第4-3話 進化~竜王級~
ハイリッヒ侯爵家との決別を終えて、屋敷まで戻ってきた俺たち。
ミラを解呪したことによって進化ができるようになったので、夕飯の前に全員で進化することになった。
ちなみに進化自体は上位悪魔を倒した後に可能になっていたぞ。
「ルカたちの今のランクがSだよね。進化したらどうなるのかな」
「最低でもSランク最上位には行くと思う」
「ってことは、それ以上になる可能性もあるってことだよね?」
魔物のランクは最下位からF~Sランク。
Sの上が竜王級、その上が崩星級、最上位が邪神級となっている。
「もしかしたら竜王級に到達するかもな」
「竜王級……世界でも数えるほどしか存在しないと言われているランクですか」
「届くといいなぁ。……ひとまず進化してみよっか!」
ミラの体が淡い光に包まれる。
ワクワクした様子で進化し始めたミラに続いて、ルカとアスタロトも進化を開始した。
みんなの体が光に包まれること数十秒。
無事に進化が完了した。
「わお……! 思った以上に強くなってるっぽいね」
「ん、体の奥から力がみなぎってきてる!」
「これが進化ですか。気分の高揚と万能感が凄まじいですね」
進化を終えた三人は、外見こそ変わっていないものの纏う気配が濃密になっていた。
存在圧がSランクの時より格段に強くなっている。
「種族はルカがインフェルノウルフ、ミラが夢幻竜、アスタロトが大悪魔だな。三人とも竜王級だ」
そして俺もまた、【キメラ創生】の効果によって竜王級レベルまで強化されていた。
ルカたちがSランクになった時にも思ったが、【キメラ創生】の成長チートっぷりがすさまじいな。
「ねえねえ、あれなんだったっけ? エクストラスキルの上のやつ」
「“究極スキル”のことか?」
「そう、それ。私たち竜王級になったわけだけどさ、誰か究極スキル使えるようになった? ちな私は無理」
「いえ、私も使えませんね」
「ルカも無理~」
究極スキルは勇者の物語に登場する、最上位のスキルだ。
現状使える人間や魔物が確認されていないため空想上の存在だと思われているが、果たして本当に存在するのだろうか?
竜王級になっても手掛かりが全くつかめないあたり、存在したとしても雲の上なのだろうな。
◇◇◇◇
ルカたちが進化して竜王級に到達した翌日。
俺たちは国王様の下を訪れていた。
ダークの王都襲撃事件を解決した報酬をくれるというのが要件らしい。
「先日の活躍は見事であった。其方らが迅速に対処しなければ、被害は著しく大きくなっていたであろう。大変感謝する」
「お褒め頂き光栄にございます」
という形式的なやり取りをしたのちに、報酬の話になった。
「今回の報酬は宝物庫の中から好きなアイテムを五つ持っていくといい」
「よろしいのですか!?」
宝物庫……文字通りお宝を仕舞うための倉庫。
当然中には貴重なアイテムがいくつも眠っている。
それを自由に持っていっていいと言われたのだから驚いてしまうのも無理はない。
「今回はそれだけの活躍をしたということだ。遠慮せんでいい」
「……では、ありがたく頂戴いたします」
俺たちは国王様の案内で宝物庫に移動する。
ほどなくして、重厚な扉にたどり着いた。
普通の扉じゃないな、これは。
鍵の部分に謎のパネルがついている。
おそらくセキュリティを強化するタイプの古代魔道具なのだろう。
『……ピピピ……パスワード合致。生体認証クリア……扉のロックを解除します』
国王様が何かしらの操作すると、パネルからロック解除の音声が流れる。
扉がゴゴゴゴゴと音を立てながらゆっくりと開いた。
仕組みはよくわからないが、すごいことは間違いない。
「この扉は特定の者しか開けられないようになっておるんじゃ。さあ、好きなものを選ぶといい」
「ありがとね~、こくおーさま!」
いの一番にミラが宝物庫にかけこむ。
続いて俺たちも宝物庫に足を踏み入れた。
「予想以上にたくさんあるな。……この中から五つか」
「うわ、迷う~。どれにしよ」
「決めづらいね」
「では、選ぶアイテムの方向性を絞りましょうか」
俺たちが悩んでいると、アスタロトがそんな提案をしてくれた。
なるほど、いいなそれ。
「アイテムを選ぶ条件として必須なのは、こちらの戦力増強につながることです」
「そうだな」
となると、武器や防具の類いは候補から外れる。
竜王級に到達した現在、強力な防具より自前のフィジカルのほうが強いからな。
武器に関しても、俺の魔剣アロンダイトやアスタロトの大剣のほうが性能がいい。
特殊効果のある装備であれば一考の余地があるが、国王様に尋ねたところ有用そうな効果を持つ装備はなかった。
これで装備品は候補から外れたな。
「魔道具はどのような効果を持つのか判明しているのでしょうか?」
「うむ。専属鑑定士に調べさせたからな。概ね把握できておる」
国王様はそう言って、魔道具の効果を説明してくれた。
ある程度までの状態異常とケガを完全に回復してくれる宝珠。
使用者を毒状態にする宝石。
一発限りだがそれなりに強い魔法を放てる魔石、などなど。
俺たちができることの下位互換か、役に立たないようなアイテムしかなかった。
どれもパッとしないな。
「魔道具もダメとなると、残るのは古代魔道具くらいじゃな」
「効果は判明しているのですか?」
「いや、古代魔道具に関しては一切不明のままじゃ。とりあえずで宝物庫に保管されているんじゃよ」
古代魔道具。
はるか昔に作られたこれらのアイテムは、通常の魔道具よりも強力な効果を有していることが多い。
効果が判明していない以上、本来の用途で使うことはできないが……。
「【キメラ創生】の材料にするのはどうだ?」
強力なアイテムである古代魔道具であれば、キメラの材料にピッタリだ。
「いいねそれ! 魔道具とかなんかそういうのに詳しい子ができそう!」
「ルカたちとはまた違った感じになりそうだね。面白そうだから賛成ー!」
「私も賛成です。古代魔道具の中でも高性能そうなのを見繕いましょう」
俺の提案は満場一致で受け入れられ、古代魔道具を手に入れることができた!
金属でできた謎の機械っぽいもの。
ミスリル製のなんかすごそうなやつ。
よくわからんけどめっちゃ強そうな武器タイプの古代魔道具。
今回の進化を通して俺も強くなった結果、再びキメラを作れるようになった。
帰ったらさっそく古代魔道具で【キメラ創生】するか!





