当日
「それじゃあ、中から鍵はちゃんとしておくんだぞ」
「了解です」
私はリード様に敬礼のポーズを取って頷いた。今日は誕生日当日なのでこっそり鍵を借りてくれたみたい。
カチャン、と扉が閉まると鍵をかける。開いてたらサプライズにならないもんね。
振り向いて深呼吸する。シュー様の匂いだ。
よし、と両手の荷物を机に置くと用意を開始する。とは言っても料理は詰めてきた容器の蓋を取って見栄え良く配置するだけだし、ケーキも以下同文だ。
プレゼントはどうしようかなーとウキウキしながら何気なく振り向くと。
シューさまが居た。
しかも上半身裸だし下は下着しかつけていない。髪は濡れてていかにも湯あみしてきました、という格好だ。
「キャ…」
慌ててシュー様は叫びそうになった私の口を塞いだ。
「リィナ、ここは宿舎だから叫ぶのはマズいんだ。…もう大丈夫?」
コクコクと頷き、手を外してもらう。
「ビックリしたよ。どうやって入ったの?」
「リード様です…誕生日にサプライズしたくて…」
ある意味サプライズは成功したみたいだけど、ぜんぜん思ってた感じではない。
私はしゅん、として俯いた。
「ああ、そういえば誕生日だったね」
「忘れてたんですか?」
「リィナはリードさんに聞いたの?そうだね、気にしてなかったな」
顎を撫でながら料理とケーキを見て微笑んだ。
「これ、リィナの手作り?」
「はい。でもタルトはアルバイトしているお店で買いました」
「ありがとう。嬉しいよ。僕はちょっと見回り中にトラブルがあって湯あみしていたんだ。それがなかったら上手くいっていたと思うよ」
「お互いにサプライズでしたね」
苦笑して、片手で目を覆った。
「リィナ?」
「ちょっと、その格好は刺激的なので服着てもらって良いですか?」
ああ、ごめん、と笑った声がした。
「あ!良かったらこれ着てください」
私は手に持っていたプレゼントのシャツを渡した。
「…これは?」
「お誕生日プレゼントです。シュー様に似合うかなって」
照れながら渡す。なんか恥ずかしい。
「…欲しかったのってこれ?」
「そうです」
「嬉しい。ありがとう。リィナ」
シャツを着たシュー様は私の予想通り似合っていた。隣の部屋に住んでいる仕事終わりのリード様も合流していろいろ話して食べて飲んで楽しいお誕生日になった。




