廃墟の落書き
こちらは百物語三十九話になります。
山ン本怪談百物語↓
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昔、ちょっと有名な「廃墟マニア」をやっていたものです。
廃墟巡りでブログを作ったり、動画サイトで配信をしたりして活動していました。
しかし数年前、とある事件がきっかけで廃墟巡りをやめてしまったんです…
S県にある「Kホテル」という廃墟をご存知ですか?
夏の蒸し暑い夜、私は撮影機材を持ってKホテルへ向かいました。
Kホテルの廃墟は、地元では有名な「心霊スポット」でした。どういう理由で心霊スポットになったのかは不明ですが、幽霊が出る場所として有名だったそうです。
「確か304号室に女の幽霊が出るんだよな。1階の撮影が終わったら、そこへ行ってみるか」
このホテルの本丸は、3階にある304号室だ。撮影の大半は304号室で行う予定だったため、1階の撮影は数分で終わらせる予定でした。
「…なんだこれ?」
1階のエントランスホール。受付だったであろう場所のすぐ後ろの壁に、奇妙な落書きを発見しました。
(次の犠牲者!→ま)
その落書きは、赤いペンキのようなもので簡単に書かれていた。
「どこかのヤンキーの悪戯かな。最近変な落書きが多いなぁ…」
私はその落書きを撮影しつつ、今度は2階の男子トイレへ向かいました。
廃墟のトイレは人気スポット(?)なので、できるだけ立ち寄るようにしています。
トイレの中はかなり荒れており、ゴミが床に散乱していた。そこで私は、再び奇妙な落書きを見つけてしまった。
(次の犠牲者!→さ)
また赤いペンキのようなもので、意味不明なことが書かれていた。特に面白そうなネタがなかったため、私はそのまま304号室へ向かった。
「うわぁ…ここもかなり荒れてるなぁ…」
304号室の荒れ具合は特に酷かった。有名な場所になると、たくさんの人が訪れるため悪質な輩も多い。
「また変な落書きがある。流行ってんのか、これ…?」
304号室の壁にも奇妙な落書きがありました。
(次の犠牲者!→と)
私は304号室をカメラで撮影しながら、あの落書きの意味について考えていました。
「犠牲者ってどういうことだ?最初はま、次はさ、最後はと………あっ!」
撮影中、私は落書きの「意味」を理解することができた。
「ま…さ…と…俺の名前?」
私の名前は「キノシタ マサト」です。
「次の犠牲者…マサト…まさかな…」
304号室の撮影を終えた私は、撮影機材を持って1階へ向かいました。撮れ高も悪くなかったので、私はすぐにKホテルから離れようとしました。
その時、私は1階に書かれているあの落書きをもう一度見てしまったのです…
(殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す)
1階の落書きを塗りつぶすように「殺す」という落書きが大量に上書きされていました。
最初に見た時はこんな落書きどこにもなかったのに…
身の危険を感じた私は、すぐに車へ飛び乗り、半泣きでKホテルから逃げ出しました。
あの時、私以外の人間があのKホテルにいたのでしょうか。
それとも、あのホテルに潜む何者かが私に警告をしたのでしょうか。
あの落書きに書かれていた名前は、偶然だったのでしょうか。
この事件を最後に、私は廃墟巡りをやめてしまいました。
ゴールデンウィークということで「廃墟」の短編怪談を3話書きました。
残りは4日と5日に公開します!