vsC級冒険者
「ここなら誰にも邪魔されねぇだろ」
アルファは、俺を路地裏まで連れ来てそういった。
確かにここなら誰も来ないだろう。
つまり、いくら叫んだところで助けはこないわけだ。
だが、それは向こうも同じ。
別にアレを倒してしまっても構わんのだろう?
一度言ってみたかったセリフを心の中で言う。
声に出して言う勇気はなかった。
アルファが武器を構える。
小柄で細身な見た目通り、使う獲物は短剣だった。
おそらくスピードと手数で押していくタイプだろう。
俺もバスターソードを構える。
両者の間に緊張感が走る。
先ほどまで飄々としたアルファは武器を構えると同時に獲物を狩る狩人の目つきになった。
これが彼を優秀な冒険者たらしめている要因だろう。
先に口火を切ったのは俺だった。
「セイッ!」
アルファがそれを回避する。
そこまでは読んでいた。こちらは大剣。
アルファの短剣で受けられる攻撃ではない。
懐に潜り込まれる。
即座に手を離し、回避行動を取る。
カウンターを喰らわす予定だったが、失敗した。
予想以上に攻撃回数が多い。それに洗練されていた。
これは人とも戦い慣れているのだろう。
俺は人との戦闘は初心者だ。
そんな俺との戦闘など簡単なのだろう。
スピードや受けるダメージから、俺よりステータスは低いと予想する。
それを埋めているのが戦闘技術だ。
大きく距離を取る。
そしてすぐさまドロップキックを放つ。
受け身は取られているが吹き飛んだ。
この瞬間に、剣を拾う。
そして、斬撃スキルを発動し剣を振る。
すると、斬撃が飛び、アルファに攻撃する。
あの狼にやり合った時より、断然威力が弱い。
それでもダメージを与えるのには成功した。
「糞がぁ。なんだテメェ、その力はよぉ!」
アルファは怒りで顔をどす黒くしながら立ち上がる。
嘘だろ、気絶してないのか。
もう一度、剣を振る。
今度は斬撃が飛ばなかった。
何故?何か条件があるのか?
糞、未検証のスキルに頼りすぎていた。
隙を見せてしまった為、接近される。
畜生負けだ。ここから回避は不可能。
このまま刺されるのだろう。
と思ったら、アルファが倒れていた。
思ったよりダメージが深かったようだ。
それに泥酔していたのも関係してるのかもしれない。
血を流しているので一応ギルドまで運ぶことにした。