第14話 作戦開始
俺たちは村に着いてすぐ村長のもとに向かった。
まずは情報収集だ。
というわけで、村長から話を聞く。
「ナイトメアノワールが現れたのは二週間ほど前じゃ」
「巣の場所は分かってるんですか?」
「いや、この近くにあるじゃろうということしか分からんのじゃ。突如現れては、家畜をさらっていくんじゃ」
巣の場所が分かっているなら手っ取り早かったんだけどな。
これは少し面倒かもしれない。
「目撃場所はどの辺が多いんですか?」
「うーむ……。家畜をさらいに来る時以外では、数回ほどしか目撃されとらんからなぁ」
「では、家畜をさらった後はどちらの方角に飛んでいったとか分かりますか?」
「飛んでいった方向……。確か、毎回西のほうに飛んでいったはずじゃ」
『西』という単語でピーンとくる。
今回も役に立ったな、地理の知識。
ナイトメアノワールの巣の場所に見当がついた。
「お話ありがとうございました。後は俺たちに任せてください」
「おお……! ありがたい限りじゃ……! お気をつけてくだされ」
俺たちは村を出て、西の森に向かう。
「まずはナイトメアノワールの巣を見つけないとな。そうしないと罠を仕掛けようにも仕掛けられない」
「罠ってどんな感じの?」
「一言で言うと毒餌だな。魔法陣から出てきた蛇の毒あっただろ。あれを魔物の死体に混ぜて放置する」
ナイトメアノワールがそれを食べて弱ったところを倒すっていうプランだ。
「でも、わざわざ食べてくれるかなぁ?」
「ナイトメアノワールはそれなりに賢いからな。食べてくれるどころか、そもそも毒餌に近づいてこないと思う。だからナイトメアノワールの習性を利用する」
「なるほど~。その習性って?」
「それは後でのお楽しみだ。まずはナイトメアノワールが食べそうな魔物を見つけて狩らないとな」
そんな話をしていたら、森を抜けた。
目の前には崖が広がっている。
「ナイトメアノワールが巣を作る場所は崖のくぼみなどが多い。たぶん、この崖のどこかにあるんじゃないかな」
「さすがクロムお兄ちゃん。魔物に詳しいね」
「昔、魔物図鑑を読みまくってたからな。っと、怪しいくぼみ発見!」
崖の上に大きなくぼみがあるのを発見した。
あの大きさならナイトメアノワールの体でも余裕で入るだろう。
「登りやすそうだから、ちょっと確認してみるか」
「そうだね」
俺たちは飛び出た部分を足場にして崖を登る。
うし、到着。
中を覗きこむ。
「ビンゴ!」
「ナイトメアノワールの巣で間違いなさそうだね」
洞窟の中には魔物の骨が転がっていた。
そして、奥のほうには収集品が散らばっている。
「いったん戻ろう。毒餌の仕込みをしないと」
「そうだね。それにナイトメアノワールが帰ってくるかもだし」
「蜂合わせたらヤバいな」
というわけで、洞窟から出ようとしたところで。
──遠くからでっかい黒鳥が飛んでくるのが見えた。
「もしかしなくても蜂合わせた?」
その黒鳥は一気にスピードを上げる。
「蜂合わせたね!? これ絶対、一般通過鳥じゃないね!?」
俺たちは急いで崖を降りる。
森の中に早く逃げ込みたいけど、絶対間に合わなさそう!
「仕方ないな」
俺はカバンの中からあるものを取り出す。
「クロムお兄ちゃん、それは?」
「なんかキラキラ金色に光り輝いているだけのただの石だ!」
ナイトメアノワールには、光り物を収集するという習性がある。
だから、この金ぴか石を投げれば──。
「ガアー! ガアー! ガアー!」
ナイトメアノワールは目の色を変えて金ぴか石に飛びつく。
その間に、俺たちは森の中に逃げこんだ。
「ふ~、危なかったぁ……」
「クロムお兄ちゃん、ナイス」
ナイトメアノワールが追ってこなかったことに胸をなでおろしていたら、草木をかきわけて魔物たちが出てきた。
「ゲギャー!」
「ゲゲゲゲ!」
「ギャギャー!」
子供くらいの背丈で、緑色の肌。
額から角を生やしたそいつらは、ゴブリンと呼ばれる魔物だった。
しかも八匹。
それなりに大きな群れだ。
「ゴブリンの群れ……? 珍しいな……」
「確か、定期巡回の駆除対象なんでしょ? ゴブリンって」
「ああ。だからゴブリンの群れと遭遇することなんて滅多にないはずなんだけど……とにかく、やるぞ!」
「ん!」
俺たちは戦闘態勢に入る。
ゴブリンたちも、武器を構えた。





