S級と弟子
「私の弟子にならないか」
彼女、リゼリットはそう俺に告げた。
弟子か、彼女は明らかに俺より強い。
技術的にもステータス的にもだ。
彼女に教わることは多いと予想できる。
この話は飲むべきだろうか。
この異世界は危険だ。俺は、勇者なんてたいそうな
役職と能力を持っていながら、死にかけることもある。
強者に指南してもらうことで、
死ぬ確率を下げることは大切ではないだろうか。
S級の管理下にあれば前回のようなイレギュラーな状況に陥っても、対処は簡単になるだろう。
メリットは多い。
特に大きなメリットはリゼリットが美少女な点だ。
ここがあまりにもデカすぎる。
女にホイホイついていくのは気が引けるが、
俺には強くならないといけない至上命令が存在する。
そうこれは顔に釣られたとかそんなのではないのだ。
あくまで自らの成長のため。
そう自身に言い聞かせる。
俺はこの人の弟子になることにした。
「いいですよ。弟子になります」
「本当か!?そうか、良かった」
「いえいえ、これからどうぞよろしくお願いしします」
「ああ、任せておけ。私にかかればすぐに君を
一流の冒険者にして見せよう」
まてよ、よく考えればこの人初対面の俺に
攻撃してきたやつだぞ?
大丈夫か?敵ではなさそうだが、スパルタの可能性は非常に高い。
危険が危ないかもしれない。
ぐっ、急に後悔で胃が痛くなってきた。
もう泣きたい。やっぱ後先考えずに行動するんじゃなかった。
今からなら間に合うか?
そう思ったが嬉しそうなリゼリットの顔を見ると、
何にも言えなかった。
まあいいか。可愛いし。
こんな人のスパルタなら、ご褒美だとも捉えることが可能だろう。きっと。
「うむ、では私の家に案内する。ついてきてくれ」
そういうと、リゼリットは
俺を置いて走っていってしまった。
とっさに追いかける。速い全力でついていっても
すぐに見えなくなってしまいそうだ。
数分間鬼ごっこを続けていると、
急にリゼリットが立ち止まった。
「ここが私の家よ。いらっしゃい」
なんて豪邸だよ。これがS級の家か。
どんだけ稼げるんだよ。
羨ましい。
家に上がると、リビングに通され、お茶を出された。
有り難く頂いていると、
「今日から君はここに住んでもらう」
ブフッ!ついお茶を吐き出してしまった。
なんなんだいきなり?
ビッチなの?やだこわい。
そんな真顔で言われても困るんだよ。
気分を落ち着かせ尋ねる。
「あの、なんででしょうか」
「その方が修行をつけやすいだろう」
「まあ、そうですけど」
「なんだ、何か不満があるのか?」
「いえ、特にないです」
年頃の男女が一つ屋根の下にいるって相当危なくないですかねえ?
俺はヘタレなんで何もしないですけど。
そこらの野獣なら目の色変えて襲ってきますよ。
まあ、襲われても撃退するでしょうけどね。
そんなこんなで俺とリゼリットの共同生活が始まった。