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第3-19話 クロムVS忍者シャドー 後編

 これでシャドーの手の内はだいたい把握できてきた。

 まだ隠し玉はあるのだろうが、ここからは俺のターンだ!


「実は俺も分身できるんだよ!」


 俺は【デコイ】を発動するのと同時に、【ミラージュ】で一部の分身と本体を透明化する。


 【デコイ】で作った分身体は実体があるため、一応物理攻撃をすることは可能だ。

 まあ、耐久力が低すぎて攻撃がかすっただけで霧散するから、かく乱にしか使えないが。


 シャドーの分身体に斬りかかっていく【デコイ】たちは、忍術で次々に消されていく。

 透明化されていた【デコイ】も、【火遁の術】による爆風の余波などで次々に霧散していく。


 だが、時間は稼げた。

 俺は感覚を研ぎ澄まし、シャドーの本体を探る。


 ここまでは観察に力を入れていたため、シャドーの【影分身の術】についてわかったことがある。

 分身体はスキルを使うことができるが、本体と違ってスキルは分身体一人につき一つまでしか発動できない可能性が高いのだ。


 水蒸気爆発の時に【水遁の術】や【雷遁の術】を使っていたのは、途中で新たに作られた分身体だけだった。

 最初に生み出された分身体は、終始【火遁の術】しか使っていなかった。


 どれだ……? どれが本体だ?

 俺は周囲を注意深く観察する。


 ……見つけた。

 【雷遁の術】を発動した刀で【デコイ】を斬りながらも周囲を探っているシャドーだけ、他の分身体よりも動きの練度が突出している。

 【剛力無双】のような身体強化系のスキルを併用しているからだろう。


 そのタイミングでシャドーもまた、俺の本体を察知した。


「【爆遁の術】!」


「【斬撃波】!」


 俺はクナイを躱しながら、斬撃を飛ばす。

 背後でクナイが爆発するのと同時に、シャドーの体を飛ぶ斬撃が斬りつけた。



『鋭い一撃が入ったぁぁあ!!! クロム選手が着々と自身のペースに引きずり込んでおります!』


『シャドー選手の【爆遁の術】は高威力ですが、クロム選手にはほとんど効いていませんね。おそらく炎属性に耐性があるのでしょう』



 俺は【炎属性無効】で爆発のダメージを無効化しつつ、爆風を利用して加速しながらシャドーに接近しようとする。


「……起爆」


 シャドーが小さく呟く。


 なんだ?

 そう思った瞬間、俺の足元が爆発した。


「ぐはッ……!?」


 いきなりの出来事だったため、【炎属性無効】の発動が間に合わずダメージを受けてしまった。


 ……フィールドトラップか。

 一発だけでは大きなダメージにはならないが、仕掛けられていたトラップが今の一つだけなわけがない。


「さっきからなんのスキルも使っていない分身体たちがちらほらいるなと思ってたけど、トラップを仕掛けていたってわけか」


「ご名答」


 シャドー本体の姿が消えるのと同時に、新たな分身体たちが現れる。

 彼らは一斉にリングに手をつけた。


「「「【土遁の術】を複数同時発動すればこんなこともできるのでござるよ!」」」


 闘技台がまるで泥沼のように変化する。


 だが──


「問題ない!」


 俺にはどんな足場にも影響されずに駆け抜けることができる【完全走破】がある。


 このまま一気に仕留める……そう考えたところでまたもや直感が反応した。


「ッ!」


 とっさに横に跳ぶ。

 直前に俺がいた場所で、新たにトラップが起爆した。


 爆発が起こり、ついでに放電まで発生する。

 【炎属性無効】だけでは防げない厄介なトラップだ。


「「「地面を操作することで任意にトラップを発動させることが可能でござる。全方位からの攻撃を捌けるものならやってみせるがいい!」」」


 トラップ、分身体たちの放つ無数のクナイ、隙あらば突撃してくる【雷遁の術】を発動した鉄砲玉たち、どこにいるかわからない本体……。


 集中しろ。

 意識を、感覚を研ぎ澄ませ!



 俺は駆ける。


 クナイを躱し、【雷遁の術】を避けながら分身体だけを斬り、トラップの位置を看破していく。


 右前方トラップ!

 後方と前方からクナイ接近中!

 左からはトラップへ誘導するために【雷遁の術】が迫っている!


 ここを切り抜けないと、一気にシャドーのペースに持ち込まれてしまう。


「【瞬歩】──」


 ただ高速直線移動するだけじゃダメだ。



「──連続発動!」



 一気に加速する。

 左から迫る分身体をすり抜ける。


 からの【瞬歩】解除。


 即座に方向転換してからの【瞬歩】再発動!


 ほんの一瞬でそれを何度も繰り返す。


 リングを駆け抜けた俺の後ろで、分身体たちが一斉に霧散した。


 【瞬歩】は無理やり筋肉を増強することで超スピードを実現する。

 複数回連続で発動しようものなら、体が負荷に耐え切れず足が壊れてしまう。


 事実、俺の足は使い物にならなくなってしまったが問題ない。

 回復魔法が使える俺なら、実質ノーデメリットだ。

 死ぬほど痛いけどな!


「分身体たちはすべて斬った。後はお前だけだ、本体!」


 俺は振り返って宙に浮かぶシャドーを補足し、【瞬歩】を発動する。


「ここが正念場のようでござるな」


 【土遁の術】はもう使われていないので、【完全走破】は解除。


 一度に使えるエクストラスキルは五つまで。

 うち二つは【瞬歩】と【剛力無双】で埋まっている。


 残りの三枠にセットするのは、【炎装】と【炎斬拡張】。

 それからアスタロトが所有している【剣聖】スキルの一つである【竜殺斬り】だ。


 ハイリッヒ流剣術はエクストラスキル【剣聖】を所有していることが前提で体系化されている。

 今まで俺が使っていた竜殺斬りは、【剣聖】スキルを見よう見まねで模倣していただけだった。


 だが、今回は違う!



「ハイリッヒ流剣術──」



 剣が重くなる。


 威力が増す。



「──【竜殺斬り】!!!」



「【抜刀術】──疾刀!!!」



 俺の剣とシャドーの小刀が交差する。



 刹那、根元から真っ二つになった小刀が宙を舞った。



「がはッ……峰打みねうちでこの威力とは……」



 シャドーが崩れ落ちるのと同時に、俺は剣を収めた。



『決着ゥゥゥ~~~ッ!!! 勝者はクロム選手! クロム選手が決勝に進出することとなりました~ッ!』


『いやー、手に汗握るとんでもない試合になりましたね』


『そうですね! わたくし、手に汗握りすぎて思わず実況を忘れて釘付けになってしまいました! これほどまでに超絶怒涛な試合が見れて最高ですよ!』



 会場が盛り上がる中、俺はシャドーのもとに歩む。


「いい試合だった。ありがとな」


「貴殿もお見事だったでござる」



 お互いに言葉を交わした俺たちは、がっつりと握手するのだった。



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作品ページはこちら

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