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音楽の妖精さん

九話目は、音楽の妖精さんです。

「妖精って色々な種類が居るんでしょ? 癒しの妖精って居ないの?」


 ある時、裕子ちゃんに尋ねられました。

 浅はかですね、裕子ちゃん。

 全ての妖精さんが癒し効果を持っているんです。

 でも癒し効果ナンバーワンの妖精さんを、敢えて上げるとすれば、音楽の妖精さんでしょうね。

 

 音楽が趣味って方は多いと思います。

 しかし、私は大好きって程では有りません。

 なのに何故、私の前に現れたのでしょう?


 試験勉強で徹夜が続いて、些か不眠症気味になっていた私は、電気を消しても目を瞑っても眠気が訪れずにいました。

 その時、何処からかギターの音が聴こえて来ました。

 クラシックギター独特のナイロン弦から奏でられた音は、優しく私の耳に響きます。

 ふと音のする方向を見ると居ました、ちっちゃいギターを持った妖精さんが。


 私はギターの柔らかい音色に意識を失い、気が付いた時には朝でした。

 いや~、ぐっすりでした。

 目覚めもスッキリ!


 それから暫くの間、寝る頃に現れてギターを弾いて、私を眠らせてくれました。

 アルファー波でも出してるんでしょうか?

 しっかりと眠る事が出来ると、一日の活力が違います。

 睡眠って大事だねと実感させられました。


 ギターを弾き始めると寝てしまう私に、不満でも有ったのでしょうか?

 寝る前以外でも現れる様になりました。

 しかも集団で!


 ピアノから始まり、バイオリン等の弦楽器、トランペット等の管楽器、ちゃんと打楽器も。

 小さい楽器を抱えた妖精さん達の集団、フルオーケストラです。


 楽器が小さいからってバカにしてはいけません。

 この感動をどう伝えれば良いでしょう。

 コンサートホールでオーケストラの演奏を聴いた時は、こんな感動を味わえるんだろう。

 多分、そんな感じです。


 安い木造ワンルームで、大音量の演奏を流したらどうなるって?

 ご心配無用です。

 音楽の妖精さんは、謎パワー満載です。

 音楽の妖精さんが奏でた音は、どうやら私以外には聴こえないようです。

 またまた、裕子ちゃんで実験しました。


 演奏する音楽は、クラシックに限りません。

 ロック、ジャズ、ブルース、何れも名曲の数々を再現してくれます。

 ヒップホップまでやってくれた時は驚きました、この子達って何でも有りかってね。

 そもそも、エレキギターの音って、何処から聴こえて来るのよって思いません?


 そして、私は考えました。

 この子達はTVの音を、映画館並みの大迫力にしてくれるのでは無いかと。

 何十万もする音響システムを揃えなくても、この子達なら可能じゃ無いかと。

 

 欲をかいた私が馬鹿でした。

 音楽の妖精さんは、TVの音を映画の迫力にはしてくれませんでした。

 何と言うか、デジタル、アナログ等音質に関係無く、作られた音を変化させる事は出来ない様です。

 裕子ちゃんの家に有るミニアンプでも試しましたが、結果は同じです。


 要するに音楽の妖精さんは、音を操る妖精さんじゃ無く、音楽を奏でる妖精さんという事です。

 まぁでもね。癒されるんですよ、この子達が奏でる音楽は。

 有名な曲を再現してくれますが、この子達のオリジナル曲は特に最高です。

 

 この子達のおかげで分かった事ですが、音楽はその場所、時間、雰囲気によって合った曲が変わります。

 例えば朝は元気が出る曲、寝る前は静かな曲みたいに。


 この子達は、的確に雰囲気に合った曲を奏でてくれます。

 ただでさえ美味しい、お料理の妖精さんが作った料理が、更に美味しく感じるんです。

 凄いですね。


 勉強も捗ります。この子達の奏でる音を聴いていると、自然と集中出来るんです。

 助かります。


 音楽の妖精さんは、自分達の演奏を聴いてくれる時が、一番嬉しそうにしてます。

 聴いたら直ぐに寝てしまう子守歌系は、演奏してくれる回数が減りました。

 お願いすれば子守歌系も演奏してくれるんですが、だって直ぐ寝るんでしょと目で訴えられると、頼み辛いです。


 前にバイトで疲れて帰って来た日、この子達の演奏を聴きながら寝てしまった時は、演奏を止めたこの子達にユサユサ揺さぶられて起こされました。

 ちゃんと聴いて欲しい時は、起こしてでも聴かせる。

 プロ根性ですね。


 音楽聴き放題アプリも顔負けな、ありとあらゆる名曲を再現してくれる、音楽の妖精さん達。

 それは流行の音楽も同様です。

 今年のヒット曲なんだよ、知らないの? って顔されると、ちょっと悔しいです。

 

「悪かったわね。疎くてさ!」


 私が拗ねると、音楽を奏でてご機嫌を取ろうとする所は、カッコよさを感じてしまいます。


「あなた達どこでこの曲覚えたの?」


 私が訪ねても、笑顔で笑って誤魔化されます。

 教えてくれても良いと思うんですけど。


 今度この子達の一日を観察してみようかしら。

 でも、この子達って私が傍に居る時は、大抵演奏してるんだよね。

 謎の多い妖精さんです。

 

 そして今朝は、音楽の妖精さん達に起こされました。

 五月蠅い目覚まし時計のベルでは無く、爽やかな目覚めの音楽。

 おかげで爽やかな朝を迎えられました。

 私は幸せ者です。

気に入って頂いたら、評価やブクマをお願いします。

次回は、1/20投稿予定です。お楽しみに。

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