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第伍話 GOD OF SUSA NOTE 前編

フェラーズは「古事記」が好きだったそうだ。かなりの日本通である。1914年、彼はインディアナ州リッチモンド・アーラム大学に入学。日本の女子英学塾留学生(創設・津田梅子 後の津田塾)、渡辺ゆり(結婚後、一色ゆり)と親しくなった。彼女は5年間学び、フェラーズとは最後の2年間を共にした。そして、彼は渡辺ゆりから聞いた日本に興味を深めた。


1916年、第一次世界大戦中、アーラム大学を中退し陸軍士官学校に進んだフェラーズは、18年に卒業し、21年、フィリピン駐留になり、後、休暇を利用して日本に初来日し、渡辺ゆりと再会する。彼女から河合道を紹介された。

日本を善く知るにはどうすればいい?

私は、ゆりに尋ねた。「ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)よ」と彼女は答えた。「外国人だけど日本人を善く理解しているし、文章も美しい。日本に西洋を紹介した。でも・・・」と、ゆりは言った。「でも?」「彼はクリスチャンじゃないから好きじゃないの」私はハーンの全著作を集め、読破したと思う。


1930年、ドロシー夫人と共に新婚旅行にてフェラーズは再来日し、東京西大久保の小泉家を訪ねた。宅では妻セツが応対した。ハーン既に故人だった。

「ハーン先生のお弟子さんにも会いたいです」「お弟子?そんなのいるのかしら?お弟子では無いけど、パパさんが気にしていた面白い人が居ますよ。此処にも何度か来ました。今も偶に顔を出してくれますよ」「何と云う方ですか?」


文京の元阿鼻あび大学副学長、考古学教授・柳田国緒先生。パパさん、生前、わたしの意思を継ぐのは彼です・・・って云っておりました」

「柳田国緒先生・・・」

「本当の日本を知りたいのでしょう?なら是非会った方が善い」


冒頭、柳田国緒との出会いまでが書いてあった。

百目野は日本語に翻訳する。


柳田を訪ねると変なものを見せられた。引き出しから金箔押しされた菊の御紋入りの桐匣きりばこを出して来た。はこの中に光る丸い石が入っていた。視ると、悠寛ゆっくりと点滅している。

「かれこれ、30年程前に須佐之男に貰ったんです」

「点滅するエネルギーは何ですか?」

「そんなもん、ありません」

「Nothing!!?」

「此れはね。太陽をあしらったそうです。ちょっと手をかざすと・・・」

炎が立ち上った。まるで太陽のフレアの様に。素志て、其の石は浮き上がった。回りに惑星らしきが出来上がり、太陽系が出来上がった。

「此の太陽に向かって心の中で須佐之男を呼ぶと彼が来てくれます。此れが彼とのたった一つの通信法なんです。やったことは無いんですがね。多分、あまから空間をねじって来るんだと思います。現れる瞬間は身体が捩れてますから」

荒唐無稽な話だが、目の前にある通信機器だと云う物体の説明が付かない。

「須佐之男を呼んでみますか?」私は躊躇した。恐ろしくなったのだ。


その後、柳田国緒の書籍を借り受けた。手紙が添えられていた。

「日本は近い将来、世界を相手に戦争をするかもしれない。そうなったら貴方とわたしは敵同士になる。貴方の國と闘ったら、日本は負けるでしょう。そうなった時、天皇はどうなるのか?日本はどうなるのか?須佐は天皇のの軍隊です。人間とは闘わない。しかし、天皇にもしものことがあれば、彼等は出て来るでしょう。此の資料を読めば、彼等の力の一片が解ります」


須佐たちを怒らせてはいけない。


モノクロ写真が添えられてあった。柳田は40歳代、隣に少年が一緒に写っていた。其の少年は古代ヤマト民族のような、空手着のような物を纏い、赤ん坊を抱いて立っている。其の回りに忍者のような格好の若者男女が集まって、にこやかに笑っている。此の赤子は恐らく柳田の子供、武雄氏であろう。柳田は研究に没頭し、晩婚だったので子供ができたことがあまりに嬉しく佐助さんを伴って出雲部落に来て歓迎された。恐らく部落で歓迎された人間は後にも先にも彼1人であろう。


「見た顔が居るな。佐助と武角が居る」その写真は明治後半の頃のもの。「老けていない・・・」百目野はぞ〜〜〜っとした。「この少年が須佐之男か?少年とは・・・よくもこんな写真を撮らせたものだ」


ボナーは、いつの間にか妖しげな影を追っていた。

私は、その後、陸軍大学に入学する。何度も訪日した。1938年、4度目の来日。柳田の資料をもとに皇宮警察内の特殊機関に須佐が1人居ることを突き止めた。幕末の孝明天皇の計らいだったそうだ。明治新政府の頃からだ所属しているそうだ。ダメ元でコンタクトを取ってみた。


