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第3-38話 夢

「サポート役がたった一人で俺に挑むとか正気か?」


「バカだね、ダーク。私が援護しかできないとでも思ってんの?」


「オイ、あまり調子に乗るんじゃねぇぞ」


「君がね」


 ダークを結界で捕らえることに成功したミラは威勢よく啖呵を切る。


 ダークは苛立ちを隠すことなく闇を放った。


「死ね!」


「やだ」


 ミラは現実魔法で闇の一部を相殺しながら走りだす。


(覚悟してたけど、魔法の威力はダークのほうが上か。近接戦もダークのほうが上手だから、普通に戦ってたんじゃまず私に勝ち目はない)


 ミラは闇を躱しながら冷静に分析する。


 魔法も物理も格上。

 そんな相手に喰らいつくためには、自分が勝っている部分……強みを押し付けなければならない。


 だから煽る。


「クロムに追い越されたのがそんなにも悔しいの? 自分より下だと思ってた相手が自分より成功してるのが許せないんだよね? よぉ~くわかるよ、その気持ち。すっごくわかる。恥じることはないんだよ?」


 ダークの未熟な精神につけ込む。

 本人が認めたくないことをあえて認めて肯定してあげることで、嫉妬心を、プライドを逆なでする。


「黙れ!!! 俺が一番強くてすごいんだ! あいつ(ダーク)のほうが優れているなんて、絶対にあってはならないっ!!!」


 闇でミラの動きを制限しつつ距離を詰めたダークが、激情のままに呪剣を振るう。


 だが、ミラは【竜麗鱗】と【竜爪撃】の部分竜化を駆使して攻撃を完ぺきに捌いていく。


「格下相手にダメージ一つ与えられないで自分は優れてる~って叫ぶのダサすぎワロタ。ギャグセンス高いね!」


「今すぐぶっ殺してやる!」


 ダークは【纏衝突てんしょうづき】の構えを取る。


 呪剣の切っ先から放たれた衝撃波をミラは紙一重で躱す。


「クソが! なぜ当たらない!?」


 魔法も近接戦闘も肉体スペックも、すべてダークが勝っている。

 にもかかわらず、ミラにまともなダメージを与えることができない。


 その事実が、ダークをより苛立たせる。


(ちょっと煽っただけで面白いくらいブチ切れててワロタ。感情に振り回された攻撃なんて、手に取るように先が読めちゃうのにね)


「【竜殺斬り】!」


 攻撃力に特化した大ぶりの一撃を、ミラは爪で弾く。


「そのハイリッヒ流剣術だっけ? クロムと特訓してたから動き知ってるんだよね。……あれれ? クロムと特訓してた時は私の全敗だったのに、君のは簡単に捌けてるな~。ってことは、君のほうが弱いってことになっちゃうね」


 攻撃の合間をすり抜けたミラが、【竜爪撃】でダークを切り裂いた。


 間髪入れず現実魔法で追撃する。


 魔弾の数々がダークを直撃した。




「……少し本気を見せてやるよ」


 巻き上がる砂埃の中で、気配の密度が膨れ上がった。



「【闇同化】」



 ダークは無造作に呪剣を振る。

 風圧で砂埃が晴れる。


「当たらないなら周囲もろとも吹き飛ばす」


 呪剣の先に闇が収束して巨大な球体となった。




「終わりだ。死国シノクニ




 暗黒球が爆発する。


「ヤバ──」


 闇の奔流が。


 衝撃波が。


 爆風が。


 防御しようのない圧倒的な力が、一瞬でミラを呑み込んだ。


 地面が大きく抉られてクレーターができた。


(……何が、起きたんだろ……)


 気づいた時には、瓦礫の山の中に埋まっていた。


 ミラの全身を激痛が襲う。

 思考がぼやける。


 あやふやな世界の中で、ミラの脳裏に感情がよみがえってきた。






(──ずっと、羨ましかった)



 立派な夢を持つクロムが。


 みんなの役に立とうと一生懸命なルカが。


 料理を極めるためならどんな努力も勉強もいとわないアスタロトの熱心さが。



 羨ましかった。



(だって私は……)


 ただみんなと一緒に過ごすのが楽しくて。

 ……なんとなく生きてきただけの、何も持ち合わせていない空っぽな人間キメラだったから。



(──羨ましかったんだよ。ちょっと前まで)






 ミラは立ち上がる。


 ボロボロの体を気合いで動かす。


 痛みなんてねじ伏せる。



「……ようやく私も夢見つけたんだわ。私は……!」



 大きく息を吸って。

 心の底から……本気(熱意)のままに叫ぶ。



「私は! 小説家になりたいっ!」



「起き上がったと思ったらくだらねぇことほざきやがって。夢なんて所詮、(まやかし)だ。テメェも、テメェの仲間も、クロムも、叶いもしねぇ夢に振り回されて死ぬんだよ」



「夢も幻も現実にしてみせる。こんな所で終わってたまるか。ハッピーエンド以外認めるもんか!」



 ミラは自身の目を覆う仮面に、そっと手を添えた。




「こっちも切り札使ってやるよ」




 仮面を取った。




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