ナッシュの本気
「え?どうしてですか?」
私は朝からビックリした。ナッシュさんがサリューの騎士団を辞めるらしい。そして兄であるリード様の勤めている、シュー様と同じ騎士団に入団するらしいのだ。
「十中八九リィナの事だろうな。かと言ってもあいつの勝手だから気にしなくて良いぞ」
リード様が朝食後のお茶を飲みながら言った。
「でも…エクレール様の副官って偉いんですよね?もったいないんじゃ…」
「入団前の所属も加味されるだろうから、見習いに戻る事はないから大丈夫だよ。あいつのことはあいつが判断したんだから気にすることないよ」
でも、と私は言った。
「私にはシュー様が居ますし…その…」
「俺はあいつじゃないから真意は分からないが、リィナにシューマスがいる事は承知しているだろう。勝手にあいつがやっていることだからな。リィナが気にすることないよ」
でも、と思った。
「困ります…」
「リィナ?」
「私、ナッシュさんの気持ちに応えることは出来ません。それなのに職場を変えるなんて…」
「リィナ、それはあいつの勝手だから」
リード様は優しく言ってくれたけど、シュー様は何も言わない。
「リィナ、気持ちに応えろとは言わないから、あいつの気持ちを否定することはやめてくれないか」
「リード様」
「兄バカだと思われるだろうが、あいつが本気になっているのは人生で初めてなんだよ。君には迷惑かもしれないが…せめてそばに居ることは許してやってもらえないか」
もう何も言えなくなって俯いた。
私は正直ナッシュさんがそばに居ることは嫌ではないけど、それによってシュー様を不安にさせることが抵抗があるっていうか…。どう言ったら良いんだろう。
「リィナ、僕は構わない」
「シュー様…」
「この前からリィナが安心させてくれたし、それに負ける気がしないからね」
リード様がサッと朝食の席を立った。
「ご馳走様だ。…俺も誰か相手を探すかな」
ちょっとその話題今大丈夫ですか?
「リードさん、本気ですか?」
「ああ、本気だ。リィナの友達も紹介してもらうか」
にやり、と笑った。
それはやめといた方が良いです。リード様。




