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性欲魔神登場

第2話です。よろしくお願いします。

「なぁ、誰かこの状況をどうにかしてくれないか?」

 よく分からないスタイル抜群の女子に抱きつかれたまま、俺は言う。が、京太郎も童顔女子も動こうとはしない。

「……すごい、いい匂いぃ~」

 いや、この人めっちゃ嗅いでるやん。生まれてきてからの十六年間でここまで匂いを嗅がれたことはない。

 そんな中、ようやく再起動したのは、俺の幼なじみの京太郎だった。

「や、すまん。ほら、離れて離れて。柊、困ってるから」

 そう言って彼はスンスンと俺の匂いを嗅ぐ女子を引き剥がす。

「で、誰なんだ?」

「彼女は演劇部の部長の今永早希さんだよ。で、こっちは副部長の平良比奈さん。ちなみに、二人とも一年生だ」

 なるほど、先ほど抱きついて匂いを嗅いできた女子が今永で、大人しそうな女子は平良だということか。

「俺は北浜柊、よろしくな」

 なんかほんわかした空気になっているけど、忘れてはならないことが一つある。

「それで、今永」

「早希って呼んで」

「いや、今」

「早希」

「い」

「早希」

 このやり取りは無限に続くだろう。

「……分かった。早希、さっきのはなんだ?」

 彼女は可愛らしく首をかしげる。

「何って、私の最大の愛情表現よ」

「いや、初対面の相手に抱きつくか、フツー」

 そう言うと、答えたのは、平良だった。

「ごめんなさいねぇ。早希が迷惑かけて。昔からこんななのよ。気に入った人がいたら、すぐ欲しくなっちゃうの」

 なんかのんびりした話し方だな。見ていて癒される。

「いや、平良が謝ることはないよ。てゆーか、なんでお前は抱きついてきたんだよ」

「比奈の言った通りよ。もうせっかくだし、言ってしまうわね。柊くん、私と結婚しない?」

 空気が静まりかえる。いや、誰も話してなどいないから、もともと静かなのだが、四人しかいない室内のためか、それが強く感じられた。

 というか、結婚って、重っ!

「……結婚?」

 早希は頷く。

「そうよ。とりあえず、この入部届けに住所やメアド、電話番号を書いて?」

 ピンク色のプリントを俺に手渡す。

「いや、これ婚姻届じゃねぇか!」

「ええ。私という部活に所属するのだからそれくらいしてもらわなくちゃね」

「渡すなら、入部届けを渡せよ! だいたいこの部活にも入ると言ってねぇだろう!」

 そう言うと、平良が涙目になり、上目遣いで、

「……え? 入ってくれないの?」

 と言ってきた。京太郎が「いけなーい。泣かせたー」とか言って茶化してくる。

 世の女性の大半はこういう目はわざとやっていると俺は普段考えているが、平良のこの目は本物だ。なぜかは分からないが、そう訴えかける強い何かがあった。

「分かったよ。入るから、そんな目で見るなよ」

 すると、彼女は輝くような笑顔で、

「ありがとう、柊くん。じゃ、入部届け取ってくるね。あ、私のことは比奈って呼んでよ」 

 そう言って、彼女は職員室へ向かっていった。

「ところで、なんで俺なんだ?」

 早希に問いかける。

「そんな聞くまでのこと?」

「いや、誰だって初対面の人に抱きつかれた挙げ句、婚姻届まで渡されたら気になるに決まってんだろ」

 彼女はスマホを取り出して答えた。

「北浜柊。十六歳。身長170センチ。体重58キロ。血液型、O型。家族構成、母、父、妹。友達関係、幼なじみの京太郎くんを含め、非常に多数、などなど……。ここまで言えば分かるわね?」

 俺は聞きながら愕然とする。

「もしかして……」

「ええ、そのもしかしてよ。私は入学してからずっとあなたのことをストーカーしてたわ。とりあえず、このスマホのメモの容量が一杯になるまではするつもりよ。今はまだ情報量が少ないけど」

 彼女は一気呵成に言う。いや、頼むから、そんなに調べ上げるな。

「結婚って言われてもな。だいたい俺は早希のことよく知らないしさ。というか、純粋に怖い。警察、通報していい?」

 俺がスマホを取り出すと、彼女はあわてて答えた。もちろん、警察にかける気はないが。

「ちょっと待って! 気になることを調べて何が悪いのよ! 私はこの情報を悪用する気はまったくないわ。むしろ、こんな貴重な柊くんの情報は誰にも与えないわ! だから、警察はやめて!」

 なんかむちゃくちゃな理論が聞こえた気がするな。悪用しないなら、それでいいとは思うが、それでも気持ち悪い。

「すげえな、柊。こんなに好いてくれる女子なんて、なかなかいないぜ。だけどな、柊。彼女の本当に凄いところはここからだぜ」

 京太郎が俺に囁いた。

「まあ、いいや。でも、俺がお前を知っていないのは事実だしな」

「ええ、分かってるわ。私も知ってもらえるように努力しなくちゃね。さ、そのズボンを脱いで?」

「……え?」

「だから、私のことを身体で教えてあげるわ。脱げない? なら、私が脱がしてあげる」

 俺は先ほどの比ではないほどの驚きを感じた。というか、身体で教えるとか、女子高生が使う言葉じゃねぇだろう。そんなん淫乱教師かキャバ嬢しか使わねえよ。

 俺の腰に手をかけたときだった。救いの声が聞こえた。

「柊くーん。入部届け、取ってき、た、よ……」

 比奈が来たタイミングは非常に悪かった。俺のズボンは下ろされ、早希はスカートを脱ごうとしていた。ちなみに、京太郎はいつの間にか教室から抜け出していた。

「……二人とも、どういうことなのかなぁ?」

 微笑みを浮かべているが、めちゃくちゃ怒ってそうだ。

「大丈夫、まだ前戯にも至ってないわ。比奈も参加する?」

 頼むから、お前は黙っててくれよ。それと京太郎、見殺しにしたのは恨むぞ。

「……参加するわけないでしょ! 部活でそんなことするなぁ!」

 本当にそうだよな。その後、俺と早希は京太郎が戻ってくるまでの十五分ほどの間、みっちり比奈に怒られた。怒っている姿も可愛らしく見えると思ったのは、内緒だ。


 

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