祝福された花嫁
結婚式当日の朝は、婚約式と同じ様に、身支度のために早くから起こされます。神殿での儀式だけは、今回は身内だけで行います。外部の者に知られてはならない儀式があるようです。
そんな神殿での儀式を終え、わたくしたちは、王宮の大広間に移動しました。王宮の使用人たちが数日前から飾り付けをし、沢山の花と装飾で豪華に彩られた広間には、国内外からのお客様が沢山います。座席の最前列には、お養父様をはじめとした皇族の皆様方と、両親を始めとした、わたくしの親族が並んでいます。
音楽隊が奏でる曲が、静かな曲調から、どこか華やかで厳かな曲調に変わったのを合図に、わたくしたちが入場しました。
「エドワード・リー・キャンベル皇太子殿下、クリスティア・ベル・キャンベル皇太子妃殿下の御入場です」
殿下に手を取られて、大勢の客が並ぶ中を一歩づつ進みます。わたくしの長いスカートの裾を持ち上げつつ、後ろからついてきてくれているのは、リナとリリー、その後ろから、ジュリー様がついてきてくれています。参列者の最後尾にエルザの姿を認めたわたくしは、緊張した面持ちでこちらを見つめている彼女に少し微笑んでみせます。その近くに、アンヌたちの姿を見つけてしまい、わたくしの涙腺が決壊しそうになりました。それに気がついた殿下が、こちらをそっと伺ってきます。
「大丈夫か?」
「はい」
小声で言葉をかわす姿をどう受け取ったのか、参列者の表情が微笑ましいものを見るようなものに変わりました。そしてそれに気がついた殿下の耳も少し赤くなります。きっとわたくしも頬が上気していることでしょう。
そんなこんなで、祭壇の前にたどり着くと、先に殿下が上に登ります。そのまま振り返り、手をこちらに差し伸べて、小声で注意を促してきます。わたくしが何度か裾を踏みつけてしまったことがあるからでしょうか。練習の途中から、殿下はこの段差があるところでわたくしの足元に、少し大げさなくらい気を払ってくださいます。
「足元に気をつけて」
「大丈夫です」
くすっと笑って、殿下のお手を借りてそっと上がると、参列客の様子がよく見えます。それほど見ている時間はなく、神殿で済ませた儀式とは違い、国民の前で結婚を誓う儀式が始まります。神官長に誓いを問われ、それに答える形式です。
「皇太子、エドワード・リー・キャンベル殿下。その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか」
「はい。死がふたりを分かつまで」
「皇太子妃、クリスティア・ベル・キャンベル殿下。その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか」
「はい。死がふたりを分かつまで誓います」
わたくしたち同士が誓おうとも、この身は国に捧げるのであまり意味はないのですが、夫婦仲を見せるのは重要とのことで、この式も行われ続けているのだそうです。二人で誓いの言葉を述べ、一連の動作が終了すると、神官長がその場を離れ、入れ替わるように両陛下が壇上に上がります。ここからは、皇太子妃として封じられる儀式が始まります。
殿下の手を離し、わたくしはその場に跪きました。陛下から、冊封されたのを受け、わたくしが誓いの言葉を述べる形になります。
「クリスティア・ベル・キャンベルに皇太子妃の位を授ける。皇太子を支え、国民、国のために尽力せよ」
「謹んで拝命いたします。わたくしは、皇太子妃として、皇太子殿下や国民の皆様のため、尽くしてまいります」
「証としてティアラと宝玉を授けよう。皇后」
「はい」
「皇太子妃に代々受け継がれているティアラと、そなたの瞳の色に合わせた、碧玉を授ける」
「結婚おめでとう。クリスティア」
「先人に恥じぬよう、努力してまいります」
皇后様のお手により、ティアラがつけられます。ずっしりとした重みに、位の重さを感じながら、わたくしは陛下の手を借りて立ち上がりました。
「さぁ、国民に顔を見せてきなさい」
「「はい」」
陛下に促され、わたくしたちは広間をあとにします。暖かな拍手に背を押され、王宮に設置されている、バルコニーに出ました。王宮前の広場には沢山の人々が集まり、わたくしたちに手を振っています。
彼らに手を振り返しながら、バルコニーの端まで行くと、そこに設置された鐘を鳴らします。慶事を示すという習わし通りに鐘を鳴らすと、歓声は更に高まり、王宮侍女たちがまく花びらが頭上に降り積もっていきます。高い位置にあるバルコニーからは通りの様子がよく見えるのですが、たくさんのお店が出ていて、小さな子たちが美味しそうなお菓子を食べている様子なども目に入ってきました。見える範囲にいる人はみな笑顔で、祝福の気持ちがよく伝わってきます。
「わたくし、殿下に嫁いでよかったです」
「どうした、急に?」
「きっとわたくしが、世界で一番祝福された花嫁ですもの」
ふとこみ上げてきた思いを殿下の耳元で囁くと、わっと歓声がわきました。殿下の耳も少し赤くなります。いたずらが成功したときのような顔でわたくしは笑うと、先程よりこちらに注目している広間全体の人の顔を見回しながら、強く手を振りました。
市民たちは、喜んでいるといえば喜んでいますが、それは、めでたいことがあると町が盛り上がるからで、別にティアたちだから、喜んでいるわけじゃないんですよね。
あと、エドは、怖いってイメージが強いから、最初ビックリされました。
「皇太子さま、怖いって言われてんのに、ニコニコ笑ってるじゃん!」って。
一旦、一区切りついたので、ここまでを第一章とし、一度完結ボタンを押させてください。
まとまった量の書きだめができたら投稿を再開します。
ここからは、ティアと並行して、いくつか構想だけ考えていたお話のうち書きたいものから書いていきます。
まずは、これから書くかなと思うので、URL貼っておきます。
前世、世界随一の魔女として国を作って、国のために頑張った魔女が、今世では未来のその国に転生し、できるだけ平穏に暮らそうとするお話です。あんまり平穏じゃないかもしれないけど。
投稿開始は4/1かな?良かったら読んでみてください。
https://ncode.syosetu.com/n5148hy/




