第4-4話 ノアール参上!
ダークによる王都襲撃事件を解決した報酬として、俺たちは古代魔道具を手に入れた。
ので、家に帰るなりさっそく【キメラ創生】を発動した。
これまでの経験則だが、【キメラ創生】は何を素材にするかによって誕生する魔物の方向性が決定される。
狼の魔物素材と炎の魔石をベースにしたルカは、獣人の外見をした炎狼の魔物に。
ドラゴンの魔物素材と【催眠術】を使う蛇の魔物の魔石をベースにしたミラは、搦め手が得意なドラゴンに。
メイド服と大剣と悪魔召喚の禁書をベースにしたアスタロトは、大剣使いのメイド悪魔に。
それぞれの種族や戦い方などに素材の情報が反映されているのだ。
古代魔道具を素材にすれば、おそらく機械などメカニックな能力を有した魔物が誕生するんじゃなかろうか。
「【キメラ創生】、発動!」
俺は魔法陣に古代魔道具を投入する。
スキルを発動すると、魔法陣からまばゆい光があふれた。
ほどなくして、光の中に気配が現れた。
強力な気配だ。
俺たちと同じくらい……少なくとも竜王級はあるだろうな。
「ようやくうちの出番が来たようだな!」
「まだだよ」
「じゃあ帰るわ」
「ばいばい」
「いや、引き留めて?」
光が晴れる。
四人目のキメラの姿が明らかになった。
スパイラルパーマの金髪ショートヘア。
切れ長の青い瞳。
特徴的なギザギザの歯。
シャープな輪郭。
身には黒のロングコートを纏い、ネクタイを緩めにつけている。
身長は俺と同じくらいで、十七歳くらいの見た目をしていた。
アスタロトとはまた違ったタイプのカッコいい系ビジュアルだな。
アスタロトはクールカッコいいタイプだが、新キメラはボーイッシュなイケメン女子って感じだ。
「うちの名はノアール! これからよろしくな!」
「俺はクロムだ。よろしく」
「おう。今度一緒にロマン武器作ろうぜ!」
ノアールもぐいぐい来るタイプか。
ミラと相性よさそうだな。
それはそれとしてロマン武器作るのは楽しそう。
「私はミラだよ。仲良くしようね、ノア!」
「んじゃミラ姉って呼ぶわ」
「好きなだけ呼びたまえ。妹よ」
「ミラ姉!」
やっぱこの二人相性よさそうだな。
一瞬で距離が縮まってたわ。
「ルカはルカだよ。ノアールのことノアお姉ちゃんって呼ぶね!」
「うわ、効く~。ルカのノアお姉ちゃん呼びたまんねぇな。もっとくれ」
「ノアお姉ちゃん!」
「へへほほほほへ」
「どういうリアクションだよ」
変な笑い方はともかく、ノアールもルカの可愛さに心を撃ち抜かれてしまったらしい。
今日からお前もシスコンだ。
「私はアスタロトと申します。よろしくお願い致しますね」
「今日からオメーはうちのライバルだ」
「はぁ……」
なんでだよ。
何をもってライバル認定したんだ。
よくわからないが、とにかく仲間が増えた!
「ノアールの種族は戦闘型機械人か」
「おうよ。今は人工皮膚によって人間と変わらねぇ見た目してるが、本当の姿はロボットなんだぜ!」
「「ロボット……!?」」
ロボットというワードに反応した俺とルカは目を輝かせた。
「ロボットっぽいことできるの!?」
「ふっふっふ。可変式パーツを組み合わせれば変形合体だって出来ちゃうぜ!」
「「うおー! 変形合体!」」
「何がそんなに面白いんだろうね。ロマンってやつ? やっぱり私にはわからないや」
「ですね。私たちはスイーツトークでもしときましょうか」
「だね」
相変わらずミラとアスタロトは冷めてるな。
ロマンはいいのに。
「変形合体見せてほしいな~!」
「俺も見たいな~!」
「それは本番でのお楽しみだぜ! こういう時はまずあれだろ? 冒険者ギルドに行くのがテンプレだよな。うちの実力お披露目は登録試験的なやつでだ」
冒険者ギルドに行くのがテンプレはよくわからないが、どの道ノアールには冒険者登録してもらう予定だった。
戦うところ早く見たいし、すぐにでもギルドに行くか!
