第3-40話 因縁決着
「遅かったじゃねぇか」
俺の姿を確認したダークは、ミラを殺そうとした時とは打って変わって狂気的に笑う。
まるで俺以外には興味がないというかのように。
「一対一で殺り合おうぜ、クロム。【ドッペルゲンガー】、からの闇結界」
ダークの分身体が二体現れる。
次いで発動した結界が、俺たちを分断した。
俺はダーク本体と。
ルカとアスタロトはダークの分身体と。
それぞれが一対一で戦うことになった。
「【ドッペルゲンガー】はなぁ、俺とほぼ変わらねぇ強さの分身体を作ることができる強スキルだ。あいつらの命はもう終わりだよ」
「揺さぶりをかけたって無駄だ。今のルカとアスタロトなら分身体ごときに負けはしない、絶対にな」
俺はあの二人を信頼している。
あの二人もまた俺を信頼してくれている。
俺は俺のすべきことをするだけだ。
「ミラとアスタロトを傷つけてタダで済むと思うな」
「チッ、御託はいい。始めようぜ」
一瞬の静寂。
俺とダークは同時に動いた。
「「【閃光斬】!」」
無数の斬撃が交差する。
剣を振り終える。
ダークの全身に斬撃が走った。
「…………は……?」
ダークは信じられないと言った様子で呟く。
「……俺が……後れを取った……? クロムに……? ……俺のほうが強いはずなのに、正面から斬り合って負けた……?」
「いくら才能があって強くても、借り物の力に……感情に振り回されてるだけのお前は大したことないんだよ、ダーク」
「あり得ない……! あり得るはずがない!」
ダークは唾をまき散らして叫びながら斬りかかってくる。
キレのない攻撃。
剣術のけの字もない雑な剣筋。
「【纏衝突き】!」
「隙だらけだ」
「がッ!?」
ダークの突きを躱した俺は、【硬度上昇】で強化したアロンダイトで殴る。
ダークは吹き飛んでいく。
地面を何度もバウンドしてようやく止まった。
「お前はここで終わりだ。貴族として……人として越えちゃいけない一線を越えてしまったんだ」
「テメェを殺すためならなぁ! カス共が何人死んだって構わねぇんだよっ!」
なおもダークは斬りかかってくる。
相変わらずヤケクソな剣筋だ。
俺は軽く往なす。
「クソ……! クソォッ!」
ダークは破れかぶれに闇魔法を放つ。
俺は黒炎を纏った剣で闇を斬る。
一気に肉薄し、もう一度ダークを殴り飛ばした。
「ぐぼがぁ……ハァ……ハァ……。クソッ!」
ダークは吹き飛ばされた先で、地面を強く殴りつける。
その時、闇の結界が破壊された。
「リベンジ成功です!」
「ルカもやれたよ、クロムお兄ちゃん!」
結界の中からルカとアスタロトが姿を現す。
二人とも軽いケガを負っていたもののピンピンしていた。
ダークの分断作戦は失敗に終わった。
俺たちが圧倒的に優位だ。
ダークに勝ち目はない。
「大人しく諦めてくれ、ダーク」
「くそ……クソ……クソっ……! クソォッ! ふざけんな! ふざけんなぁぁぁぁあああ!!!」
ダークは頭を掻きむしりながら立ち上がる。
……すごい執念だ。
だが、お前が罪を償うつもりがないことは……わかりきっていたよ。
わかりきっていたから……もう準備はしてある。
「【闇同化】──百%!」
剣先に闇が収束していく。
「──死国!!!」
出来上がった暗黒球を、ダークは誰もいない方向に放った。
超火力の一撃が炸裂するが、当然俺たちには一ダメージも与えられない。
「ハハハ! 今度こそ死んで……あれ……?」
一人で勝手にぬか喜びしているダークに向かって、ミラが絶望を告げた。
「ダーク、君が狙ったクロムはただの幻影だよ。クロムに勝ちたいという君の夢は、所詮ただの幻だったんだよ。叶いはしない」
ミラの援護が刺さった。
前線から撤退することでダークの思考から自身の存在を忘れさせ、ここぞという時に援護する。
慢心しやすいダークの性格を利用したミラの作戦勝ちだった。
「このクソドラゴン野郎がぁぁぁぁ!!!」
ダークに肉薄した俺はアロンダイトを振り上げる。
「幻で終わってたまるかよッ!」
ダークは即座に剣を振るう。
弾かれたアロンダイトが俺の手を離れた。
クルクル回転しながら遠くへ飛んでいく。
「あひゃひゃひゃ武器がなけりゃぁ何もできねぇだろ!」
ダークは勝ち誇ったように嗤う。
……そうやってすぐに油断・慢心してしまうのがお前の悪い癖だ。
さんざんミラに弄ばれたのに学べなかったのか。
俺はわざとアロンダイトを狙わせたんだよ。
「終わりだ」
俺は腕を振り下ろす。
【炎装】で炎の剣を生み出す。
ダークを、斬った。
「ガッ……」
俺は【炎装】を解除した。
「やったね、クロムお兄ちゃん!」
「アスタロト、頼む」
ダークは倒した。
後はダークをパワーアップさせた元凶、上位悪魔を完全に消滅させるだけだ。
それで今度こそ終わりだ。
「準備はできております。お任せを」
アスタロトが腕を突き出す。
スキルを発動しようとした。
その瞬間に闇があふれた。
「「「ッ!?」」」
俺たちは一か所に固まり闇の濁流を斬り開く。
威力が、今までとは桁違いだった。
三人がかりで必死に対応しないと対処しきれなかった。
「俺様とダークの契約はこうだ。俺様がダークの言うことに従う。ただし、ダークが負けた時は俺様の自由にしていい」
闇の中で気配が膨れ上がる。
「というわけで、ここからは俺様が相手だ」
闇が晴れる。
「……スキル発動、失敗しました」
アスタロトが悔しそうに呟く。
「さあ! 俺様との決着をつけようぜ!」
中から、上位悪魔が現れた。





