家族会議②
「それでは家族会議をはじめる」
いつも思うんだけどなんで夕食前にするんだろ、お腹すいた。野菜スープの良い匂いを嗅ぎながら私はため息をついた。
サッとロニーが挙手する。
「ロニー、なんだ」
「婚前旅行にはお目付役として僕も同行することを提案します」
「なっ」
私は絶句した。そう、晴れて仕事復帰をされたシュー様は一度サリューに里帰りすることになり、調整して何日かおやすみを取れ次第私も一緒に着いて行くことにしたのだ。
「無理よ。馬で行くのよ?ロニー。あなた乗れないじゃない」
「姉ちゃんだって乗れないじゃないか。それは理由にはならないね」
フン、と鼻で笑う。可愛くない。
「確か銀髪の騎士様も同行されるそうだな」
とお父さんが確認してきた。
「そうだけど…」
同郷のリード様もついでだから、と今回同行されるそうだ。
「ロニーもその方に同乗させてもらったら行けるんじゃないか」
「お父さん…」
「姉ちゃんみたいな箱入り、すぐに騙されるんだから僕も一緒に着いて行くよ」
「シュー様だって居るわ」
「狼に羊を任せる羊飼いはいない」
「シュー様は犬よ。狼じゃないわ」
「姉ちゃん、ほんとそういうところだよ…」
呆れたようにロニーは首を振った。
「とにかく、学校は夏休みも始まるし、丁度良いし、僕は行くからね」
ロニーは宣言した。
「良いじゃない。社会勉強だわ」
今まで黙っていたお母さんがおっとりと加わった。
「ロニーだっていずれは商人になるんだし、旅慣れておくことは悪いことじゃないわ。それに騎士様お2人が同行されるなんて旅の安全は約束されているでしょう?」
「えー…」
私はため息をついた。これ1人で反対してもダメなやつだ。
「良いじゃないか、むしろなんでリィナは嫌なんだ」
「シュー様のご実家にも行くのよ。絶対余計なこと言うに決まってるもの」
「バカだなぁ、姉ちゃん。愛は障害があった方が盛り上がるんだよ」
したり顔でロニーは言った。だんだん憎々しく思えてきた。
「とにかく先方に聞いてみてくれ。ロニーを連れては行けない、と言われたらそれまでだからな」
お父さんは会議の終了を宣言してさっさと夕食の準備をはじめた。
えー、せっかく楽しみにしていたのに、ロニーも付いてくるなんて嫌だなぁ。




