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第3-27話 帰還と報告

 鍛冶屋にて魔剣アロンダイトを手に入れた後。

 ガガンドロンさんのサービスで俺たちの服飾やアスタロトの大剣にも【自己修復】、【斬撃強化】、【硬度強化】などのスキルを付与してもらった。


 これまで傷ついた服はアスタロトに裁縫してもらっていたから、彼女の負担を減らすことができてよかった。

 戦闘中に服が傷つくことを心配する必要もなくなったし、ありがたいことだ。


「「「「「ありがとうございました~!」」」」」


 俺たちは鍛冶屋を後にする。

 魔界に来た目的はワープホールを閉じることだ。

 リジーさんとの交換条件である最強トーナメントも無事に優勝したし、もう魔界でやり残したことはない。


 リジーさんに頼んでワープホールを閉じてもらえば指名依頼達成だ。

 そんなわけで、ショッピングしつつリジーさんの仕事が終わるのを待って合流する。

 ワープホールの場所に向かおうとしたところで、アスタロトが話を切り出した。


「もう三日ほど魔界に滞在させていただいてもよろしいでしょうか?」


「それって料理修行的なやつ?」


 ミラの言葉にアスタロトはこくりと頷く。


「はい。ご迷惑をおかけしますが、よりおいしい料理を提供できるようになるためもっと修行をしたいのです」


「アスっちが決めたことなら私は全力で応援するよ。帰ってきたらおいしいご飯たくさん食べさせてね、期待してるからさっ!」


 ミラはアスタロトの肩をぽんぽんと軽く叩く。


「俺も反対しないよ。たまには休暇も必要だしな」


 アスタロトなしで三日間も屋敷の管理をするのは大変そうだが、食生活がより充実するなら安いもんだ。

 そんなことを考えていると、ルカが恥ずかしそうに聞いてきた。


「人間界に戻ったら国王様に報告しないといけないよね……?」


「ああ、そうだな。戻ったらすぐに報告しに行くつもりだ」


「……なら、ルカはアスお姉ちゃんと一緒に残るね。国王様に会うとか、考えただけで頭が爆発しちゃいそうだもん……」


 ……そういえばルカは国王様の前でやらかしちゃってたな。


「じゃあ、ルカのことは頼んだ」


「アスっち、よろ!」


「任されました」


 こうしてルカとアスタロトは魔界に残ることになった。

 別れの挨拶を済ませた俺とミラは、ワープホールに飛び込む。

 次に目を開いた時には、見慣れた景色が広がっていた。


「あ、戻ってきたぞ!」


 ワープホールの見張りをしていたのであろう騎士団員が驚く。

 もうじきワープホールが閉じることを伝えていると、ちょうどそのタイミングでワープホールが音を立てながら徐々に閉じ、そのままきれいさっぱりなくなった。

 無事にリジーさんがやってくれたようだ。


「本当に閉じたな……」


「というわけなので、俺たちは報告しに戻ります」


 俺とミラは王都に戻り、国王様のいる王城に移動する。

 すでに指名依頼の話は通っていたようで、城門前での身分確認が終わるなりすぐに謁見の間に通された。


「久しぶりじゃな」


「こくおーさまお久~」


「指名依頼のご報告に参りました」


「うむ、聞かせてくれ」


 国王様に促された俺は、魔界での出来事を詳細に話した。


 魔界の発展ぶり。

 技術水準の高さ。

 大会での出来事。


 そして、おそらく人間界にいるのであろう上位悪魔アークデーモンのことについても。


「……また頭が痛い問題が増えたな。ワープホール事件と同時期に魔界で封印されていた上位悪魔アークデーモンが誰かの手によって解放されて失踪、か。この二つの大事件がつながっている可能性はあると思うか?」


 国王様の問いに俺はしばし考え込む。


「……確かにタイミングがよすぎますが、ワープホールを発生させた理由が上位悪魔アークデーモンの封印を解いて人間界に連れてくることだとすれば、犯人が魔界の状況について詳しすぎるのでつながっていると考えにくいです」


「ふむ」


「ふむふむふむ。はえー、なるほど」


 国王様は静かに頷く。

 ミラは考えるのをやめた顔で頷く。

 俺は続ける。


「仮につながっているのだとすれば、悪魔ならなんでもよかったがたまたま魔界で上位悪魔アークデーモンを発見して解放に成功した。もしくは、そもそもワープホールを開いたのは人間ではなく悪魔で、魔界側から開かれた……の二点でしょうか」


「ふむ。確かにそちらのほうが可能性は高そうじゃな。して、上位悪魔アークデーモンについて情報は持っておるか?」


「それでしたら、こちらをご覧ください」


 俺は【アイテムボックス】から上位悪魔アークデーモンの写真を取り出す。

 これはロバートさんから借りた指名手配書の写真を魔界のコンビニで印刷しておいたものだ。


「この紙、品質が人間界こちらのものとは比べ物にならないほど上質じゃのう……」


「このコピー用紙という紙なら、コンビニに行けば安いパン一つ分ほどの値段で百枚入りのものを購入できます」


「マジで!? この品質が安価に量産できておるのか。儂が想像しているより圧倒的に発展してそうじゃのう……」


「こくおーさま驚きすぎててウケるw」


 ミラはいつもの調子で国王様をからかう。


 よくやるよホントに。

 豪胆さがすごい。


「あ、こちらの写真は差し上げます。上位悪魔アークデーモン対策にお使いください」


「まだまだ大量にあるから出血大サービスでたくさんおまけしといてあげるね」


「感謝じゃ。ありがたく貰っておこうかの」


 俺は写真を数十枚ほど国王様に献上する。

 報告をすべて終えたところで、俺は国王様に提言してみた。

 魔界にいた時から考えていたことを。


「魔界と国交を開くのはいかがでしょうか? かつて大規模な戦争をしたことから反対する貴族も多そうですが、先ほどご報告した通り魔界の技術水準はこの世界よりも圧倒的に高いです。故に、魔界と交渉する価値が高いと考えています」


「クロムの話を聞く限りでは、魔界は技術だけじゃなく法整備や教育においても優れているようじゃしな。国交で得られるメリットが多いのは間違いない。考えておくとしよう」


 人間界と魔界の国交。

 数百年前には検討されることすらなかったそれが実現したら……。

 人間界も魔界も今よりもっと面白くなりそうだ。


「指名依頼についてじゃが──」


 最後に国王様が総括する。



「──無事達成。というわけで、お主らは近日中にSランク冒険者として認定されるぞい!」


「ホントに!? やったー! クロム、私たちSランク冒険者だって!」


 ミラは嬉しそうにはしゃぐ。

 俺も国王様の前じゃなかったら同じくらい騒いでいただろう。


「ありがとうございます、国王様。Sランク冒険者になっても、これまで通り人々を助ける存在として頑張っていきます!」



 こうして俺たちは、ついにSランク冒険者に昇級することとなった。






◇◇◇◇



 クロムたちが魔界から戻ってきたころ。


 ダークと真神郷徒のリヒトは、とあるダンジョンの中にいた。


「リヒト、適合率は何%だ?」


「ようやく八十%ってところだ」


「そうか」


 そう言って、ダークは狂気に染まった笑みを浮かべた。


「あと少しだ。待ってろよ、クロム」



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