第19話 二度目の【キメラ作成】
俺は【キメラ作成】を発動した。
目の前に魔法陣が現れる。
あとは素材を放りこむだけだが……。
「やっぱり最初はこれだよな」
俺はドラゴン素材をカバンから取り出す。
美しい光沢を放つ鱗と、強靭な爪と牙。
それらをすべて魔法陣に放りこむ。
高ランクの、しかもドラゴンの素材だ。
キメラの材料としては、これ以上ないほどぴったりだろう。
「他には何を入れるの?」
「そうだな……」
俺はカバンの中を漁る。
何か素材として使えそうなものは……あった。
「毛むくじゃらの魔物の魔石と、蛇の魔物の魔石にしよう」
どちらも初めて見る魔物だった。
【キメラ作成】に使ったらどんなふうに作用するのか楽しみだ。
「作成開始!」
魔石を放り込んでそう唱えると、魔法陣が光り輝く。
ルカの時は赤い光を放っていたけど、今回はピンク色の光を放っている。
「どんな子が誕生するのかな?」
ワクワクが抑えられない様子のルカと一緒に見守る。
魔法陣からあふれ出る光が強くなる。
光が収まった時、そこには一匹の魔物がいた。
「きゅー!」
可愛らしい鳴き声を上げたその魔物は、両手で抱きかかえられるほど小さい竜だった。
淡いピンク色の毛並みが美しい。
種族は幻影竜でB-ランク。
変わったスキルをいくつか所持している。
「もふもふで可愛い! なでなでさせて!」
「きゅう!」
「やったー! ありがと!」
ルカと竜はあっという間に仲良くなった。
良好な関係を築けそうで何よりだ。
「撫で心地、最高!」
「きゅ~」
ルカは幸せそうな表情で竜を撫でる。
竜は気持ちよさそうに目を細めている。
俺は竜に目線を合わせてから、話しかけた。
「初めまして。俺はクロムだ」
「きゅぅ!」
「私の名前はミラ! って言ってるよ」
ルカは魔物だからか、竜改めミラの言葉が理解できるようだ。
「俺の夢は英雄みたいに強くなることだ。そのための道のりは険しい。だから、ミラの力を貸してくれないか?」
ミラは俺が作ったキメラだ。
頼めば俺の夢に付き合ってくれるだろうけど、ミラがそれを望まないのなら本人の意思を尊重したい。
「きゅう!」
ミラが力強く鳴く。
ルカが通訳してくれなくても、何を言っているのか分かった。
「ありがとな、俺たちの仲間になってくれて」
「きゅー!」
「改めて、俺はクロムだ。これからよろしくな、ミラ」
「ルカだよ。よろしくね!」
「きゅい!」
ミラが俺の頭の上に乗っかってくる。
「そこが気に入ったのか?」
「きゅ~」
「そうかそうか。降りたくなるまで乗っかってていいからな」
「きゅぅ」
俺は頭にミラを乗っけたまま、ルカと一緒に歩きだす。
ナイトメアノワールを倒すことができた。
ルカは進化して、新たな仲間まで得た。
初依頼は無事に達成。
これ以上ない成果を出すことができた。





