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第3-21話 アスタロトVS“最強”の悪魔 後編

 時はさかのぼり、アスタロトVSゼータの試合開始前。

 リングにて相対する両者を、ルカとミラは観客席から眺めていた。


「アスお姉ちゃん頑張れー!」


「アスっちファイト!」


 他の観客たちに混じって、ルカとミラも声援を送る。



『第一回戦では、アスタロト選手の圧勝で試合が終了しました! ゼータ選手は“最強”の称号が相応しいレジェンドですが、ひょっとしてひょっとすると大番狂わせが起きるかもしれませんッ!!!』



 実況が響く。

 それを聞いたルカが気になった様子で口にする。


「あのゼータって悪魔どれくらい強いのかな?」


「みんなからめっちゃ持ち上げられてるし、下手したらSランクなんじゃない? クロムと戦ってたシャドーって子もSランクレベルの実力者だったしさ」


 そんな会話をしているうちに試合が開始。

 一瞬で肉薄した両者の攻撃がぶつかり合い、アスタロトの大剣がゼータの腕を斬り飛ばす。


「うわ、痛そー。初手はアスっちが決めたけど……」


「あっという間に再生しちゃったね。アスお姉ちゃんが有利になったわけでもなさそう」


 腕を生やしたゼータは再びアスタロトに突撃。

 大剣での横一閃を【爆裂爆熱拳】の応用で躱して、素早く背後を取る。


「はぇ~、スキルの使い方上手だね」


「ん、参考になる! ルカもゼータと戦いたかったなぁ……」


 ゼータの実力に感心する二人。

 その後もゼータの猛攻は続く。


 巻き起こる爆裂。

 飛び散る鮮血。


 激しい攻防が続く。



『ものすごい攻防が続いております! ですが、アスタロト選手はいまだまともなダメージを喰らっていません!』


『ゼータ選手には再生能力があるため拮抗しているように見えますが、現時点でのパワーバランスではアスタロト選手のほうが勝っていますね』



 何度も何度もゼータの体が斬り飛ばされ、そのたびに再生する。


「このまま今の状態が続いたらアスお姉ちゃんが押し勝ちそうだね」


「それはゼータもわかってるだろうから、ここらで何か仕掛けてくるんじゃない?」


 ミラの予想は当たり、ゼータはわざと隙だらけの大ぶりの一撃を放つ。

 躱したアスタロトはカウンターを仕掛けようとする。

 が、ゼータは腰の骨を自らへし折るという予想外の方法でアスタロトに一撃を叩き込んだ。


「アスお姉ちゃん大丈夫!?」


「うわー、まともに入っちゃったね……」


 アスタロトを案じる二人だったが、爆炎の中から出てきた彼女を見て安堵する。

 それなりのダメージにはなったようだが、まだまだ問題ない範疇だ。



「驚いたっすか? アタシに関節可動域とかいう概念はねぇですよ!」


「軟体動物ですか」


「アタシはタコっす! 今回も優勝して“おくと”しますか! なんつってねハハッ!」


「つまらないタコですね。すぐに〆て差し上げますよ」



 バチバチなやり取りをしてから、再び両者がぶつかり合う。


 ゼータもアスタロトも互いにダメージを負っているが、二人とも動きに支障はない。


 純粋な戦闘技術はゼータのほうが上だが、肉体スペックはアスタロトのほうが上。

 加えて、ここまでの戦いでアスタロトも大きく成長している。


 普通に考えればアスタロトが問題なく勝つはずだが……。


「……なんか最初よりもゼータ強くなってない?」


「やっぱルカもそう思うよね?」


 ゼータの様子にルカとミラは疑問を覚える。

 それは実際にゼータと戦っているアスタロトのほうが強く感じているようで。


(ゼータの攻撃力が上がっている……? 理屈はわかりませんが、明らかに一撃一撃が重たくなっていますね)


 その違和感はすぐに確信に変わった。


「これ以上長引くのは得策じゃなさそうです」


「アハっ、気づいちゃったすか?」


 ゼータの拳とアスタロトの大剣が再びぶつかり合う。


 初撃とは違い、ゼータの腕が斬り飛ばされることはなかった。

 お互いの力が拮抗する。

 アスタロトの大剣が止まった。



『アスタロト選手、どうやら察したようですね!』


『ダメージを負えば負うほど攻撃力が上昇していく【気合い】。残り魔力が減れば減るほどスキル使用時の消費魔力が少なくなっていく【ド根性】。この二つのスキルによって、ゼータ選手は追い込まれれば追い込まれるほど強くなっていきます』


『ピンチになるほどより強く、よりタフネスになる! それがゼータ選手ッ!!! 本当の戦いはここからだーーーッッッ!!!』



 拮抗していた力が崩れる。

 ほんのわずかにゼータの力がアスタロトを上回り始める。


「どんどんやる気があふれて止まらねぇですよッ!」


「本当に、面倒な相手ですね……! 【剛力無双】、最大出力!」


 渾身の力でゼータの拳を弾いたアスタロト。


 再び両者の攻撃が激しくぶつかり合う。



「ギャハハハハハハハハハハッッッ! テンションみなぎってきたぜぇぇぇぇぇぇぇ!!!」



 今までとは比べ物にならない威力の爆裂、爆裂、爆裂!

