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幸せな結婚  作者: 吉江 美緒
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醤油ラーメン

黒い深めのフライパンの中でヘラに踊らされるもやし、キャベツ、人参、薄切り肉

肉に火が通ってじんわりと滲み出る血の気を含んだ脂を見つめていると今日あったことが目まぐるしく脳内を駆け巡る


そう言えば今朝も質問箱に質問がきていたことをふと思い出す。


『最近手紙は書きましたか?』


私の答えは『最近が1ヶ月以内なら書いてません。ご参考にして頂けましたら幸いです。』


思い出した時に回答しておかなければ忘れてしまうので、慌てて回答する。

こうした質問が日にいくつか届くアプリに登録している

匿名で誰から届いた質問なのかは分からないが、様々な質問があって日々考えさせられる事が多い。


そのせいか、それに纏わる記憶が浮上してくる機会も増えた。


キャベツの芯にも火が通ってきたのでガーリックソルトと胡椒を振りかける


私の兄は私が中学1年生の時に刑務所に入った。

3年間服役していた。


兄と私は11歳離れていたので、喧嘩することも無かった。

私の記憶の中では兄が家を出るまでの間私は兄に大変可愛がられていた。

だから、突然母から知らされた兄の服役については12歳の私には何が起こったのか分からず兄のことがただただとても心配だった。


私は面会に行くことを両親に許されなかったので、兄に宛ててせっせと手紙を書いていた。


その内容は実に他愛もないものばかりだったと思う。

毎月1~2回は送っていたので中々の量だったはずだし、今思えば中学生の女の子が書くようなつまらない手紙ですら娯楽になるのかと思うと刑務所とは恐ろしい場所である。


兄から届いた返事を私は今でも大切に保管している。

数少ない兄との思い出、特段美しい兄弟愛があった訳でもないがそれでも死ぬまで捨てることはないと思う。


兄が大切に取っておいてくれた私の手紙はというと、

兄が亡くなって遺品整理をしている合間に

母から燃やしておいたと事後報告を受けたことを思い出した。


あの時の母への憎悪がまた込み上げてきた


ラーメンの上に乗せる肉野菜炒めが出来上がったので、一旦深めのフライパン鍋を空ける為に肉野菜炒めをボウルに移した。


なぜ、アノ人はいつもあぁなのだろう。という無意味で空虚な問いが浮かんでくるが考えても疲れるだけだと分かっている


空いたフライパン鍋にお湯を沸かし始める。


今日スーパーで買った醤油ラーメンのセットを開ける、ちぢれ麺が2つスープの素が2つ入ってるのはそれだけだ


ちぢれ麺の袋を破っていつでも麺を茹でられるように準備しておく


スープの素も器にあけておく


ぐらぐらと煮立ってきたお湯に麺をほぐしながら入れてタイマーを3分にセット

蓋をした鍋から蒸気が溢れ出てくる。


もう12月も半ばになろうというのに、湯気でキッチンは暑いくらいだ。

鍋の蓋をぼんやり見ながら、私はもう母のことは愛せないだろうなと思う。


スープの素にお湯をそそいで、茹で上がった麺を湯切りして盛る


肉野菜炒めと事前に作っておいた煮卵と買ってきたやわらぎメンマも添えて美味しいラーメンができた。


夕飯できたよ。と、小さく声をかけてダイニングテーブルまで運ぶ


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