会っても良いと云う。日比谷のカフェで待ち合わせた。柳田の名のお陰だ。

「Mr.フェラーズ?」

振り向くと黒のスーツを来た20代後半の男が立っていた。

「皇宮警察の須佐佐助と云います」流暢りゅうちょうな英語だった。

「須佐一族の方ですね」

「先生から色色、聞きましたか?」

「はい、しかし話ばかりで実は未だ疑うを得ないのです」

「あなたが知りたいことは解っています」


そして信じられないものを見させられた。


外の野良猫が、人の顔になりニヤッと笑った。

天井から忍の者が浮き出て来て、天井に張り付いている。

終いには馬程の白狐が眼前に表れた。

「白狐は、回りの人には視得ません」

その後、すべて消えた。


私は、震えていた。

「われらの仲間です。普段、こんなことは、しません。故先生の名誉のためにお視せした」

「柳田先生の・・・」

「先生は、大学の研究では認められたけど変人扱いされた。我らとの関係のせいで」

「貴方は如何程の時を生きていらっしゃる?まるでバンパイアだ。歳を取っていない・・・・写真の少年は須佐之男ですか?やはり、今も変わらず?」

「写真の?はい。須佐之男様はわれら一族全体の長です?」


「Mr.須佐、あまり時間がない。あなたとはまたお会いしたい。可能ですか?」

「可能ですが、時代がそうさせるかどうか」

「日本の動向ですね」

「はい、危険です。此の侭では将来、亜米利加と戦争をするでしょう。軍の暴走が始まります」

「はい、亜米利加では皆、そう思っています。既に対応を検討しています。あなた方は武人です。出て来ますか?超自然の力をもって」

「われらは御上自身の武体。其れだけです」

「もし、日本が負けて天皇が絞首刑にでもなったら?」

「其の時は、あまの力をもって、われらは守ります。邪魔をすれば地獄に落とす」

私は、唾を呑んだ。


天皇には日本軍隊の他に容易ならぬ、もう一つの異質な軍隊が存在することを確信した。

「國民は誰も知らないのか?」

私は佐助の率直さ、高貴さに異質な何かを感じ寒気がして来た。

「亜米利加は彼等と戦ったら勝てるか?・・・・」

調書には出来ないな。


彼等に触れることは禁忌(タブ–)である


1941年12月8日、彼等の心配通り、真珠湾奇襲攻撃によって日米が開戦した。

1943年9月、私は、南西太平洋軍司令官マッカーサーに請われ、司令部統合計画本部長、マッカーサー軍事秘書、PWB=心理作戦本部長として就任した。


1944年、心理作戦において、天皇と軍部の関係が軸だった。

フェラーズの「日本への回答」(Answer to Japan)では、「国家元首として天皇は戦争責任を免れない。彼は太平洋戦争に加担した人物で、戦争扇動者である。彼が認定した東条が政府を掌握。天皇支持を得たことで、あらゆる狂気を行うことが出来た」とした。


1945年4月、私は「対日心理作戦のための基本軍事計画」では、「天皇には攻撃を避けるべきだ。天皇を排して国民の反感を買うのは危険である。しかし、適切な時期に天皇を利用する」と軍の報告書に記述した。

日本本土空襲が行われている時期で、既に勝利を予感していた。


1945年8月、広島と長崎に原子爆弾が落とされる。軍部は其れでも戦争続行を貫いた。武器も兵も何も無いのにである。

「大和魂で貫く」らしい。

1945年8月15日、天皇陛下は玉音放送を行った。そして、日本は敗戦した。

元より天皇が国策に口を出すことは、憲法違反である。其れを知りつつ自ら戦争を止めた。玉音放送の録音技師は自殺をした。


1945年8月30日、私は、戦勝国の総司令官マッカーサーの副官として再び日本に上陸した。

「結局、須佐は出て来なかった。元帥に話さなくて善かった」この時はそう思った。


須佐の殴り込み

9月2日、横須賀沖の米戦艦ミズリー号上で、日本降伏文書調印。此の時、連合国軍総司令部(GHQ)は横浜税関に置かれていた。


ある日、総司令部上空を一匹の鴉が飛んでいた。

「随分、大きな烏だな」MPが呟いた。其の時、車から飛び降りるなり、ビル目掛けて、すっ飛んで来る若者が居た。

「ボナー・フェラーズ准将じゅんしょうは、お居りますか?!」佐助だ。

玄関警備のMP数人が機関銃を向けた。「フリーズ!」

「わたしは皇宮警察の者だ。緊急にフェラーズ准将に会いたい!」

「帰れ!日本人!」佐助は両腕を抑えられ、首は十字に機関銃で静止された。2人ばかりは機関銃を向けている。

「マッカーサー元帥が、マッカーサー元帥が殺されますぞ!フェラーズ准将!」


「外が騒がしくないか?」私は、自公務室で側近に聞いた。「警備の者ですが」「入れ」「失礼します。玄関で日本人の若者が騒いでおりまして・・・准将の名を叫んでおります」「日本人の若者?」

