第3-3話 謁見
王城の謁見の間にて。
いよいよ表彰式が始まった。
「諸君らの働きによって、フォーゲルン大湿地での魔物異常発生の解決および元凶である真神郷徒の捕縛に成功した! その功績に報いるべく栄誉を贈りたい!」
玉座に座る初老の男性──国王様が、威厳ある声で告げる。
謁見の間には、合同依頼に参加していた騎士団の面々やダークが並んでいる。
俺たちもその中に混じって国王様の話を聞いていた。
「ダーク・ハイリッヒ、前へ!」
名前を呼ばれたダークは、国王様の前まで歩いていき跪く。
「此度は大儀であった。そなたの活躍は聞き及んでいる。推定危険度Bランク以上の魔物を単独で倒したそうだな」
「……勝利に貢献できたこと、大変誇りに思います」
「そなたのおかげで、湿地帯の異変を収めることができた。その功績を讃え、勲章を授ける」
「ありがたき幸せ」
勲章を授かったダークは、一礼してから戻ってくる。
その姿を眺めながら、ミラは小声で呟いた。
「勝利には貢献してたよね。主に雑魚狩りで」
「事実陳列罪で煽るな」
超小声でツッコミを入れる。
こんな状況でもいつもみたいに煽れるとか、ミラはホントに緊張してないんだな。
こういう場で緊張しないのってある種の才能なのだろうか。
俺とルカは緊張で死にそうだってのに、羨ましいよまったく……。
ダークの次は、合同依頼に参加した騎士団メンバーの責任者が表彰される。
俺たちの番はその次、まさかの大トリだった。
一番活躍した俺たちが最初に呼ばれなかった時点で薄々察してたけどさ……。
国王様、好きな料理は最後に食べるタイプだろ絶対。
「Aランク冒険者クロム、ルカ、ミラ。前へ」
呼ばれた俺たちは、国王様の前へ向かう。
その最中、ダークと目が合った。
……ダークは、すごく悔しそうな表情で俺を睨んでいた。
俺は気づかなかったふりをして国王様の前に出る。
右手を胸に当て、片膝をついた。
「そなた達の活躍は聞いている。A級上位の怪物ヒュドラを倒した上に、王国が長らく追っていた真神郷徒の構成員を捕縛したそうだな」
「冒険者として民を守ったまでです」
「そなた達のおかげで王国に甚大な被害が出ることを防ぎ、真神郷徒を殲滅するための足掛かりを得ることができた。その功績を讃え、そなた達には褒賞金と屋敷を授ける」
「「「ありがたく頂戴いたします」」」
そう答えてから、一礼する。
返答内容はあらかじめ決めておいたから、ルカとミラもきちんと答えることができた。
ミラはちょっと棒読みに近かったけどギリセーフだろう。そう思うことにしておく。
それはそうとして、褒賞は屋敷かぁ……。
予想外過ぎて逆にリアクション小さくなっちゃったよ。
人って驚きすぎるとあんまビックリしないんだな。
新たな発見をした時、国王様がこれまた予想外なことを告げてきた。
「私はそなた達の実力を疑ってはいない。しかし、貴族たちの中には信じておらぬ者もおる。『国が総力を挙げても捕まえられなかった邪神教徒を、一介の冒険者ごときが捕まえられるものなのか?』と」
なんかよくない流れな気がするのは俺だけ?
実力を見せろ的なこと言われそうなんだが……。
「そこで、そなた達の代表としてクロムには、騎士団長との模擬試合で実力を示してもらいたい」
予想的中ですありがとうございました。
「はい、仰せのままに」
断るという選択肢はない。
こうして俺は、騎士団長と模擬試合をすることになった。





