第2-1話 ダーク・ハイリッヒ
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フラメアにてゴブリン集落事件が発生した二週間後。
王都にあるハイリッヒ侯爵家の邸宅に、大勢の貴族や要人たちが集まっていた。
ハイリッヒ侯爵家は王国内でもかなりの力を持つ。
その侯爵家が総力を挙げて開催したパーティというだけあって、会場には一流の料理人たちが腕によりをかけて作った豪勢な料理が並び、邸宅内は煌びやかな光に満ちあふれていた。
大勢の人たちで賑わう邸宅内を、一人の少年が優雅に歩く。
彼を見るなり、客人たちは目の色を変える。
少年は客人に挨拶をした。
「本日はようこそお出でくださいました。私のためにお越しくださったこと大変喜ばしく思います」
人当たりのよい笑みを浮かべて客人の手を握った黒髪黒目の少年──ダーク・ハイリッヒ。
最高級の服に身を包み、洗練された動作で挨拶する彼に、全ての貴族たちは好意的な反応を見せる。
それもそのはず。
今回のパーティーはお披露目。
ハイリッヒ侯爵家の次期当主がダーク・ハイリッヒだと周知するのが目的なのだから。
ハイリッヒ侯爵家は、代々その実力を以って国難に対処してきた。
時には、大災害をもたらした魔物を討伐したり。
時には、戦争で敗戦確実な状況を覆したり。
その功績を数えればキリがない。
故に、国王からの信頼も厚い。
その侯爵家の次期当主ともなれば、お近づきになりたい人間はいくらでもいる。
当然ダークはそれを理解しているので、こうして自分の顔と名前を売っているわけだ。
(利用できるものはすべて利用してやる。ハイリッヒ侯爵家の爵位を上げるために)
そう内心で考えながら。
「久しぶりだね、ダークくん」
以前から交流のあった貴族が話しかけてくる。
「聞いたよ、学園に首席で入学したんだってね。しかも、入学試験で騎士団長と互角の戦いを繰り広げたそうじゃないか!」
ダークは自信に満ちあふれた声で言葉を返した。
「学問も武術も励んで当然ですよ。民を守るというのが貴族の責務ですから」
「さすがは剣聖と讃えられたアイザックさんの息子だ。国王様が気にかけるのにも頷けるよ」
「お褒め頂き光栄です」
ダークは笑顔の仮面を張りつけて顔と名前を売り続ける。
こうして夜は更けていった。
◇◇◇◇
お披露目パーティーの翌日。
ダークはアイザックの執務室を訪れていた。
「失礼いたします、父上。出立前の挨拶に参りました」
ダークが執務机の前に立つなり、アイザックはすぐに本題を切り出した。
「いいか? これはチャンスだ」
「はい、心得ています」
王国の南側に広がる広大な湿地帯。
最近、その湿地帯で魔物の異常発生が頻発している。
湿地帯周辺の街は観光業をメインとしていることに加えて、湿地帯は水産資源が豊富だ。
独自の進化を遂げた魔物も多く生息していて、魔物の研究としても重要な地である。
そんな場所で高ランクの魔物が異常発生したとなれば、放っておくことはできない。
すでに異常発生した魔物の一部や、異常発生した魔物に住処を奪われた既存の魔物が、人間や街を襲うといった被害も出始めている。
それが理由で騎士団が派遣されることになったのだが、そのメンバーにはダークも選ばれていた。
「国王様が直々にチャンスをくださったのだ。絶対に成果を上げてこい」
侯爵家の次期当主とはいえ、ダークはまだ十五歳。
貴族学園に入学したばかりにも関わらず、王に重大な任務を任された。
剣聖と呼ばれ国に貢献してきたアイザックの息子だからというのも多少はあるのだろうが、すでにダークは騎士団長と互角に戦ったりと頭角を現し始めている。
その才能に、王は期待しているのだ。
「お任せください。必ず、国王様の期待に応えてみせます」
ダークはすべてがうまくいくと確信している。
自身の未来が華々しいものになると信じて疑わない。
すでに運命の歯車が動き出していることには、気づいていなかった。
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