「うちが一番乗りだぜぇ~! ひゃっほーう!」
ハイテンションで一番に家を飛び出していったノアール。
彼女を追いかけるように俺たちも家を出る。
真っ先に飛び出していったノアールがギルドの場所を知らなくて迷子になるというひと悶着が合った後に、俺たちはギルドにやって来た。
「頼もー! 冒険者登録オナシャース!」
「こちらのノアールの冒険者登録をお願いします」
受付嬢さんに頼むと、ほどなくしてギルマスが出てきた。
この流れ前もあったな。
「またクロムが連れてきたのか」
またって……。
俺何もやってないのにやらかしたみたいになってるんだが。
「登録試験を行ってもらうことはできますか?」
「ああ、大丈夫だ。登録試験用の魔道具が新たに導入されてな。いつでも登録試験が行えるようになったんだ」
「新しい魔道具の導入ですか」
「最近、大型新人が現れて試験官じゃ相手にすらならないことがあったからな。あ、大型新人ってのはお前が連れてきたやつのことだぞ」
「ああ、はい……」
アスタロトのことか。
あの時は一瞬で勝負がついてしまったもんな。
「ついてこい」
試験場に案内される。
新Sランク冒険者の仲間が受験するからか、観客席にはかつてないほど冒険者たちが集まっていた。
「これがその魔道具だ」
ギルマスはそう言って、水晶のようなものが埋め込まれたオーブを用意する。
「この魔道具に魔力を込めると、その魔力量と質に応じた強さの魔物が出現するんだ。試験官の手に負えないほど強い受験者が現れた時に使うことにしている」
「ノアールが手に負えないほど強いことは確信してるんですね。まだ何も言ってないのに」
「だってお前が連れてきたやつだからな」
信頼のされ方が謎すぎる……。
まあ話が早いからいいか。
「で、クロムに一つ頼みがある。この魔道具に魔力を注いでくれないか? それなりに強い魔物を生み出すためにはかなりの魔力がいるわけだが、俺は今魔力が少ないんだ」
「了解しました。では……」
俺は魔道具に手をかざす。
魔力を注ぎ出すと水晶の部分が輝き出した。
……というか、いまさらだが魔力はどれくらい込めればいいのだろうか。
込める魔力量と魔物の強さの法則を知らないんだよな。
「とりあえず込めすぎないように注意して……」
と思ったのだが、進化によるパワーアップで俺も竜王級相当の魔力量に達していたからか、いつも通りの感覚で込めたにもかかわらず予想以上の魔力を注いでしまった。
水晶がこれでもかというほど強い光を放つ。
「おいおいおい! どんだけ魔力込めたんだ!? ここまでの光は見たことないぞ!」
「すいません、やりすぎました」
……だが、魔道具程度でとんでもなくヤバいのは出てくるわけがない。
周囲の人たちを巻き込まないように結界を貼ってから倒せばいい。
「ピィィィィヒョロロロロロロロロロロ!!!」
魔道具の光が収まるのと同時に、頭上から甲高い鳴き声が響く。
試験場の真上に、虹色の羽をもつ巨大な炎鳥が現れていた。
「あの神々しい魔物はまさか…………フェニックスか!?」
「そのようですね」
フェニックス……Sランク最上位にして、“不死鳥”の二つ名を持つ魔物。
Sランクの中でも最強と謳われる存在。
王都襲撃事件の時の俺たちだったら、全員がかりで倒せるかどうかといったレベルの強さだ。
「うちのデビュー戦にもってこいな相手じゃねぇか」
ノアールは不敵な笑みを浮かべながら腕を鳴らす。
「大丈夫……なのか?」
「もちろんだ。安心して見てな」
不安そうなギルマスに声をかけてから、ノアールはフェニックスと対峙した。
「おーし、やったるぜ! かかってこいやァ、焼き鳥野郎!」