「なんでも、自分は皇宮警察の者だと。フェラーズ准将に会わせろと」

「Mr. 佐助だ!」「元帥が殺されると叫んでおります」

「何だと?!すぐ行く!」

フェラーズは玄関に飛んだ。


「フェラーズ准将、フェラーズ准将!」佐助は玄関先でMPに取り押さえられながら叫んでいた。

「皆、大丈夫。離しなさい。私の友人だ」MPはブツブツ云いながら解放した。

「佐助さん!どうしたんですか?!」「族長が!武角さまが、マッカーサー元帥を抹殺しに来ます」「な、なんだって?!何時?」

「もう来てます。中にもう居るかもしれない」

「本部の中に?あり得ない。警戒厳重な此の本部内に入るなど」

ズーーーーン!「うわあああああああーーーー」ガウーーーーン!「ぐぁあああああ」

「な、何だ?」

皆が本部中を伺った。

「あれは武角さまです。もう始まってます」

「MPは数人残して、わたしと来い!」

「フェラーズさん、わたしでないと止められませんよ」

「佐助さん!此処からは外国です。あなたは入れない。此処でお待ち願いたい」


フェラーズはMPを連れて中に戻った。全員、銃と機関銃を構えている。

「なんと云う大胆な奴。あの写真に写っていた奴だな。・・・しかし、何処から入った?」

「うう!!!」

廊下でフェラーズとMP達が視た光景は、信じられないものだった。兵たちが宙に浮いて壁に張り付いていた。手には銃を持っていたが、強力な磁石のようにくっついている・・・・」

「に、忍者です・・・・忍者が・・・閣下の部屋に・・・まっすぐ・・・あ、あれは化け物です」

「応援を呼べ!外もぐるりと兵で固めろ!」


フェラーズは、銃を構えながら其のままマッカーサーの執務室にゆっくり進んで行った。

壁には兵が幾人も張り付いていた。

執務室のドアが焼けこげて穴が開いていた。

「閣下!」「ボナー・・・・・」

「閣下!大丈夫ですか!」中を覗いた。


「入りなよ。兵隊さん」耳慣れない声が中から聞こえた。私は、中に入った。

10人ほど部屋には居たが、1人は天井に張り付いていた。2人ばかり壁にめり込んでいる。其の他の者たちは、銃を忍者に向けられていた。マッカーサーは、椅子に座らされて忍者に首を刀で充てられていた。

「貴様!何者だ!日本人だな!反逆者か?!」忍者はニタッと笑って、こう云った。

「我らを怒らせたいか?此の毛唐共が!」応援がやって来た。「閣下!」10人の兵がやって来て機関銃が向けられた。


「我らを怒らせたいか?毛唐!」


「忍者め、此の状況でよくもそんな事が云えたもんだ。鉄砲玉か?貴様」

「須佐武角・・・・だな?」私がそう聞いた。

忍者はびっくりした顔をした。何故?俺の名を知っている?と云う顔だ。

「武角さまーーー!いけません!殺してはいけません!」

外から佐助が叫んでいた。武角が外を見やった。


「武角!閣下を殺したら、どうなるかわかるか?!」「貴様・・・名は?」

「ボナー・フェラーズ准将だ。いいか、其の時は連合軍、世界の大国が本気で日本を潰すぞ!国際法違反だからな。いくら須佐でも対応出来るか?貴様らの暴走で日本を潰すか?!」武角がまたニヤッとした。

「我は警告に来たのだ」すると人差し指をかざした。

ズン!

本部全体が大きく揺れた。

「では、世界に天変地異を起こしてやろうか?」そして手のひらを前に向けた。

ぐわああああああーーーーー!

突風と雷雲が部屋内に起きた。皆、机やら椅子やらが飛んで来た。部屋の中がぐしゃぐしゃだ。

視るとマッカーサーは椅子に座ったままで、武角は消えていた。

「な、何だ?居ないぞ!何処に行った?」兵達が、ふらふらと起き上がりながらそう云った。


「閣下、ご無事ですか?」「ボナー、お前、奴を知っているのか?」「イエスサー・・・・」

「下で騒いでいる、あの若造もか?」「イエスサー・・・・」

「あんな危険人物を何故?報告しない?!あの若造を拘束しろ!」

「閣下!」

「許さん!許さんぞ!ジャップめ!」


百目野は唾を呑んだ。

「横浜のGHQ本部に殴り込み?!!!!」

誰も知らない歴史が書かれてあった。その後、連合軍の須佐への反撃が始まったのだ。

「横浜GHQを皇居の真ん前、第一生命ビルに越したのは天皇と須佐への挑戦?!」

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