌正論パンチは口撃力(こうげきりょく)高めだ。

 ノアールはなんかいい感じに乗っかって相手のストレスを加速させそう。


「確かに精神攻撃においてメンタルブレイカーズの右に出る者はそうそういなさそうだけどさ。それだと俺たちがねちっこい陰湿嫌がらせ集団みたいなイメージになるくない? ついでに言えば、同じパーティーにいるルカまでそんなイメージになってしまうくない?」


「それはいけませんね。ルカには明るいお日様のようなイメージのほうが相応しいですから」


「ほなやめるか」


「やめよっか」


 ルカのブランディングの話をすると、水を得た魚のようにアスタロトが食いついてきた。

 嫌々付き合っていたんだろうな。


「それじゃあ行くか」


 準備万端だ。

 俺たちは意気揚々とギルドに向かった。




 ギルドについた俺たちが扉を開くと、大量に集まっていた冒険者たちが一斉に話しかけてきた。


「「「「「Sランク昇格おめでとうございまぁぁぁぁっす!!!」」」」」


「最速でのSランク到達マジカッケェっす!」


「自分、暴虐メイドさんのファンです! よければサインしてもらってもいいですか!?」


「お前やめとけって。……街路樹にされるぞ」


合同依頼(レイドクエスト)で戦ってるところ見たけど、最強無双って感じだった! Sランクも納得だな!」


「これからも応援してます! 頑張ってください!」


 まさかここまで盛大に祝われるとは思っていなかったから素直に嬉しい。

 嬉しいのだが……お祝いの言葉の中に変なの混じってたな。


「また何かやったのか、アスタロト」


「街でいきなり酔っぱらいにセクハラされたので花壇に生やして差し上げただけです」


「お前いっつも酔っぱらいにセクハラされてんな」


「その認識のされ方は不本意です」


 こうして冒険者たちから好意的に迎えられた俺たちは、パレード用の豪華な馬車に乗って王都を巡る。

 パレードコースの周囲にはたくさんの市民たちが集まって歓声を上げていた。

 こんなにもたくさんの人たちに喜んでもらえるなんて少し恥ずかしいな。


 俺は隣を見る。


 ルカは恥ずかしそうに照れながらも喜んでいた。

 アスタロトはいつものようにクールなまま。

 ミラは両手を振って大喜びしている。

 ノアールは、自分が祝われているわけではないのになぜか一番はしゃいでいた。


「続きまして、国王陛下より祝辞です」


 王都の広間に着くと、国王様が待っていた。

 群衆が一瞬にして静かになる。

 国王様は椅子から立ち上がると言葉を述べ始めた。


「本日を以って、冒険者クロム、ルカ、ミラ、アスタロトの四名を新たなSランク冒険者に認定する! 彼らは先日の王都襲撃事件で主犯格である上位悪魔(アークデーモン)を打ち倒し、見事王都に平和をもたらした! その栄誉を、数十年ぶりとなるSランク冒険者の誕生を盛大に祝おうではないか!」


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」


 群衆がこれ以上ないくらいに盛り上がる。

 その時、俺は悪寒がした。


 ……ほんの一瞬、たった一瞬。

 だが、確かに感じた。

 悍ましい何かが脈動し始めたような……。


「感じたか? 今の」


 俺が尋ねると、みんな静かに頷いた。

 どうやら俺の感覚は確かなようだ。


 この場にいて気づけたのは俺たちのみな様子。

 いったいなんだったのだろうか……?


「続いて、Sランク冒険者となったクロム様御一行にコメントをしていただきます!」


 前日にギルマスから伝えられていた一言コメントタイムが始まる。

 先発は俺だ。

 司会進行の人から拡声器の魔道具を受け取った。


「この度Sランク冒険者に認定されましたクロムです! 王国を守る砦としてこれからも尽力して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします!」


 俺がコメントを終えると、群衆から拍手が鳴り響いた。

 緊張して当たり障りない感じになってしまったな。


「ルカもこの王国を照らす太陽のような存在になれるよう頑張りますっ!」


 どうやらルカは自分なりに冒険者としての目標を見つけたらしい。

 人の役に立ちたいという思いの強いルカらしい、いい目標だ。

 明るいルカなら絶対に太陽のような存在になれるだろう。


「Sランク認定あざまーす! 頑張りまーすっ!」


 ミラは雑に済ませた。

 ちゃんとした場で適当なところが彼女らしい。


「Sランク冒険者に認定されたこと、至極光栄にございます。(わたくし)にセクハラしてきた者は容赦なく処しますのでご留意ください」


 俺と同じ方向性のコメントかと思ったら全然そんなことなかった。

 こういうこと言うから暴虐メイドなんて呼ばれるんだよ。


「えー、うちの名はノアール!」


 なぜかSランク冒険者になっていないノアールまで喋り始めた。


「今はまだAランク冒険者だが、すぐにうちもSランク冒険者になるぜ! 昨日の登録試験を見てくれた人ならうちの実力を理解していることだろう! 今のうちに『あいつは必ずSランクになると確信している』とか言っとけば後でイキれるから、みんなどしどし言ってくれよな!」


「どういうコメントだよ」


 思ってたほど拍手は起こらなかった。

 ノアールはしゅんとした様子で引っ込む。

 昨日冒険者になったばかりだから知名度が低いのはしょうがない。


「つ、続きまして……」


 司会進行の人が苦笑いしながら進めようとした時だった。


「続きなどない。お前たちはここで死んで終わることになるのだから」


 黒いローブに身を包んだ怪しい男が、俺たちのいる馬車に飛び乗ってきた。


 目立ちたがりの迷惑人間……ではなさそうだな。

 明確な殺意を感じる。


 いきなり現れた襲撃者に、群衆たちがどよめいた。



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いつも読んでくださりありがとうございます!
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