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第2-12話 主役は遅れてやって来るもの

「お互いに両想いだけど相手に嫌われるのが怖くて一歩踏み出せない二人が覚悟を決めて告白する三秒前!」


「ぎゃああぁぁぁ!! もどかしすぎるし、恥ずかしすぎるぅぅぅ!!!」


 ドカァァンッ!

 また一人、爆発する。


「間違って女湯に入ってしまった男に対する周りからの視線ッ!」


「あああああああああ一生の大恥だぁああああああああ!!!」


 ボカァンッ!

 さらに複数の冒険者が倒れる。


「冒険者ギルドで新入りに絡んで返り討ちにされた間抜けな冒険者の図!」


「黒歴史を掘り返すなぁぁぁああああああああ!!!?」


 ドゴォンッ!

 合同依頼レイドクエストが始まる前に、冒険者ではありえないくらい真面目だと受付嬢さんに褒められていた冒険者が爆発した。

 彼の名誉のためにも、何も知らなかったことにしてあげよう……。


「おー、クリティカル羞恥ヒット決まったな。それはさておき、羞恥レパートリーはまだまだあるぜ。続きといこうか」


 羞恥タイムはまだまだ続く。

 そして──。



「残るはお前らだけだぜ」



 気づけば、まだ爆発していないのは俺とルカだけになっていた。


「変な能力のくせに強すぎ……!」


「ホントに、なんでこんな強いんだよ……」


「悪かったな、強くて」


 邪神教徒は俺たちをあざ笑う。


「強いやつほど羞恥メーターの上限が高くなるのは面倒だが、いまだ俺はノーダメージだ。テメェらがどれだけ抗ったところで、恥ずか死ぬ未来は変わらねーよ」


 邪神教徒が幻影魔法を発動する合間に冒険者たちと協力して結界を攻撃していたのだが、結界にはヒビ一つ入れることができなかった。


 いくらなんでも耐久力が高すぎる。

 【剛力無双】&【炎装】&【炎斬拡張】を発動したルカと、【身体強化】&【絆の炎(ボンド・プロミネンス)】で強化された俺の同時連続攻撃ですら通用しなかったのだ。

 加えて、他の冒険者たちの攻撃もある。

 一発一発は俺たちより弱くても、攻撃回数は俺たちよりもはるかに多い。


 邪神教徒の守りのかなめである結界は元から耐久力が高いのに加えて、おそらく自動修復機能まで備えているのだろう。


「結界をどうにかして倒すという作戦はナシだ。俺たちじゃ結界は壊せない。他の方法で倒すぞ」


「どうやるの、クロムお兄ちゃん」


「……勝ち筋はあるにはある」


 強力な結界で身を守りながら、一方的に攻撃する。

 一見すると、ずっと邪神教徒のターンが続いているようにも見えるが、一つだけ……。

 限りなく勝率は低いけど、一つだけ勝ち筋があった。


 俺はルカに手早く説明する。


 マックスになると爆発するという羞恥メーター。

 これは俺たちだけでなく、邪神教徒の頭上にもある。

 そして、俺たちほどではないものの、邪神教徒の羞恥メーターも貯まっている。


 邪神教徒は【共感性羞恥】なんていうスキルを授かったくらいだ。

 人一倍、共感性羞恥能力が高いのだろう。

 そこにつけ入る隙がある。


「つまり、先に邪神教徒の羞恥メーターをマックスにしてしまえばいいということだ」


「ルカたちより先にあいつを爆発させるんだね」


 体の内側から爆発するから、結界の中にいても意味はないはずだ。


「いい推理するじゃねーか。確かに羞恥メーターがマックスになったら俺も爆発する。だが、これまでの戦いでテメェらが常識人かつ羞恥攻撃に弱いことは把握済みだ。加えて、俺はスキル使用者特権で羞恥メーターが貯まりにくい。勝ち筋なんてもんは最初ハナから存在しねーんだよ」


 そう言って、邪神教徒は新たな幻影を作り出そうとした。


 ──その時。





「その言葉、そっくりそのまま返してあげるね。君に勝ち筋は存在しないよ。──なんたって、私が来たんだから」



 天から声がした。


 見上げれば、背中から竜の翼を生やした少女が……。



 ──ミラが飛んでいた。



「主役は遅れてやって来るものなんだよ」


「……なんだテメェは?」


 地上に降りてきたミラは、ニヤリと笑って高らかに告げた。




「主役」




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