 アスタロトは絶え間なくダメージを受け続ける。


(くッ……! 負けてたまるものですか! こんなところでッ!)


 アスタロトの剣速が増していく!

 アスタロトの攻撃速度がゼータに追いつき、再び互角の戦いへもつれ込む!


わたくしは……ッ! もっと先へ進まないといけないんですよッ!)


 絶対に負けられない。


 負けたくない。


 勝ちたい!


 その強い思いがアスタロトの魔力と混じっていく。



『アスタロト選手、傷だらけになっても全く闘志を衰えさせません!!! ゼータ選手に喰らいついております!!!』



 だが、それで押し負けるほどゼータは弱くない。

 アスタロトが食らいつけば喰らいつくほど、【気合い】と【ド根性】で一歩先を行く。


「アタシとここまでり合えたのはアンタが初めてっすよ! おかげで新たな境地にたどり着けたっす!!!」


「それはこちらも同じですよ! 成長したのが自分だけだと思わないでください!」


 アスタロトは新たに獲得したスキルを発動する。


「【剣聖】スキル──【閃光斬】!」


 アスタロトの剣速が爆発的に増す。

 一瞬でゼータを細切れにする。


「……ッ!?」


 宙を舞うゼータの眼球が驚きに染まっていた。


(あはは……! ……やっぱり、やっぱり楽しいっす! なおさらアタシのすべてをぶつけたくなった!)


 肉片同士がお互いに引き寄せられ、一瞬でゼータの肉体が再生される。


「そろそろ決着といこうじゃねぇですか! 切り札使ってやんよ!」


 不敵に笑うゼータから大量のエネルギーが発せられる。


「この一撃にアタシのっ! 爆裂道のすべてを込めるッ!」


 ゼータの拳に残り魔力がすべて収束していく。



「【爆裂爆熱拳】奥義──」



 最大まで強化された状態での、全魔力を使ったとっておきの一撃。


 アスタロトと戦う中でたどり着いた奥義を、ゼータは使った。




「──爆轟拳デトネーションフィストォォォオオオオオオオオオッッッ!!!」




 特大級の、圧倒的な爆裂がアスタロトに迫る。



「だったら、こちらも切り札を使わせていただきますよ」



 アスタロトは大剣を振り上げ──




「【剣聖】スキル──【破魔の一閃】」




 最上位の【剣聖】スキルを放つ。




 大振りの一閃は爆轟を斬り裂き、その先にいるゼータを両断した。




 爆轟拳デトネーションフィストの余波で、爆風が会場内に吹き荒れる。

 観客たちは爆風に耐えながらも、目を逸らすことなく成り行きを見守っていた。



 炎が消え、爆風が収まった。



「……あ~あ、負けちゃったです……」


 ゼータは悔し涙を流しながら崩れ落ちる。

 命のあかりが消えていく中、ゼータは涙をぬぐって叫んだ。


「……アンタのおかげで、世界にはまだまだアタシより強いやつがいるって痛感できた! 次は負けねぇですよっ! もっともっと今より何憶万倍も強くなって、今度こそぎゃふんと言わせてやるんすから!!!」


「……そうですか。なら、わたくしは何兆万倍も強くなって待っておくとしましょう」


「ハッ! すぐに追いついてやるから上で待ってやがれですよっ!!!」


 やる気と熱意に満ちた表情で叫んだゼータは、灰となって消え落ちた。



『結着! 決着ですッ!!! 勝者はアスタロト選手~ッ! 本当に大番狂わせを成し遂げてしまいました~~~ッッッ!!!』


『意地と魂のぶつかり合い。これぞ戦いという熱い試合になりましたね。いやはや大満足でございます』


『かつてないほどの熱狂的な試合に会場大盛り上がりです! 熱烈な戦いを繰り広げたアスタロト選手と、レジェンドとしての意地を見せてくれたゼータ選手に盛大な拍手を~~~ッッッ!!!』



 こうして第二試合は、拍手喝采大歓声を浴びながら終わった。


 次は決勝戦。

 クロムとアスタロトが戦うことになる。



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いつも読んでくださりありがとうございます!
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